事実婚

婚姻外の婚姻

「苗字は変えたくないけど、でもちゃんとした結婚をしたいです。」と女子高校生に言われて、考え込みました。「ちゃんとした結婚」とはどのようなものだと思ってるのかがわからないのです。

現行制度では、ちゃんとした結婚には「夫の姓か妻の姓を選んで、同じ姓を名乗る」ことになっています。

「ちゃんと」するためには、たいていは「型にはまる」「規定どおりにする」ことになります。

 

ちゃんと自動車を運転するためには、道路の左側を走ります。対向車が来る場合、右折のルールがあります。さらにナンバープレートの大きさや位取り付け位置まで決まっています。

 

以前は20歳で成人でしたが、急に18歳で成人となりました。「いや、自分はまだひとりで契約ごとをする自信がないから、19歳になってから成人になりたいと言っても聞き入れられません。ちゃんと法律に従うと、全員に一律に適用されます。

社会生活の多くのことは全員一律なのです。結局、「苗字は変えたくないけど、でもちゃんとした結婚をしたい」という高校生にきちんと回答できませんでした。

婚姻 夫婦 事実婚 内縁関係 パートナー

法律婚の定義はありますが、婚姻・夫婦・事実婚内縁関係・パートナーという話題になると、「婚姻外の婚姻のような関係?」とでも表現せざるを得ない複雑な問題に直面します。

  • 事実上の夫婦
  • 婚姻の実態を有する

というようなことを、あたかもわかっているかのように話すことが多いのですが、実はよくわからないのです。

 

参考事例を挙げます。最高裁での事案(平成16年11月18日)を多少私がアレンジしました。

太郎と花子は結婚の約束をしました。

しかし、その後、婚約を解消して、「特別の他人として、親交を深めることに決めました」という書状を関係者に送りました。

そして、同居することはなく、互いに行き来していました。生計はまったく別です。

花子は出産に消極的でしたが、太郎は子どもを持つことを強く望んだので、太郎が出産に関する費用を負担し、子の養育についても太郎が全面的に責任を負うと約束した上で、女児と男児を出産しました。

出産の際には、約束どおり太郎が花子にお金を渡し、太郎と花子は婚姻届を提出しましたが、出産後まもなく離婚届を提出しています。

子どもたちが生まれた後、花子は子どもを育てることはなく、女児は太郎の母が養育し、男児は施設に入りました。

その後、太郎は別の女性と結婚するという婚姻届を提出したので、花子は太郎に慰謝料請求をしました。

花子が慰謝料請求をした理由は、「太郎が突然かつ一方的にパートナーシップ関係の解消を通告して、自分以外の女性と婚姻(法律婚)をしたことは不法行為である」というもので、不法行為による損害賠償請求(慰謝料請求)です。

第1審は、花子の主張を認めませんでした。

第2審は、花子の主張を一部認め、慰謝料額を100万円としました。

最高裁は、花子の主張を認めませんでした。

法的な問題としては、「特別の他人として親交を深める」という約束を守らなくてよいのかということですが、実際の問題としては太郎と花子の関係や約束そして行動についてどう思うかが重要でしょう。

この実例を聞いてどのような感想を持たれたかはともかく、実際にこの例と一部共通する事例はたくさんあります。

 

 

内縁関係事実婚、男女の平等、親子の関係・扶養義務養育費、婚姻と離婚の簡便さ、約束の有効性と慰謝料請求などの問題がすぐ頭に浮かびます。ここでは直接表れませんが、夫婦別姓の問題とも関連しそうです。

歴史・伝統・慣習にとらわれず、自分でよいと思うことを実践しようとすると、ものごとを根本から考えなければならず、非常に大きな問題になると思います。

 

