☆ 令和2年4月1日から改正民法が施行されていますのでご注意ください。
内容証明と時効
内容証明では「〜を返してほしい」など、相手に何かを請求することがよくあります。その場合、法律で請求できる期間が決まっていますから、内容証明郵便と時効期間は関係が深いのです。要点だけ以下に書いておきます。
時効の種類
時効制度があることはよく知られていますが、その意味・法の趣旨はあまり知られていないかもしれません。まず時効には3種あります。
消滅時効・取得時効のどちらにしても、この法律を悪用しようとする人が行使する場合、前もって証拠を集めていることが多いですから、普通に権利があると思っていた(悪くいうと、ボンヤリしていた善良な)人は、訴訟などでは負ける可能性が高いでしょう。
- 公訴時効
刑事ドラマでいう時効はこれがほとんどでしょう。消滅時効ではなく公訴時効とか除斥期間のことを指していると思われます。内容証明郵便との関わりはあまりないので省略します。
- 消滅時効
消滅時効は、債務の履行をせよという請求に対して、もう時効期間が経過しているという抗弁(反論のようなもの)として使われるのが一般的です。もう昔のことだから、今さら蒸し返して争う必要はない、という考え方のようです。
債務を履行してくれない(約束を守ってくれない)からといって、すぐに裁判を起こす人は少ないですし、揉めているうちに10年くらいはすぐに経ってしまいます。友人や親族間では特にそうだと思います。嫌な予感がしたらすぐに、念のためでよいですから、専門家に相談しておくとよいでしょう。(このサイトでは内容証明を中心に書いていますが、それはほとんど権利保護や権利主張のためです。内容証明を送るとカドが立ちそうだから使わないという人もよくおられますので、その場合の権利の保護についてもご相談頂ければできる限りの対処はいたします。)
- 取得時効
ずっと使ってきたのだから、今さら返す気はない、という場合にも取得時効の主張ができるのですが、たとえば土地を先祖代々使ってきて、当然自分は親の所有物を受け継いできたと思って使用してきたけれども、それはあなたの土地ではないから返してくださいという人が現れたとします。しかし、ずっと昔から使用してきただけで、正式に購入した証拠がみつからないので、確かに自分のものであると証明できない、という場合などに使えます。山林・通路・庭など、役所にある構図や不動産登記簿と、実測では相違している場合もあります。
取得時効にかかる権利とは
簡単に言いますと、「所有権」「不動産賃借権」「地上権」「地役権」「質権」です。
時効は援用する
時が経過したからといって、当然に(何もしなくても自動的に)時効となるわけではありません。
消滅時効にしても取得時効にしても、あまり「正義のため」にあるような感じはしないでしょう。確かに借金はしたけれども、時間が経ったら返さなくてよいというのは、特に貸した側からすると納得いきません。また、借りた側も借りたものは「必ず返す」という信念(徳義心・正義感)を持っている人もいます。
ですから、法が時の経過を理由に、勝手に時効成立はさせることはしないのです。時効制度を利用したい場合は、
- 時が経過していることと、
- 援用すること(時効による権利を行使しますという表明)
が必要です。
時効の援用の仕方
法律的に「時効の援用」とまとめて説明してしまうと、取得時効と消滅時効の場合にわかりにくいのではないかと思います。
とくかく裁判で援用するものだと思っておけば間違いありませんが、取得時効と消滅時効では実務上、差異があります。また、裁判・訴訟といってもいろいろな種類があります。ここでは、取得時効の援用について、「裁判で主張する」とだけ書いておきます。
裁判はなかなか起こしにくいものです。実際、裁判を起こせば間違いなく簡単に自分のものになる場面でも、裁判は起こしたくないという人がかなり大勢おられるようです。
時効期間
ここでは旧民法(令和2年4月1日からは改正民法)の取得時効の期間を書いておきます。以下のことを知っているだけで通常は十分でしょう。詳しいことは具体的に専門家にお尋ねください。
・20年のもの
自分のものではないと知って占有していた場合
・10年のもの
本当に自分のものだと過失もなく信じて占有していた場合
【消滅時効】の項もご参照ください。
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