出世払い
経済的に困っている人(特に若者)にお金を貸して、「返済は、出世払いでいいから、遠慮なく借りておきなさい。」ということがあります。
「出世払い」とは、いつのことを指すのでしょうか。
「高い地位について、高給を取れるようになったときに返済すればよい。それまでは返さなくてよい。」「もし一生、高い地位に就かなければ、返済する必要がない。」と解釈してよいのでしょうか。
判例によれば、出世払いとは、将来、高い地位につくとか、多くの年収があるということではなく、一定の時期をさすことになるようです。
たとえば学生のうちに貸したなら、社会人になった時とか、自営業を始める前に貸したなら、その自営業が成功したといえる時や倒産して失敗が明らかになった時などをさすでしょう。
「出世払いでいい」と言った人は、もしかすると「期限も定めないし、場合によっては返さなくてよい」という意味だったのかもしれません。しかし、貸した人が何かの都合で資金繰りに困ったとなれば、やはり返してもらいたくなるでしょう。全額でなくてもいいから、返済してほしい、という例もあります。
相続のときの特別受益
知人や先輩、上司などから「出世払い」でお金を受け取った場合、何か問題になるとすれば、出世払いとして貸したお金を返してほしいというときでしょうから、以下、気づいた点を書きますが、実際にはあまり問題になりそうな気はしません。
それよりも、親から出世払いとしてお金を受け取った場合には、相続時に「特別受益」の問題になることがあると思われます。出世払いという状況からして、おそらく契約書等はないでしょう。額が大きいと遺産分割協議が複雑になる可能性があります。契約書等の資料がなければ、相続人同士の遺産分割協議で解決するしかないと思います。当時の預金口座の取引記録で何かわかればよいですが、難しいかもしれません。
貸金返還請求できるとき
一般的に、貸金返還請求ができるのは、返済・弁済の期限の到来時からです。返済時期をあらかじめ定めていなかった金銭の貸し借りを、「弁済期が決まっていない債権」などといいます。
貸主・借主双方で弁済期を定めなかった場合には、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をしなければなりません。そのときに、貸金返還請求ができるのです。
「相当の期間」というのが曖昧ですが、契約内容や金額をもとに個別に判断されます。
貸金返還請求と催告
無茶な請求をした場合には無効になるという法律行為もありますが、弁済期を定めない貸金返還請求では、不相当に短い期間を指定した場合、「その催告のときから弁済の準備をするのに相当と認められる期間が経過したときを弁済期とする」のが裁判所の立場です。
「明日中に全額返済してください。」と催告されたからといって明日返さなくてもよいでしょうが、妥当な期間が経過したときに、その催告は有効となります。ですから、
- いつ催告したのか
- いつが弁済期なのか
ということは重要ですから、「内容証明郵便」として発送してください。
また、適切な弁済期を定めたにもかかわらず、弁済期になっても支払いがなされない場合には、それ以後の遅延金も請求できます。
初めから弁済期を定めて、契約書にしておいた方がトラブル防止になることは間違いありませんが、そういうことをしたくない事情があったのでしょうから仕方がありません。
トラブルも争いごとも大抵そういうことから生じるので、争いごとは恥ではないと思います。争いごとを放っておいて、大きなトラブルにしてしまうのが問題です。
協議書・示談書・合意書
普通はまず、話し合いをするでしょう。話し合いがまとまればそれでよいですが、もともときちんとした契約書がなかったのですから、あらためて契約書・合意書等を作成しましょう。
意見が食い違うようであれば、訴訟沙汰になる前に、内容証明郵便での意見交換をお勧めします。内容証明は慎重に書きますから、冷静に考えるチャンスです。
自分の意見が100パーセント通らないようであれば、多少譲歩してお互いに歩みあえる条件を提示することもできるでしょう。
その場合は、合意書・示談書・和解書等を作成しましょう。
事情をお話しいただければ、彩行政書士事務所が状況をまとめて、文書として作成します。「行政書士」という名称がついていますが、行政・役所に関連しない個人的な権利義務に関する書面を作成するのも業務のうちです。こういう業務ができる資格者は行政書士と弁護士です。
川崎市中原区の行政書士
東急東横線とJR南武線の交差する武蔵小杉、その隣の元住吉を拠点としている行政書士です。近くにお住まいの方、勤務先が近い方はもちろん、遠方の皆様からもご相談いただいています。
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