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クーリングオフの制度
路上で勧誘されたり、突然自宅にやってきた営業マンから商品の購入を勧められたり、マルチ商法などの複雑でリスクが高い契約をしたしたりした場合に、契約後も、消費者はもう一度考え直し、あるいは調査して、一定の期間内であれば申し込みの撤回や契約の解除ができます。
クーリングオフでは、
- 解約の違約金を支払う必要もなく、
- 契約をしないと決めた理由を説明する必要もなく、
- 消費者の一方的な通知(意思表示)だけでよい
のです。
クーリングオフ制度はいろいろな法律に規定されていますので、どんな契約がクーリングオフの対象なのかがわかりにくいと思います。購入商品・契約内容よりも、契約の仕方にポイントをおいて考えるとわかりやすいです。
通信販売・ネット通販などは、クーリングオフできませんが、これは別の方法で対処します。
クーリングオフは、どんな契約に、どのように適用されるのかが複雑ですので、専門家にお問い合わせいただくのが便利です。クーリングオフできる期間は短いので、どうしようかと迷っていると期間が過ぎてしまいます。迷うなら、まず解約して、またよく考えてから申し込めばよいでしょう。
クーリングオフの趣旨
法律では一般に「不意打ちはいけない」という考え方があります。何かを購入したいと思って、商店を探し、数種のメーカーのものを比較してから購入したのであれば、たいてい「不意打ち」ではないでしょう。
しかし、自宅に訪ねてこられて、うまく話をされると、
「ぜひ購入しなければ・・・」
という気になってしまうかもしれません。
「キャンペーンの特別割引は今日までです。」
というのもよくあります。
特にお年寄り等の判断力が弱ってきた方は気をつけなければなりません。また「断れない性格」の人もいます。
状況と程度によりますが、法律では「断れない性格」の人がいるとは考えていません。必要があれば訴訟まで起こすのが人として当然だと考えているふしもあります。しかし、弱者(?)救済の考え方もあり、不意打ちをされてしまった人を救済しようとする制度も作られています。
クーリングオフの問題になるような勧誘方法が1960年頃から社会問題となり、1976年になって「訪問販売等に関する法律」(略称「訪問販売法」)として成立しました。「人生を台無しにされた人」もいるでしょうし、そこまででなくても、この問題で苦しんだ人がかなり多いわけです。
クーリングオフによって一方的に契約撤回・解除できるもの
いくつか代表的なものをあげます。他にもあります。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引(マルチ商法)
- 特定継続的役務提供(エステ・外国語会話教室・家庭教師派遣など)
- 内職商法などの業務提供誘引販売取引
- 送り付け商法
クーリングオフできるもの
(1)法律で規定されているもの
各項目の後ろに記されているのは、クーリングオフの期間です。クーリングオフのできる期間は初日を含めて数えます。
- 訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールス等を含む):8日間
- 電話勧誘販売:8日間
- 特定継続的役務提供(エステ、語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービス):8日間
- 連鎖販売取引(マルチ商法):20日間
- 業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法等):20日間
- 訪問購入(業者が消費者の自宅等を訪ねて、商品の買い取りを行うもの):8日間 (2013年2月21日以降の契約が対象)
(2)業界の自主規制によってクーリングオフできるものもあります。
(3)業者が自主的にクーリングオフを規定しているものもあります。
クーリングオフできないもの
- 上記(1)以外で、店舗・営業所でした契約
- 自動車
- 携帯電話・プロバイダー等
- 契約内容が3000円以内で、その場で代金を支払い、商品を受け取った場合
- 指定消耗品(たとえば、化粧品・健康食品など)を一部でも使用した場合(さらに細かい規定があります)
クーリングオフ期間が過ぎた場合には、もうクーリングオフできないわけですが、事業者が解約を受付けてくれることもあります。また、
- 法定の書面を交付されていない
- 書面は交付されたが不備がある
場合には、手遅れではないと思われます。
クーリングオフの仕方
契約書にクーリングオフについて書かれているはずです。書かれていなければ、クーリングオフに該当するかどうかを確認しましょう。
電話だけでもよいとされていたり、クーリングオフ期間が過ぎても快くキャンセルしてくれる事業者もいますが、悪質な業者との見分けがつきにくいですから、念のためきちんとクーリングオフしたほうが安心です。
クーリングオフはご本人ができます。そもそも本人が自分でできない法律行為はほとんどありません。自分でやろうと思えばできるけれども、忙しいとか、手間がかかるとか、専門家に任せた方が安心という場合などに人に任せます。自分でできそうかどうか専門家に相談だけしてみるのもよいでしょう。
注意点は、
- クーリング・オフは「書面」ですればよいのですが、慎重を期すなら内容証明を郵便を使うこと
- クレジット契約をしている場合は、販売会社と信販会社に同時に通知すること
- クーリング・オフができる期間内に通知すること
などです。
はがきでクーリングオフの通知をしてもよいことになっていますが、高額な契約のクーリングオフなどの場合は特に内容証明郵便をお勧めします。
内容証明でなくても?
