内容証明郵便を無視

内容証明郵便が届く理由は、

  • (1)訴訟にする前の予告・最後通告: 文面は簡素で高圧的か事務的。弁護士事務所から届くことが多いかもしれません。
  • (2)義務を果たしてくださいという要求: 文面には、あなたが義務を果たさなければならない理由や損害賠償をしなければならない理由などが書かれています。場合によっては訴訟をすると書いてあっても、訴訟にするとお互いにデメリットが大きそうなので、できれば訴訟にせずに示談・和解しましょうという提案。
  • (3)一種のお願いですが、普通郵便よりも真剣さが伝わるだろうと考えたもの。

という3種類が多いと思います。

最後通告

(1)は、もう相手の決意・結論ははっきりしていて、こちらの主張どおりにしないなら訴訟をすることが決まっているもの。金額的に高い問題が絡んでいるので、弁護士に依頼しても十分なメリットがある場合が多いでしょう。ただ、相手の主張が本当に正しいとは限りません。

義務を果たしてください

上の(2)の例です。

「自分はあなたにこういう要求をする権利がある。」ということで、逆にいえば「あなたには義務がある。」というお知らせです。だから、訴訟にすればあなたは負けるのでしょう。

たとえば、あなたが200万円支払う義務があるのに支払わないから訴訟にするとなれば弁護士費用がかかります。それに対抗して、あなたも弁護士事務所に対応を依頼するなら、あなたにも弁護士費用が必要です。双方の弁護士費用を合計するとあとほんの少しでお互いに妥協できる額に達するというような例があります。

くどいですが、さらに説明すると、あなたには義務・責任があって、損害賠償などを支払わなければならないということはわかるけれども、相手の要求額が高すぎると思っているとします。だから意見が一致しないので、「よし、裁判官に決めてもらおう」ということになると、おそらく双方が弁護士さんに訴訟の依頼をします。そして双方が報酬等を支払います。

この弁護士さんに支払う報酬等を、あなたの支払う額、相手の受け取る額に補填してみると、あなたは当初の予定より少し多めに支払い、相手は当初の予定よりも少し受取額が少なくなる程度に収まることがあります。

それなら、「訴訟をせずに初めからお互いに協議して、示談で解決しませんか?」という状況のことがあります。私はこれを「大人の解決」といっていますが、双方に、我慢・譲歩・判断力が必要です。

こういう提案をされているから、内容証明郵便の事情説明が長くなりがちです。それにもかかわらず、「内容証明郵便が来たから、よーし、受けて立つ。勝負だ!」となってしまうと、双方とももう後戻りができなくなって、訴訟・高額のやりとりとなってしまうかもしれません。

ただ、これにはお互いに「ある程度の誠意・寛容」を持っていることが前提です。

「人として恥ずべき態度であろうとも、少しでもお金を取りたい。」

とか、

「人にどう思われようともお金は少しでも払いたくない。」

という人もいますから、そういう人とは示談ができません。この記事のタイトルになっている「内容証明郵便を無視」する人にはそういう人が多いかもしれません。

まったく根拠のないことであればともかく、そうでなければ反論や説明をするのが普通でしょう。人と関わり合いを持って生活している以上、そのような迷惑は(程度によりますが)やむを得ないこともあります。

どちらかに誤解があれば、協議によって誤解は解けるでしょう。日常生活・男女関係などでは何かと感情的になりがちですので、一般的には直接に面会しないことをお勧めしています。書面・メール等で冷静に説明するメリットは、その場の感情で関係が悪化することを極力抑えられることでしょう。

また、会いたくない相手と顔を合わせると、相手の表情やしぐさが意外と心に残ります。後々、「トラウマ」にならないためにも、「会わない」という選択が賢明な場合があります。

「お願い」の内容証明

上の(3)です。

よく近隣問題・隣人問題など、騒音やゴミの問題で、「内容証明郵便でガツンと言ってやろう。」という人がおられますが、なかなかそうはいかないことが多いのです。

まず、あなたにそれを「ガツンと言う」権利があるのかということです。お互いの「一般常識」が異なることはよくありますので、通常、相手が平気でやっていることをあなたがやめさせるには、一般常識以上の「法的根拠」が必要だろうと思います。

騒音が大きい、強い臭いがする、自分の家のエントランスが隣の家の防犯カメラに映っているようだ、というような場合、どのような権利や義務があるかが問題ですし、それらは「程度問題」のことがよくあります。程度・許容限度を超えているのかどうかは難しい判断のことが多いです。内容証明でガツンといってやろうというわけにはいかないかもしれません。

そうすると、協議して丁寧にお願いするしかないかもしれませんが、後々、「再三、このように申し入れた。」という証拠があるとよい結果が得られることもあります。いきなり内容証明郵便は失礼にあたるでしょうから、前もって柔らかく意思表示をしておくほうがよいかもしれません。ということは、ある程度時間が必要です。

まず本人がお願いをするのか、第三者(専門家)がお願いを伝えるのか、どちらがよいかも考えなければなりませんし、併用するのかもしれません。その点はご相談ください。

内証証明を無視してよいのか

内容証明郵便は手紙なので、無視、つまり、受け取っても何も反応しないというのは、なんら違反行為ではありませんが、通常は何かしないと関係が悪化し、相手は「たとえ費用的に損をしても、訴訟で打ち負かしてやりたい。」という気持ちが湧くかもしれません。ある程度、経済的に余裕のある方で実際にそうなさる例もあります。

法を悪用したり、特殊な知識を駆使して、相手から金銭を巻き上げようというようなこともありますから、その場合はご注意ください。必要に応じて弁護士さんのご紹介をします。

早く弁護士事務所で相談?

内容証明を受け取ったときの対処法アドバイスで、「早く弁護士に相談を」というのがあります。ここが難しいところです。

一歩間違えると、ここで示談の可能性がなくなって、弁護士を交えた交渉・訴訟という大問題に発展するかもしれません。これは相手方・状況などによって決まります。

相手が悪い人なら、一刻も早く弁護士さんに相談してください。

相手が真摯に対応し、賠償額等を払うから穏便に示談にしたい、あなたも多少の譲歩はしても早く解決したいということなら、わざわざリスクを背負って危ない橋を渡らなくても解決の道はあるでしょう。

 

結局、「誰にどう思われようと、法的に負けなければそれでよい」という人以外は、届いた内容証明郵便を無視しないのが原則でしょう。

 

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