また、こういう例に関連していつも思い出すのは、私が子供のときに聞いた次のような話です。

交際しはじめの男女がいました。

ある日、彼女が彼の家に遊びに行きました。

話などしているうち、彼女に言います。

彼:「なんか、のど乾いちゃったね。お茶いれてくれる?」

彼女:「なんで私がお茶をいれるの? 私が女だから? そういう古い習慣はもう引きずっちゃいけないと思うけど。」

もう何十年も前に聞いた話なので、正確なやり取りはわかりませんが、非常に印象深く記憶に残っています。

ちなみにこの男女はこの後まもなく交際をやめたらしいです。

伝統や慣習にとらわれずに、ゼロから論理的に正しいことを考えようとすると、非常に負担は大きくなります。たいていは自分で背負いきれないほど重い「荷物」となってしまわないでしょうか。

結婚も離婚もすぐにできる

私はあちこちで書いていますが、我が国は離婚も離婚も世界一簡単な国だと思います。(当事者間の同意があればの話です。) ただし「世界一」とはいえ、同率一位がいくつもあるでしょう。

そこで、ネット情報ですが、アメリカ ロサンゼルスの結婚事情を書いてみます。間違っていたら訂正や追加情報をお願いします。

 

 

ロサンゼルスでの結婚

我が国では、形式的には届出用紙という「紙一枚」を出すことで結婚も離婚も決まりますが、ロサンゼルスではそうではないらしいです。結婚の例ですが、

  • マリッジライセンス(婚姻許可書)を取得
  • セレモニー(結婚式)を行う
  • セレモニーから2か月ほどして、マリッジサティフィケイト(婚姻証明書)が郵送されてくる

という3段階が必要だそうです。

婚姻の許可

マリッジライセンスとは、婚姻の許可をもらうことだそうです。日本では本人たちが合意すればよいので、誰の許可も必要ありません。ロサンゼルスでは、許可するとかしないとか、誰が何の権限でなぜできるのかと私は疑問に思ってしまいます。多分、この婚姻について公示する(周囲や世間に知らせる)のでしょう。結婚の証人も必要だそうです。重婚を避けるためでしょうか。

婚姻許可書には2種類あって、以上がひとつ目。

 

婚姻許可書のふたつ目は、公示するのではなく、後から当事者双方に郵送される婚姻証明書が同じ住所に届くことで、結果的に(夫婦として?)同居している証明になる → だから結婚を許可する、というシステムでしょうか。

 

我が国では戸籍があるので、上記のひとつ目の婚姻許可書は不要でしょう。2つ目のものに相当するのは住民票でしょうか。夫婦は同居が原則です。

姓・氏はどうする

姓・苗字等(ラストネーム・ミドルネーム)を変えるなら、この婚姻許可書の申請時だそうです。それまで使っていた姓・苗字(ラストネーム)でないと、重婚防止にならないからでしょう。

アメリカでは婚姻によって姓・苗字(ラストネーム)を変更できない州(変更が非常に難しい州)があるそうです。

私の想像ですが、アメリカでは我が国のような戸籍がないので、姓・苗字(ラストネーム)を変更してしまうと、人物の特定が困難になる(別人になりすます人がいるかもしれない)からではないでしょうか。また、アメリカでは日常的には姓・苗字(ラストネーム)で呼ぶことはあまりなくて、名(ファーストネーム)で呼ぶので、姓・苗字(ラストネーム)を家族内で統一する必要性をあまり感じないのかもしれません。

姓・苗字(ラストネーム)を変更する場合、旧姓をミドルネームとして記載すると、姓が変わっても旧姓がミドルネームとして入っているので、身分証明には便利らしいです。ただ、ミドルネームは「姓」ではなくご先祖さんやお世話になった人などの「名」のことが多いそうです。ロサンゼルスでの話ではありませんが、男の子が生まれたら、その子のミドルネームは「祖父の名」と決まっている文化圏もあるようです。

日本人がアメリカ人と結婚する場合、日本人は好きなようにミドルネームを作ってよいそうですが、姓を結婚相手のものにするなら、日本の旧姓をミドルネームにしておくと身分証明に役立つそうです。

