抵当権・質権・譲渡担保権
内容証明郵便がよく使われる「貸金返還請求」と関係がありますので簡単に書いておきます。
金の貸し借りを仕事でしているような人には常識ですから、ここでは、貸金返還請求のために内容証明郵便を送ろうかと考えている一般の人向けです。今後の参考になればよいので簡単に記載しておきます。
貸したお金を契約どおりに支払えない・支払う気がないということがあります。そういう場合に備えて「担保」をとっておけばかなり安心です。担保には
- 人的担保:保証人など
- 物的担保:抵当権など
があります。以下に紹介するのは、物的担保のうちのいくつかです。
質権とは
あまり基本的なことを言っては申し訳ないのですが、質権を扱うのは質屋さんだけというわけではありません。若い人の中には、質屋さんは、要らなくなった物を買い取って、買取り価格より少し高く売りに出す。要するに、リサイクル屋さんと同じだと思っているかもしれません。
質権とは債権の担保として債務者又は第三者から受け取ったものを、弁済終了まで債権者が自分の手元にとどめておき、弁済がなかった場合は、競売にかけてその価額から他の債権者に優先して弁済を受ける(他の債権者より先に金銭を受け取る)ためのものです。
簡単な例で言いますと、お金を返してもらうまで品物を預かり、もし返済が受けられなければ、競売にかけて売ってよい。売却益から自分の債権分をとって、残りは債務者に返すということです。
- その預かる物は、債務者本人の所有物でなくても構いません。品物に限らず、債権とか銀行預金でも結構です。
- 自動車や登記船舶などいくつかのものと、譲渡禁止特約の付いている債権に質権設定はできません。
- 預かった品は、善管注意義務がありますから、ある程度きちんと保管する責任がありますが、保管費用を取ることができます。
- 所有者の承諾なしには使用したり、別の人に貸したりすることはできません。
- 不動産の場合は例外で、通常の使い方で利益をあげて、この収益から債権を回収して構いません。この場合の管理費用は、質権者が負担します。
質権は、質物を取り上げて、弁済が終わるまで使わせないことができます。
競売にかけて売るというのも特徴です。
抵当権とは
抵当権は債務者又は第三者が担保に供したものを所有者のもとにおいたまま、もし弁済されなかった場合に競売にかけその代金から優先的に弁済を受けることができる権利です。
弁済できなかったときには、債権者が処分できますが、それまでは本人が使えることから、土地を抵当には入れているけれども、その土地を使って収益をあげて弁済にあてることもできます。
抵当権は土地建物、地上権、永小作権、自動車、建設機械など、登記できるものに設定できます。
また、抵当権はいくつでも設定できますから、もし弁済できずに競売した場合は、先に設定登記をしている人から売却益を受けていきます。
譲渡担保権とは
簡単に言いますと、お金が必要な場合に、自分の持っている工作機械などを誰かに買ってもらう「ことにする」ものです。
百万円貸してもらう代わりに、もし返せなければ、私の持っている工作機械を持っていっていいです、というのが実際のイメージです。
民法に規定がないので、非典型担保といいます。
設定後も本人が使える点では抵当権に似ていますが、登記が不要ですから、動産にも設定できます。
これも、工作機械が150万円の価値があり、借りたお金が100万円なら、工作機械を持っていって、差し引きした50万円を所有者に渡さなければなりません。昔は、工作機械が500万円の価値があっても、差し引き残金を返さなかったそうですから、100万円貸して400万円も得をすることも可能だったようです。現在では法律が全体としてこのような暴利行為は許さないことにしようという傾向のようです。
非典型担保なので、実際の契約条件は当事者間で決めることになっています。質権・抵当権などは、大きな額を貸し付けるときには用いるでしょうが、このサイトで扱っている貸金返還請求のレベルでは用いないでしょう。しかし、少し用心して人にお金を貸すときには、譲渡担保くらいは利用してもよいかもしれないと思います。便利ですが、担保物件の使用方法や換価方法も自由に決められますので、契約に際しては特に注意が必要です。
損をしてしまった。詐欺?
間違いなく返済するという約束をし、さらにもし返せない場合の準備として、貸す相手が損害を受けないような手続きまでしておきます。そして、それはきちんと返済します。このようなことを数度繰り返すと、「お金をきちんと返してくれる人だ」という信頼・信用ができます。
その次に、「貸主が損をしないような手続き」をしないまま、大きな金額を借り、これを踏み倒すという人もいますので、手続きはその都度きちんとしましょう。とは言っても、なかなかそのようにできない事情・環境にあったかもしれません。
予防のために、面倒でもできるだけ書面を作成しましょう。
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