たとえば『A株式会社で働く甲は、同じ職場の丙と不倫にいたりました。
甲の妻である乙は、丙に損害賠償請求(不倫の慰謝料請求)をすると同時に、A株式会社にたいしても、使用者責任を追求して損害賠償請求することにしました。』
上の例のように、不倫が同じ職場で働く人同士の間で起こることがよくあります。(職場が同じでなくても、仕事・業務に関連して起こることは多いです。)その際に、相姦者(配偶者の不倫の相手方)に対してだけでなく、甲と丙が勤務する会社の責任追求もすることができるでしょうか。
訴訟を起こす前から結論は言えませんが、職場で知り合って、私的に交際があっても会社の使用者責任は問えないのが普通でしょう。
「勤務中は職務に専念すること」はおそらく就業規則で定められているでしょう。会社内とか勤務時間中であれば問題はあるものの、それ以外なら会社が不貞行為について責任があるとは認められないと思います。
勤務時間中にメール等で待ち合わせの約束などをしていた可能性もありますから、勤務態度に問題はありそうです。
ただし、勤務中に、外部の知人などとの私用電話まで完全に禁止されてはいないと思いますので、その点を考慮すると、勤務時間内にメール連絡をしたことが重大な問題になるとも思われません。
社内不倫禁止
会社によっては社内不倫を禁止しているところもありますから、その場合、上の例の乙(妻)は、甲と丙の不倫について調査の申し入れをすることは可能かもしれません。
上の例でいうと、「甲と丙は不倫交際をしているから、解雇すべき」というような発信人不明の怪文書(怪メール)がA株式会社内で飛び交うこともあるようです。
- 乙が甲を黙らせるために発信したか
- 丙が乙に経済的不安を与えるために発信したか(甲乙は離婚しないので)
- 乙が、甲・丙の交際をやめさせるために発信したか
- 甲乙丙以外の者が発信したか
など、いろいろ考えられますが、真相はわからないでしょう。
社内不倫だからといって、法的に特別なことはないと思いますが、業務に支障が出るとか、さまざまな理由から退社(自主退社)せざるを得ないとか、収拾が困難になることがあるかもしれません。
名誉毀損
この際に、不倫交際を第三者に知らせた(不倫をしているとバラした)ことについて、
「名誉毀損に該当し、損害賠償請求ができるのではないか。」
というご相談もよくあります。名誉毀損による損害賠償請求は、理論上はいろいろあると思いますが、実際に損害賠償金が支払われる例は極めてまれだと思います。とはいえ、その可能性の生じるようなことは避けましょう。
名誉毀損については【名誉毀損】のページもご参照ください。