上に紹介したひとつ目の婚姻許可書は、夫婦揃って受け取りに行かなければならないそうです。双方の意思確認でしょうか。我が国では、婚姻届も離婚届もひとりが持っていけばいいですから、「杜撰(ずさん)」といえば杜撰です。実際、婚姻届や離婚届を勝手に出されてしまったという例はあるのです。私は、離婚届を勝手に出されてしまったというご相談を受けたことはありますが、自分が知らないうちに婚姻届が出されたという相談は受けたことがありません。

必ず結婚式

結婚式をあげなければならないというのは意外でした。「入籍だけして式は挙げない」というのは認められないそうです。やはり公示の必要性でしょうか。婚姻許可を取得してから90日以内に結婚式をしなければなりません。それを過ぎると、婚姻許可申請からやり直しだそうです。国や民族によっては、結婚式をあげて、周囲の人に祝福されて初めて正式な夫婦になれると考えるようですから、もしかするとロサンゼルスでもそうなのかもしれません。

我が国で問題になるのは、不倫の慰謝料とか離婚の慰謝料という場合に、そのカップルが事実婚だったのか、それとも単なる同棲だったのかがわからないことがあるからです。同棲の場合には不倫の慰謝料は発生しません。

あと付けで「事実婚だった」と主張する人がいるかもしれません。

また、共同生活(事実婚)をやめることになっても「同棲だったから離婚歴はない」と言えそうです。

我が国では、事実婚の場合、友人知人に集まってもらって披露宴だけは行うという人も多いですが、ただ、この披露宴が婚姻(事実上の婚姻)の証拠になるのかどうかというと、よくわかりません。

 

ロサンゼルスでは法的な婚姻手続きを完了するために上記の3段階をクリアーしなければなりませんから、セレモニー(結婚式)が必要です。友人知人が普段着で、飲食するものも持ち合って、とりあえず「簡略な結婚式(パーティ)」をしておいて、その後、きちんとした結婚披露宴をする人も多いのだそうです。

婚姻証明書が届いて

婚姻許可申請と結婚式という2つの段階をクリアーしてから7−8週間すると婚姻証明書が送られてきます。これで正式な夫婦なので、この後、名前の変更手続きなどができるようになるそうです。

「婚姻外の婚姻」は婚姻か

健康保険の死亡給付金などは、かなり前から「婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」は受給権があるとされていました。

これは、法律婚でなく事実婚も「婚姻」として認められているからだともいわれますが、死亡した人の財産を法定相続人が受け継ぐのとは意味が異なり、「共に暮らしていた人に対する生活補償」の意味が強いので、遺産相続ではなく補償金だという説もあります。これは、法律婚ではない「事実上の配偶者」には相続権がないという現行法にも合致します。

 

 

上にも書きましたが、伝統や習慣にとらわれず、ゼロから合理的に価値判断をするとなると相当な負担です。歴史上「天才」と評されるような人でも難しいでしょう。自分では正しいと思っていたのに、その分野に詳しい人から話を聞いたら自分の考えが不十分だったということはありそうです。どんなに優秀な人でも時代と文化を超えることはできないともいわれます。ということは、流行にまったく乗らないということも難しいです。ある程度は「人と同じようにやっておく」というのは賢いやり方だと思います。

契約のときに、契約書に記名押印するのか、署名だけでよいのか、印鑑は実印か三文判かなどのように、特別な根拠はなく、習慣的に決まっていることがたくさんあります。いちいち根本から考え直さないというのは、トラブル防止という点では「生活の知恵」のことがあると思います。

事実証明書

離婚で悩まれている方も多いですが、結婚で悩んでおられる方も多いので、多少でも参考になればと思って書いてみました。

もし婚姻届を出さずに事実婚をする、あるいは既にしているということでしたら、その事実を伝える書面を作成しておくことをお勧めします。