不倫が発覚すると、「離婚するのか」という考えが浮かぶ人は多いでしょう。配偶者の不倫を知った直後には、かなり真剣に離婚を考えるかもしれません。
少し時間をおいて、たとえば1週間とか2週間とかご夫婦で話し合いなどすると、ある程度は冷静になりますから、妥当な決断に近づいてくると思います。
それから、不倫の慰謝料・離婚協議書・養育費についての取り決めなどの相談をするとよいでしょう。
2つの慰謝料
「不倫の慰謝料(不貞行為の慰謝料)」と「離婚の慰謝料」がありますが、このふたつは関連はあるとはいえ、別物です。
不倫があって、離婚もした場合、不倫相手は「離婚の慰謝料」を支払う義務があるのかということについての議論があります。
先に結論を書いておきますと、よほど特別の事情がない限り、支払う義務はありません。よほど特別の事情とは、通常は起きない状況のことなので、現在の自分は「よほど特別の事情には当てはまらない」のだと、とりあえずはお考えいただくとよいと思います。
離婚の慰謝料と相姦者
まず、何が問題となるかですが、太郎と花子が夫婦で、花子がB男と不倫をしたとしましょう。B男のことを相姦者ということもあります。
太郎 === 花子 −−−− B男
諸説ありますが、現行の法律では、花子は不法行為をしたことになります。花子とB男は、ふたりで太郎に精神的苦痛を与え、太郎・花子の婚姻生活を脅(おびや)かしたので、太郎はふたりに不倫の慰謝料請求ができます。
離婚時には、離婚の慰謝料というものも問題になります。離婚に至った責任をとってください。あなたのせいで私は離婚という苦痛を受けたので、慰謝料を請求します、ということです。
太郎と花子が離婚した場合、花子とB男の不倫が原因だろうという印象を受けます。では、B男は不倫の慰謝料を払った他に、離婚の慰謝料も支払うのかということにになります。
慰謝料の二重払い
不倫と離婚には確かに関連はあるでしょうが、太郎と花子が離婚した場合には、不倫の慰謝料の増額原因になりうるので、両方にわたってB男が払うとすると二重払いになる感じもします。
不倫だけが原因で離婚するということはあまりないようです。不倫にプラスして何かありそうです。
それは、一般的な友人関係でも同様でしょう。その人と共にいて、生活習慣や常識が違う、生きる世界が違うと感じることがあるでしょう。そういう人とは結婚しないでしょうが、結婚してから「こういう人だとは知らなかった」ということもあると思います。あるいは、結婚してから、性格や生活が変わったかもしれません。
何か違和感があると思いなが婚姻生活を続けていたところ、不倫が発覚し、離婚する決意をしたという話はよくあります。
この場合、不倫はきっかけであって、婚姻生活が終了した原因は不倫の前からあったわけです。
前述の人間関係でいうと、太郎と花子の婚姻関係にはもともと無理があったが、離婚には踏み切れなかった。しかし、不倫が発覚して離婚の決意を固めたという場合、不倫についての慰謝料をB男は(花子と一緒に)払うので、B男は離婚の慰謝料を支払う義務はないということです。
例外としては、「夫婦を離婚させることを意図して、その婚姻関係に対する不当な干渉をするなど」した場合です。(平成31年2月19日 最高裁判決)それは個別の事案で検討することになります。きわめて特殊なものだと思いますので、通常、そういうことは起きない、自分の場合には当てはまらない、上のB男は離婚慰謝料を払う義務がない、と思っていたほうが無難(わかりやすい)でしょう。
法律問題なのか
問題が生じたとき、「示談書・合意書等を作ることを目標」として、「協議書のやりとり」を通じて、問題解決を図るとよいと思います。
直接に面会して話し合わないのは、感情的になったり、話が逸れていったり、話の上手な人が得をしたりすることのないようにということもありますし、また、協議書のやり取りなら、経過も確認できますし、証拠として残すことも可能だからです。
熱くなって議論・協議していると、意外と初めの頃の主張がわからなくなります。事実の前後関係がわからなくなることもよくありますので、協議書、少なくとも書面やメールをお勧めします。
その過程や結論について、人からみてどうかではなく、当事者が納得することが大切です。もちろん違法とか公序良俗に反することがあってはいけません。
法律ではどうなっているのかということも参考にはなると思いますのでご紹介しました。
原因は何か
上に、「結婚してから、相手の性格や生活が変わったから離婚する」ということを書きました。たとえば、夫の仕事がうまくいかず、家に帰ってから家族に八つ当たりするとか、夫の勤める会社が経営不振となって給料が減る、家計が苦しい、夫婦喧嘩が増えた、そして離婚したとなると、妻は「あなたのせいで私たちの婚姻生活は破綻し、私は離婚という辛い目に遭った。だから離婚の慰謝料を請求します。」と夫に主張できるでしょうか。
自分たちの夫婦仲が悪くなったのは、会社内でのストレス・会社の経営不振が原因だから、私たちの離婚の原因を作ったのは会社である。離婚の慰謝料を会社に請求したいというような例は実際にあります。例があるといっても、かなりアレンジして書きましたので、実際の話とは大きく異なるのですが、話の構成としては似ています。
この点は、冷静に考えましょう。
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