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事実婚と内縁関係
事実婚が増えているようです。「事実婚」と「内縁関係」がどのように異なるのか明確ではありませんので、このホームページではたいてい同じような意味で使っています。ただ、昔の事例からすると内縁関係のほうが「婚姻届を出しにくい事情がある」のかもしれません。
- 愛情があるから共に暮らすのであって、婚姻届に左右されたくない。
- 婚姻届を出す必要性を感じない。
- 名字・氏の問題(夫婦別姓など)があるから、婚姻届が出せない。
など、理由はいくつかありそうです。
法的に婚姻が成立するためには、
- 1,婚姻意思の合致
- 2,婚姻障碍(婚姻障害・こんいんしょうがい)がない
- 3,婚姻届の提出
が必要です。
2と3はデータでわかるのですが、客観的にはっきりわからないのが1です。
- (a)ふたりが一般的にみて夫婦とおもわれるような関係になるつもりがあるということと、
- (b)婚姻届を合意の上で提出すること
のどちらを指すのかが問題です。両方あれば明らかですが、事実婚・内縁関係もあるし、偽装結婚というものもありますから、最低限求められるのはどちらなのかということです。
「あのふたりは理想的な夫婦・婚姻関係ではないようだ。」
とみられている夫婦は結構いると思いますが、
「あのふたりは夫婦とはいえない。」
と判断されるのは、どういう状態なのでしょうか。
婚姻意思を(a)だと思う人が多いのではないでしょうか。実質を重んじるということです。だからこそ、内縁関係や事実婚が多くの場面で「夫婦」と認められているのでしょう。
しかし、実質を重んじるということは、あまり法を重んじないということにもつながりそうです。
実質的な夫婦というものの意味が、社会通念・一般常識・周囲の評価次第となります。夫婦としての権利を主張できるか、夫婦として保護してもらえるかという厳密な判断が「社会常識」「一般常識」を基礎にしているのでは混乱しないでしょうか。
婚姻関係を保護
不倫の慰謝料では、配偶者と不貞関係にあった相手方に慰謝料請求できるのが普通ですが、事実婚の相手方が「配偶者」と同等に保護されるべきかどうかというような場合に重要なポイントとなります。法律婚(婚姻届を出している夫婦)であれば、しがらみ(?)もある代わりに、法的な保護があることは明らかです。法的に厳密に判断するのに役に立つということから考えると(b)のほうが正当にも思えます。
(b)なら判断は正確です。離婚届が提出されているかどうかを調査すればわかります。
そのかわり、偽装結婚を野放しにしてしまいます。偽装というくらいですから、悪いことに利用している可能性が高いわけで、悪いことをしている人を「夫婦だから」といって法的に保護するのは正義に反します。
また、形式上は正しい法律行為のようにみえても実は無効であったりするものがあります。脱税のために、自分の財産を他人名義に移したり預けたりした場合、この行為が無効となることもあります。ですから、形式だけを重視すればすべてがうまくいくものでもありません。
事実上の夫婦であれば
どうしてよいかわからなくなると、判例を参照することになります。判例は実際の事件について判断するのですから、結論だけをみてはいけませんが、だいたい「一般的にみて夫婦といわれるような実態」があればよいようです。
ここまで長々と書いた割に、意外とあいまいな結論です。「もし、こういうことが起きたらどうするのか」という議論をすると際限がありませんが、実際に何かトラブルや紛争が生じて、当事者の話を聞いてみると、普通はどちらの言い分が正しいか、およその判断はつくものだと思います。
法に基づきながらその最終判断をしてくれるのが裁判官です。公的な書類など、難しい判断が必要でなくても、裁判所の許可が必要なことがあります。
事実上、夫婦としての実態があれば、法律婚の夫婦となるべく同様に考えようという傾向はありますが、完全に同じではありませんから気をつけてください。