敷金返還請求やクーリングオフなど、さまざまな場面で内容証明郵便を利用できますが、ときどき、相手方から「わざわざ内容証明郵便でなくても、電話でもハガキでも済むことだったのに。」と言われることがあります。しかし、クーリングオフは結論から言いますと、
「ぜひ、内容証明郵便にしてください。」
確かにハガキ一枚でもよいことになっています。クーリングオフの期間が過ぎているのに、快く契約解除に応じてくれる事業者もいますし、電話でもよいという事業者もいます。
しかし、電話一本で契約が解除できたと思っていたのに、後から「そんな話は聞いていない。」「そんなハガキは受け取っていない。」ということにならないための用心です。
クーリングオフでは、通知をした日付が重要です。内容証明郵便ならもちろん万全です。
取引や契約は、「用心深すぎる」くらいがちょうどよいのだと思います。内容証明郵便を使う、行政書士に依頼する、(時間に余裕があっても)速達で出す、などによって、こちらの用心深さをわかってもらう効果があります。用心深い人に対しては、あまりおかしなことは言いにくいのです。
ハガキでよいですか
クーリングオフの方法として、
- 必ず書面でする。書面ならハガキで可。
- そのハガキの両面をコピーして保管する。
- そのハガキは特定記録郵便か簡易書留にする。
と説明されることがあります。
郵便窓口でそのハガキを「特定記録郵便」「配達証明」として差し出してしまうと、そのゴム印を押して番号等が記載されますが、それから自分でコピーをしに持ち出すわけにはいきません。
そもそもコピーの偽造・変造は簡単ですから、コピーで保存しておけば絶対安心というものではありません。
契約した会社へ「特定記録郵便」や「配達証明」で確かにそのハガキは配達され、配達の記録は残りますが、内容の記録は残りません。
郵便窓口に差し出す前のハガキをコピーしても、そのハガキが間違いなく「特定記録郵便」「配達証明」で送られたという証明がなく、結局、そのハガキが契約相手の会社に届いたのかどうかわからないということになりかねません。
契約したものの金額等にもよりますが、やはり内容証明郵便でする方が無難です。
消費者契約法
業者に下記のような違反行為があった場合、契約成立後でも取り消すことができます。ただし、無制限ではありませんから、安心してはいけません。
- 政令に定める書面を交付しない場合
- 政令に定める書面の記載に重大な不備がある場合
- クーリングオフを妨害した場合
- 不実告知・虚偽の説明をした場合
- 消費者に不利な点を故意に隠した場合
クーリングオフの違約金
クーリングオフをするのに違約金は不要ですが、
「署名押印した契約書に、『クーリングオフした場合、違約金を支払います』という項目が入っている。契約自由の原理に基づいて、大人が自分で判断して契約したのだから、支払う義務がある。」
と主張する事業者がいました。
「違約金を支払うという内容の契約書に自分で署名しておきながら、今になって取りやめるなんて、子供のようなことを言わないでください。」
と言われると、
「そんなことはわかっています。自分でしたことの責任は自分で取ります。」
といって、支払ってしまう人もいます。クーリングオフに限らず、このような論法を使う人は多いです。上の例は、内容証明郵便できちんと主張すれば大丈夫だと思います。
不審な契約
その契約について、本心であったか、情報は正確に与えたれていたかなどを考慮して、なるべく消費者を救済しようという傾向が一応ありますので、はじめからあきらめないで、検討してみましょう。
ただし一般論ですが、法律は「冷たい」ことがありますから、あまり期待しすぎないようにしてください。
真面目な営業に対しても、詐欺まがいの営業に対しても適用されるわけですが、悪い人に引っかかってしまうと対抗するのが難しいのが現実です。
クーリングオフの対象外のものもありますが、消費者に不利な事実を隠していた場合はどうなるのかという問題も生じるかもしれません。
クーリングオフの問題なのか、契約上の問題なのかという判断が必要なこともあります。
ご相談は、まず電話・メールでおうかがいしますが、契約書等の資料が必要です。また、微妙な事案の場合、お時間をいただくことがあります。
「売主の責任」についてもご参照ください。
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