その書面の内容を認めた人の署名があれば一般には有効ですが、一定の書面には押印が必要です。重要な書類であればハンコの偽造をされるのではないかと心配する人は少なくありません。ハンコの偽造はもしかすると偽造の中でも初歩的なのかもしれません。
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ハンコ(印鑑・押印)の効力
相続のときに、他の相続人(代表相続人)に印鑑証明書を渡さないでほしいという依頼は結構あります。遺産分割協議のときなどに、何か不信感が湧いたのかもしれませんし、相続の前から信頼していなかったのかもしれません。
実印と印鑑登録証明書が揃うと、確かに「本人が自分の意思でやっていること」と認められることが多いので、実印の印影は偽造し、印鑑登録証明書はだまし取る(他の理由で渡したものを「使い回す」)のではないかと心配なのでしょう。
理屈の上ではそうかもしれませんが、「偽造しよう、だまし取ろう」と考える段階から、実際に偽造や詐取の実行に至るまでにはかなり高いハードルがありそうです。
日頃、悪事に慣れていないと、急に悪いことはできないでしょう。悪事をやり慣れている人にとっては簡単なのかもしれません。あなたが、今、協議や契約をしようとしている人がそういう人なのかどうか考えてみてください。(そんなことをする人はいない、と言いたいのではありません。実際にはいるでしょう。)
内容証明と遺言書
一通の遺言書が何枚にもなるときは、前ページと後ページにまたがって契印(よく「割印」とよばれますが、正式には違います)をする必要はありませんが、一通の内容証明郵便が何枚にもなるときには契印が必要です。
遺言書には氏名とともに印(押印)が必要ですが、内容証明郵便の場合は氏名の後に印を押す必要はありません。
しかし、私は遺言書(自筆証書遺言)でも内容証明郵便でも、ページにまたがって押印し、氏名のあとにも押印しています。「印がないからこの書面は無効だ。」などといわれることが防止できるからで、その結果、物事がスムーズに進むと思うからです。何が重要なのか、今、やっていることの目的は何かということを考えるべきでしょう。
一般に、「規則どおりだから、これでいい。」という場合と、「規則にはないが、多くの人がやっているようにやっておこう。(ただし、法的要件は整えてある。)」という場合があると思います。日常生活では、後者のほうが無難でしょう。
内容証明郵便への押印
内容証明に使う印鑑は実印である必要はありません。そもそも差出人として書かれている人が本当に送付してるかどうかも確認しないくらいですから、実印である必要はありません。押印は任意というか慣習でしょう。
しかし、しっかりとしたハンコで押印しておくと、「どうしても知らせておく。」「誠実に話し合おう。」という差出人の気持ちが伝わるような気がします。押印は任意とはいえ、やはり押しておくことをお勧めします。