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夫婦・家族が変わる?
このホームページの【不倫は違法か】のページでも書きましたが、不倫(不貞行為)の慰謝料請求は問題を抱えています。
自分の配偶者(夫・妻)が不倫(不貞行為)をしても、配偶者の不倫相手に「不倫の慰謝料請求は本来できない」、「できないようにしたい」、という専門家は結構多いのです。
「夫婦別姓」「事実婚(内縁関係)」などとも関連する問題です。
家制度(家督相続・家父長制度)が法的には半世紀以上前に完全になくなったにもかかわらず、国民の意識の中にはまだかなり浸透しているようですが、「ないはずのものがある」という点で似ているかもしれません。
もっとも、明治維新・大東亜戦争の後、人々の想いとは違って世の中が動きました。また大きな変革に直面しているのかもしれません。
話題の判決
平成26年4月に、いわゆる「枕営業判決」といわれる判決が出て、確定しました。不倫の慰謝料で訴えられて、慰謝料を支払う必要はないとお考えの方には力強い判決ですから、この判決を引用して訴訟をしてみたい人は弁護士さんに申し出てみるとよいでしょう。現にこの裁判では、不倫の慰謝料が認められなかったわけですから、勝訴する可能性はあるでしょう。
この判決については、「常識を覆すような驚きの判決」だとか、「今後はこのような判決は出ないだろう」とか「他の裁判へ影響はほとんどない」という声も多いようですが、私は非常に大きな一歩であり、転換期・混乱期にあることを示していると思います。
枕営業判決とは
この判決は、
『クラプのママ(乙)が訴えられた。訴えたのは、乙の優良顧客である丙の妻(甲)である。
丙はもともと乙の顧客であったが、7年前から乙と丙は月に1〜2回、土曜日に昼食をともにし、その後、ホテルへ行って夕方に別れるというパターンであった。
甲は、不貞行為の慰謝料として、乙に400万円の支払いを求めた。』
つまり、妻が夫のいう不倫相手に「不倫の慰謝料請求」をしたけれども、判決は、夫の不倫相手だとされた人は、妻に不倫の慰謝料を支払う必要はないというものでした。
この裁判は「枕営業判決」としてネット上で検索すると、たくさん紹介されていますから、詳しくはそれらを参照してください。
以下、それぞれの主張と判決内容です。
- 甲(妻・原告)の主張:精神的損害として不貞行為の慰謝料を請求する。
- 乙(被告)の主張:人違いであり、自分は不貞行為の相手ではない。
- 判決:クラプのママが、上客を確保するための方法として、性的関係を持つことがあるのは公知の事実。ソーブランドで夫が遊んできても、夫婦関係を害するとは認められないのと同様に、クラプのママの営業行為について、妻は不貞行為の慰謝料を請求することはできない。
(とにかく短くまとめたので、不適切な点があればご教示ください。)
念のため、確認事項
現在はまだ次のように解釈されているようです。
- 故意過失の有無にかかわらず(恋愛感情がなくても)、不貞行為は違法とされていました。
- これまでは、風浴で料金を支払って関係をもった場合、不貞行為にはなりますが、風俗嬢に慰謝料は請求できないとされていました。
- 売しゅんしても処罰はありません。
- 不貞行為の禁止は、夫婦・家族・親子・家庭を守ろうという目的もあったはず。(特に守る必要はないという意見もありますが、たとえば、「売買契約」でも、一度契約を締結した以上は、できることなら契約破棄ではなく、遂行させようという考え方があります。同様に、結婚した以上は、「なるべく婚姻生活・家庭を守りましょう。」というのも悪い考えではないとも考えられます。)
何が問題か
上に紹介した裁判で、画期的な点はいくつもあるようですが、私が気になるのは、
- クラプのママやソーブランドでは売しゅんをしていて、これに関し、妻は不貞の慰謝料請求をできない、という点ではなく、
- 配偶者の不倫相手に慰謝料という金銭を法の名のもとに請求できないようにしたいのではないか、ということです。
なぜかというと、この判決について、
『妻の請求権を認めたくなかったために、このような理由づけをしたのではないか』と指摘する弁護士さんがいます。上に書きましたように、配偶者の不貞行為の相手方に、慰謝料請求するのはおかしいと考える専門家が非常に多いからです。
また、「配偶者の性生活を管理する権利があるとする結婚契約そのものに否定的」な人権運動家は大勢います。
だから、大筋において、この判決でよいのだという確信を持っている人はかなり多いのではないかと私は思います。
裁判官が、
(1)売しゅん婦への慰謝料請求は認められない、と言いたいだけなのか、
