妻・夫、どちらの姓を称するのか

夫婦が別の姓

『未だに夫婦別姓が進歩的だと勘違いしている人たちへ』
という記事があります。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/tagamiyoshikazu/20160913-00062128/

(田上嘉一 | 弁護士/BUSINESS LAWYERS編集長 2016年9月13日 2時5分配信)

「進歩的だと勘違い」ということなので、刺激的な内容なのかと思って読んでみたら、そうでもありません。

いろいろな人の感想がこちらにたくさん書いてあります。

http://b.hatena.ne.jp/entry/bylines.news.yahoo.co.jp/tagamiyoshikazu/20160913-00062128/

 

百姓とは

「姓」という文字つながりで、「百姓」について書いてもよいでしょうか。

百姓は失礼だから、農民と呼ぼうと思うのは本来は見当違いらしいです。江戸時代などは農業専業者は少なく、たいていは兼業です。士農工商といろいろ仕事はありますが、武士になる場合には条件が必要なものの、他はどんな仕事を始めようと自由でした。兼業せずに農業だけをしていた人に対する呼称が「農民」だったようです。

北辰一刀流の千葉周作といえば小説やドラマで有名です。でも、千葉周作さんは武士ではないのです。百姓です。(家柄は「馬医者」ですが。)ただ武芸に優れていたので尊敬されていたようです。

武士とは、

  • 幕府から俸禄をもらっている旗本や御家人などの幕臣
  • 大名家から俸禄をもらっている陪臣

だけであり、その他は百姓町人です。ですから、農業と手工業を兼業する人は大勢いましたし、商業へ転向する人もいましたが、いきなり自分は武士になると決めても、それは無理でした。

家族の姓

婚姻によって、夫の姓と妻の姓のどちらを家族の姓とするかですが、夫の姓に統一するのがポピュラーでしょう。少なくとも従来は。

しかし、妻のアイデンティティを保持するために妻は生まれたときの姓のままにしておくべきという意見の人が増えました。生まれたときの姓は、父(夫)か母(妻)の姓のどちらかです。子のアイデンティティとして、父の姓にするのか母の姓にするのかは難しいと思います。

父母の姓が異なると、現在、大抵の場合、子は母の姓を名乗っています。ある程度の年齢になって、子供に「父の姓に変えたいか、それとも今までどおり母の姓がいいか?」と尋ねると、「今までのまま。」と答える子が多いようです。この場合、結果的に母とのつながりを父とのつながりよりも重視することになり、従来の「父系」を打破できるかもしれません。

「後世に自分の姓を残したい。」といっても、父方の姓か母方の姓かどちらかとなってしまいます。

そこで考えられるのが、夫婦が別姓になるのではなく、合成する方法です。複合姓というのでしょうか。ダブルネームというのでしょうか。

夫婦別姓

複合性・ダブルネーム

ここで問題なのは、父の姓と母の姓をどちらを先にするかです。銀行で「東京三菱」なのか「三菱東京」なのかは重要です。企業の合併でも「大きな方」「影響力の強い方」が先にきます。日本とアメリカの共同作業では、日本からみれば「日米関係」というのが普通で、アメリカからみれば「米日」のように表現するのが普通ですから、どちらが先になるかは重要です。姓の問題となると「アイデンティティの強さ」を明記するのと同じですから、特に重要なはずです。

また、どちらを先にするかという問題(自分が母の影響を強く受けているか、父の影響を強く受けているか)をクリアーしても、複合性の人が婚姻して、相手方の姓と合成する場合、どちらの姓(複合姓)を先にするかという問題にまた直面します。そして、必ず姓が長くなります。落語の「ジュゲムジュゲム五劫の擦り切れ・・・」のように長くなるでしょう。

しかし、家制度がなくなったのに、姓・苗字・名字・氏を自分のアイデンティティとして使うのがおかしいのかもしれません。

そうすると解決策としては、姓を廃止するか、婚姻と同時に自分たちで姓を創設するかしかないでしょう。

ちなみに、親が付けた自分の名前(「氏名」の「名」の方)が気に入らないという人も大勢います。姓名判断などしてもらって、通名のように別の名前を使っている人もいますから、ある程度の年齢になったら、子が自分で、自分の名を決めるべきということにならないでしょうか。

親の思い

「名」は、親が自分の子に対して抱く「思い・想い」だという説があります。親がどのように育ってほしいかという願いを込めて命名するのだそうです。親と子の絆と考えるような人もいるでしょう。

とはいえ、子供にその気持が伝わらないこともありますから、自分の名が気に入らないまま名乗っている人も多いでようです。

現在のところ、親が子にどのような思いで、どのような名をつけるかなど、親が子に及ぼす影響は避けられません。良くいえば、「親子の絆」は強いということになります。

婚姻外の子

以前は「婚姻中に生まれた子」(嫡出子)と、婚姻外で生まれた子(婚姻外の子・非嫡出子)は、法定相続分が異なっていました。これは、「その子本人に何の責任もないのに、不利な扱いを受けるので違法である。」と言われていました。

しかし一方で、「人類はペア型」であるという発想のもとで、子は母と父が家庭で(家族として)育てるのが理想であり、男女が婚姻外で子をもうけない社会にしたいという趣旨の規範であるという人がいました。子をもうける以上は、その自覚と責任を持つようにということのようですが、現実には、婚姻外の子は少なくなく、また、離婚によって片親と暮らす子も多く、片親が死亡してしまった子もいます。やはり、子に不当な負担を負わせていたでしょう。

そうすると、親と子の関係は深いとしても、子が知らないうちに親の影響を受ける「婚姻外の子の相続分」というのは変更したほうが無難ということになりそうです。実際、その後、民法が変わりました。

夫婦の姓、子の姓

そうするとまた「夫婦別姓」「子の姓」の問題に戻りますが、夫婦がどのような姓を称するかという問題よりも、「子の姓をどうするか」の方が大問題の気がします。さらに、「子は自分の名を自分で決めるのか」ということも考えてしまいます。

ちなみに、China では、子は父の姓を称するのが一般的であり、Korea では子は父の姓を称するのだそうです。(間違っていましたらご教示ください。) なぜなのか私はわかりません。China でも Korea でも「父系」といってよいと思いますが、わが国で夫婦別姓(選択的夫婦別姓)となると、上に書きましたが、現在、子は母の姓を名乗ることが多いようなので、もしかすると「母系」に近いことになるかもしれません。

 

名前の話】もご参照ください。

 

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