「人違い」だから離婚

わが国の離婚

日本での離婚は実にシンプルで、離婚届を役所に提出するだけです。制度としては世界一簡単といえるでしょう。これは近年の傾向というわけではなく、江戸時代(おそらくもっと前)から日本の伝統的な考え方のようです。

他にも離婚が簡単な国はありますが、「同率一位」とでもいうのでしょうか。一番簡単な国がいくつかあって、そのトップの国に日本が入ることは間違いありません。
もちろん、配偶者の一方が離婚したくないとなれば、離婚は難しくなります。

新しい婚姻

離婚が簡単なら結婚も気楽にできるという傾向は強くなるでしょう。気楽に結婚できるということは、結婚(結婚式)自体が重要ではないということになります。結婚式はしないし、婚姻届も出さないというカップルは大勢います。
ということは、婚姻届は出していなけれども、「私たち、夫婦のつもりですけど。」という人たちも多くなります。以前はよく内縁関係といわれ、最近は事実婚といわれることが多くなりました。厳密には意味が違うともいわれます。

離婚も結婚も簡単ですが、結婚は一定の条件をクリアしなければなりません。一定の条件を婚姻障害(婚姻障碍)として民法731条から737条くらいまでに規定してあります。
そして婚姻届の提出によって効力を生じることになっています。

めったに聞かない話ですが、一旦、婚姻届が受理されても無効なことがあります。
民法742条です。

  • (1)人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
  • (2)当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない

民法742条には2つ挙げてあるので書いてしまいましたが、今、問題にしているのは(1)のほうです。

生活習慣と婚姻

お見合いという制度(風習?)があります。昔と現在では意味合いが違うようです。
「お見合いで結婚するのは嫌だ。恋愛結婚でなければだめだ。」
という話は私の若いころはよく耳にしました。

しかし、たとえば私に娘がいても、総理大臣の息子と結婚することはないと思います。
それは、身分・門地の問題ではなく、生活習慣等があまりに違うので、お互いに一緒に暮らしても多分うまくいかないと思うからです。(いや、本当は「身分」「家柄」の問題なのかもしれません。)

昔なら、生活習慣の合いそうな相手をみつけて、とりあえず合わせてみて、気に入れば結婚すればいいのでは?ということですから、おかしくはないことだったと思います。

現在ではもちろん恋愛が自由ですが、晩婚化が進んでいます。結婚したくないならともかく、結婚したくてもできない人が増えているのなら問題です。積極的にお見合いを考えてもよいのではないでしょうか。

人違いとは

さて、「人違い」の話にもどります。
昔のお見合いなどでは、生活習慣・生活の仕方などを重視していましたし、家督相続ということもありますから、生活レベルがどのくらいなのか、長男か次男か、相手の女性に男の兄弟はいるのかなどは重要なことです。これは生活習慣・生活の仕方に大きく影響します。

故意か不注意かわかりませんが、相手の境遇を間違って理解していたときが「人違い」だったそうです。
そういう場合は、多分、無理をして婚姻生活を続けてもうまくいかないだろうということで「無効」という規定があったようです。

ただし、「人違い」なら自動的に無効なのではなく、ちゃんと「人違いその他の事由によって当事者間に『婚姻をする意思がない』とき。」と書かれていますから、身分を超えて、夫婦になることも可能なわけです。

映画の「タイタニック」に登場するふたりは、身分を超えて恋愛をしたわけですが、もしタイタニック号が沈没しなければ、どうなったのでしょうか。
ちなみに、ヒロインの上流家庭の女性は気の向かない婚約をさせられて悩んでいたのでした。

どのように育ったか、どのような生活をしてきたかは、婚姻にも離婚にも大きく影響するでしょう。

 

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