(2)配偶者との不貞の相手方に慰謝料請求できない、という判例を作りたかったのか、
それがわかりませんが、昨今の婚姻関係を考えると、どうしても(2)なのではないかと考えてしまいます。
不倫はどうなる
では、今後、不倫の慰謝料がどのようになるのかということですが、
- 不倫相手に愛情がない場合は、婚姻関係に影響を与えないから慰謝料請求を認めるべきでない。
- 不倫相手に愛情がある場合は、現在の婚姻を解消(離婚)すればよい。日本の離婚は世界一簡単になっているし、子がいても、親と子は別人格だから、親の離婚は子に影響しない。それよりも、配偶者以外の人に愛情があるのに、法的な「婚姻」という枠にはめて婚姻生活を強要するようなことがあれば人権の侵害である。
そうすると、配偶者の不倫相手に、妻・夫としての権利を主張する(不倫の慰謝料請求をする)ことはできなくなるとしか考えられないのです。少なくとも、そういう考え方をする人が大勢いると思います。そうすると、いつか「不倫」「不貞行為」という言葉は死語となる可能性があります。
外国のように
日本国憲法の草案(あくまでも「原案」ですね。)は GHQ が作ったもので、「家族」に関しては、社会主義の憲法、特にワイマール憲法とソビエト憲法を参考にしたそうです。世直し的な発想から作られたのですから、憲法と従来の国民の慣習と合っていない点があるでしょう。
多くの国・地域で、配偶者の不倫相手は、不倫の慰謝料を支払う義務はありません。
自分の配偶者が不倫をしても、その相手方に慰謝料請求はできない。パートナー選びは自由競争である。配偶者を変更したければすればよい。それが人権の尊重である、という考え方です。価値観の問題です。
多様な価値観
いろいろな価値観がある。価値観は多様でよい、ということはよく耳にしますが、多くの価値観が共存できるのかというとそうでもありません。
「夫婦別姓がいい」という考えと、「一家族の苗字はひとつ」という考えを両方取り入れると、日本国での家族の苗字は統一されなくなり、「一家族の苗字はひとつ」ではなくなるのですから、日本全体から見れば、事実上「夫婦別姓」になったのに近い状態です。
人に迷惑をかけなければよいというのなら、「現在のわが国では一夫一婦制だけれども、自分たちは一夫多妻制(あるいは、一妻多夫制・多夫多妻制)にする。」というのも認められるのではないでしょうか。
「多様な価値観があってよい」といってしまうと、問題解決を投げ出したようなものです。ひとつの社会、ひとつの共同体では、ある程度共通のルールがあるはずです。もっとも「多様な価値観」と「無法地帯」とは異なりますから、この点は気を付けなければならないでしょう。
協議できないときに法がある
日常生活においては、一般常識と協議で答えが出ないときのためにあるのが法律でしょう。
「不倫の慰謝料は請求できるのかできないのか?」という問に対して、「したい人はすればいい。」では、答えにならないのです。請求するかしないかは、本人の自由ですが、請求権があるのかないのかは、規定しておく必要があります。
「不倫の慰謝料を、配偶者の相手方に請求するのは、本来、不当でしょうか?」と法律の専門家に尋ねると、
「人権に敏感な人はそう考える傾向が強いはずです。」
という返事が返ってくることがあります。ただ、現在は、法的にも、おそらく一般常識的にもそのようにはなっていません。従来の慣習や生活感覚を考慮せずに、いきなり法律論にすると、そのような答えになるのでしょう。
外国で「配偶者の不倫相手に、法律上、不倫の慰謝料を請求することはできない。」としても、不倫(不貞行為)が良いのか悪いのかというと、「悪い」のではないでしょうか。法律では責任がなくても、道徳的には悪いということです。夫や妻の不倫・浮気が原因で喧嘩になる、離婚するという例は世界中にあるはずです。
また、道徳的にどれほど悪くても、法律に違反しなければ処罰等を受けないことは明らかです。道徳で解決したいという人と、法律で解決したいという人がいるので、話が噛み合わないことがあります。
協議の目安としては、
- まずは常識や道徳
- 次に、法的な考えを参考にする
- それでも解決しなければ法律だけで勝負
ではないでしょうか。
外国とは違って
外国のいくつかの国の制度をまねようとする人がいますが、まねないまま続く事柄もたくささんあります。
婚姻・離婚が日本では「紙切れ一枚」のことで、当事者の意見が一致すれば自由にできますが、世界では離婚するのに、ある程度のハードルが設定されていることがよくあります。
日本の離婚は世界一簡単(「世界一」というのは同率一位がいくつもあるので、「世界一簡単な国の一つ」という意味)ですが、離婚が難しい国々では、必然的に結婚の重みが増します。
