家族・親戚など近い人同士では、民法の規定によると、「扶け合う」ことになっています。これは主に扶養のことです。
扶け合いの程度には以下の2段階があるとされています。
- お茶碗1杯のご飯しかなければ、その1杯を分けて扶け合う
- まず自分が必要なだけ食べて、余っているご飯をあげればよいという扶け合い
お茶碗1杯のご飯を分けあうというのは極端な例ですが。
- 1に該当する人は、夫婦・未成熟子
- 2に該当するのは、親(成人した子の親)・兄弟姉妹・家庭裁判所が特別の事情ありと認めた3親等内の親族
というのが一般的です。
ご飯の分け方
上のような扶け合う関係の人たちの間で、お茶碗一杯のご飯をどのように分けるかを、法的に考えると上のようになります。
いろいろな場面で法律での規定をはじめから優先させて考える人は結構大勢おられますが、実際に子供とご飯を分けあう場面になると、自分は我慢して子供に全部あげようという人もいるでしょう。はじめから民法のとおりにしようとしなくてよいのです。
離婚協議書の作成や相続(遺産分割協議)でも同様です。まず話し合ってみて、まとまらなければ法律を頼ればよいでしょう。違法でなく、また強行規定に反するわけでもなければ、自分の希望どおりになる可能性があります。
法律を優先させると、上の例で、ご飯が少ししかないから子供に全部あげたくても、お茶碗一杯のご飯を人数割にしなければならないのかと思ってしまいそうです。
相手が誰であろうと、困っている人がいたらご飯を分けてあげてよいわけですが、逆に、この人にはあげたくないという親戚などはいませんか。人間関係やこれまでの経緯によっては、そういうこともあるでしょう。それでもご飯を分けるべきだとされるのは、どのような範囲の人に対してでしょうか。
民法上、扶け合うべきとされている範囲についてご紹介したいと思います。
眞子さんと佳代さん
今、この記事を書いているのは令和4年11月です。元内親王眞子さんの夫小室圭さんの母佳代さんが、令和3年12月24日に刑事告発されて、検察庁に受理も却下もされないまま、そろそろ1年近くが経過しようとしているそうです。
週刊誌やネット情報からすると、佳代さんが、将来天皇になられる人と法的にどのような関係になるのかと心配なさる方も多いようです。
天皇と一般人を民法の関係でみてみようというのがよくないかもしれませんが、関心は高そうなので、民法上の扶け合う範囲の説明にはよいかもしれません。
ここでは、婚姻するとどういう人とどのような関係なるのかということの一例としてご紹介します。
扶け合うべき範囲
日常的には家族や親戚という言葉をよく使いますが、法律上は親族と姻族が問題になります。
親族とはどのような人たちかというと
- 6親等内の血族と
- 配偶者および3親等内の姻族
です。血族は血のつながりですから、親が1親等、兄弟姉妹が2親等・・・というように数えてみてください。
「3親等内の姻族」となっていますが、3親等はわかっても姻族がわかりにくいと思います。
姻族とは
- 配偶者の血族、または
- 血族の配偶者
のことです。
皇嗣殿下と佳代さんとの間柄
具体的に皇嗣殿下と小室佳代さんの間柄をみますと、
- 血族でないことは明らか
- 自己の配偶者の血族でないことも明らか
です。
というわけで、親族でも姻族でもありません。
では、無関係なのかということですが、常識的には関係は深いと感じられるでしょう。
佳代さんは、皇嗣殿下の長女の姻族ですから、その人が問題を抱えていれば十分に心配だろうと思います。
悠仁さまと佳代さんとの間柄
悠仁さまは、現実に天皇になられる可能性が非常に高いといわれています。
佳代さんとの関係をみていきます。
まず、
- 血族でないことは明らか
- 配偶者の血族でもない
- 血族の配偶者でもない
ということになりますから、やはり親族でも姻族でもありません。
しかし、姉の1親等の姻族です。一般的に考えると、ただの他人ではないでしょう。
親戚
婚姻(法律婚)を積極的にする気になれないという人がいますが、その原因のひとつが、このような姻族という人間関係が生じることだとも聞いています。
私が学生時代にお世話になった教授は、独身時代、自分の弟の妻と子(その教授からみると甥)を扶養していた時期があったそうです。弟が戦死したため、その妻と子が生活に困っていたのでした。この場合、民法上の扶け合う義務はありませんが、現実にはそういう扶け合いもあるでしょう。まずは、現実・実生活・感覚や感情を先に考えて、それから違法性を検討するとよいかと思います。
参考までに、関係のありそうな民法の条文を記しておきます。
第730条(親族間の扶け合い)
直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
第752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
第760条(婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
第877条(扶養義務者)
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
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