婚姻の重みが増すことがよいのか悪いのかわかりませんが(良い面も悪い面もあるでしょうが)、わが国が、今後、離婚が難しい国のようになることはないでしょう。「双方の婚姻の意思と婚姻届」が必要とされていたのが、「実質的に夫婦として暮らすのであれば、婚姻届という「紙っぺら一枚」を出さなくても、極力、法律婚と同様に扱う、というように「現在よりも簡単な方向へ進む」のが一般的だからです。
また、日本では売しゅんは禁止ですが、外国では、売しゅんが職業として認められているところがかなりあります。
宗教的・倫理的にはよくないと思っているようですが、アメリカの禁酒法のように、強引に禁止すると、社会の裏側で行われることになって、弊害のほうが大きいという判断と聞いています。公認したうえで、適切な管理をすることが大切だという考えです。同様に、麻薬も一定の制限のもとで禁止されていないところもあります。
家族とは
日本と外国を比べると、離婚のしやすさが違います。(こういうことを言うなら、厳密に全世界を調査すべきですが、やっていません。) 男女関係・夫婦・家族の考え方も違います。「不倫問題」と同時に「夫婦の必要性への疑問」「婚姻の不要」「家族の不要論」へと進んでいく可能性があります。ただ、婚姻の不要や家族の不要については、実践してみて、やはり必要という結論を出したところ(国や地域)があるのではないでしょうか。詳しくは専門書をご参照ください。
日本では家制度・家父長制度を廃止しましたが、「家制度の廃止」と「家族の廃止(軽視)」が混同されていないでしょうか。憲法では、家制度は廃止すると明らかにされていますが、家族については言及されていないのです。
今後の流れ
家制度を憲法で廃止しましたが、多くの日本人の中に、「家を継ぐ」「跡継ぎ」という感覚が残っています。時間はかかっても、法を変えることで、日本人の生活感覚も実生活も変わっていくでしょう。
『夫婦(誰を配偶者に選ぶか)は自由競争で、いつ変更(離婚)してもよいし、家族・夫婦を法律で保護する(枠にはめる)必要はない。』『子供がいて、母(父)が他の異性と仲よくなっても、「親は親」であり、親と子は別の人格であるから、子の福祉には法律上、影響を及ぼさない。』ことになっています。(実の親が、誰と暮らそうと親は親ですから子の成長に影響はない、という考え方です。)
夫と妻は別の人格ですし、親と子も別の人格なのはわかりますが、昔からの慣習・考え方はそう簡単に変わらないと思います。離婚がよくないというのではありません。離婚・再婚もずっと昔からよくあることです。
横浜・川崎・東京 家族
彩行政書士事務所は、内容証明郵便・不倫の慰謝料・遺言書などの相談と手続きを多く扱っています。
- 「こういう内容証明郵便を書いてください。」
- 「不倫の慰謝料を△△円、請求してください。」
- 「次女に△△円あげるという遺言書を書いてください。」
と、具体的に内容を考えてから、行政書士に依頼しなければならないと思っている人もおられますが、
「今、こういう状態ですが、どの書面をどのように作ったらよいでしょうか。」
という相談もお伺いします。
第三者としてお話を聞いていると、本人とは違った見方ができます。また、多くの人のお話を聞いていると、ある程度、「悩みやトラブルにはパターンがある」ことに気づきます。
もちろん、同じ相談はふたつとないのですが、似たようなパーツの組み合わせのこともありますので、解決へのきっかけになるかもしれません。
そのような「相談だけ」でもうかがっています。いきなり「法律で勝負!」ではなく、まず、「当事者が話し合い・協議をして解決したい。行政書士はそのお手伝いをする。」と考えています。
メール・電話等でご連絡ください。
川崎市 中原区 武蔵小杉
東横線と南武線の交差する武蔵小杉・元住吉で面談しています。
アクセスがよいので、静岡・千葉・埼玉などからもおいでいただいていますが、メールは全国対応です。
相談だけでも結構ですし、内容証明郵便作成なども必要になるかもしれません。
示談書・合意書もよくある業務です。
- 就業後の19時以降
- 土曜・日曜・祝日
も、ご連絡いただければできるかぎり対応いたします。(会議中・移動中など、「後でまたご連絡します」ということもあります。)
短時間のやり取りですと、言い間違い・聞き間違い・勘違いは結構あります。念のため、確認や修正のお電話を差し上げたほうがよいことがありますので、電話は「番号ツウチ」でおかけください。こちらから勧誘することはありません。
相談内容や依頼内容は、箇条書きでもよいので、気になる点を書き出してみたり、出来事を時系列でメモしてみると、何が問題かわかりやすいでしょう。それをメールで送っていただければ、こちらでも的確な対応がしやすいと思います。