婚姻届を提出しない
どのくらい昔でしょうか。私がテレビドラマなどで初めて「同棲」という言葉を知ったのは中学生の頃だと思います。
このときは、「男女が共に暮らすけれども、道徳的ではないので周囲には内緒」というような印象だったと記憶しています。なぜ結婚しないのか、将来的には結婚するつもりなのかは、私にはわかりませんでした。
その後、「内縁関係」というのも知りました。内縁関係は、昔、事情があって男女が共に暮らすようにはなったものの、婚姻届の受理要件に該当しないため、婚姻(法律婚)をしたくてもできない関係だったようです。
簡単な例としては、戸主がその結婚を許可しない場合です。(現代でも、「一応、本家の意向をうかがってから正式に決まる」ことがあります。)
実際には他に複雑な事情が種々あったようです。
「事実婚」をする理由ですが、まず、「法律に拘束されたくない」「婚姻届という紙よりも愛情が大切」「男女関係をひとりの配偶者に固定せず、常に自由意志に依るとすれば、婚姻届を出す意味がないから」というように何となく聞いていました。
さらに、その後ですが、婚姻よって自分の旧姓を名乗れないのは、自分のアイデンティティを否定する行為であって、人権侵害であるという夫婦別姓(夫婦別氏)の考えがあることも知りました。
以上が、私が法律を学ぶ前の「婚姻外関係」の印象です。
婚姻外関係
民法典では婚姻外関係について何も触れられていませんが、婚姻外関係には
- 内縁
- 事実婚
- 妾関係
- 愛人関係
などたくさんあります。
従来、「事実上の婚姻生活に入っているが、婚姻の届出をしていないために法律上の婚姻とされない男女関係」が内縁関係とされ、その内縁関係に至った理由が、
- やむを得ない事情で届出をしていないものを「内縁」、
- 主体的な意思で届出をしないのを「事実婚」
とする説がありました。現代ではそのような分類がかならずしもあてはまらないようなので、彩行政書士事務所のホームページでは明確な区別はしていません。
「同棲」と「内縁関係・事実婚」はまったく違う意味で使われることもあるのですが、これらを総称して「婚姻外関係」といっておきます。
内縁関係と事実婚は民法に規定がありませんが、裁判等ではすでに原則として法律婚に準じて扱うことになっているようです。
ただしまったく同じではありませんし、婚姻届を出す意味がなくなったわけではありません。
ルールと自由と
婚姻関係にある男女に不倫・不貞行為があった場合には、婚姻関係を破壊する行為として損害賠償(不倫の慰謝料)の問題が生じますが、同棲・内縁関係・事実婚の場合、簡単に判断はできません。妾・愛人となると公序良俗に反するとして、法的な保護はありません。
婚姻届を出していないだけだからと許容してみたり、公序良俗に反する男女関係として保護しなかったりすれば、その判断基準はどこにあるのか疑問が生じます。少なくとも、人によって判断基準が異なることがあるでしょう。
内縁と事実婚を法律婚に準ずるとして多くの場面で認める一方、相続権は認めないなど、諸事情を勘案しないとわからないものもあります。
また、「法律婚と事実婚」「事実婚と事実婚」などが重なる(重婚)のおそれはないのか、重婚かどうかをどのように判断するのかというのも大きな問題です。さらに、重婚がなぜいけないのかという疑問も生じます。
いろいろなルールの中で暮らしていますので、ルールと自分の状況を心得ている必要があるでしょう。人に迷惑をかけなければ何をしても構わないような気もしますが、必ずしもそうとは言い切れないと思います。
婚姻関係の重要性
そもそも婚姻関係は、特定の男女を婚姻という関係にあると認定して、一定の保護を与えるものです。保護の裏返しとして約束事(義務)も生じます。
昔からの知恵として保護が与えられるので、保護を受ける人のほうが多いわけですが、特別な保護を受けたくないとか、義務を負いたくないという人もいます。
婚姻関係は肯定するにしても否定するにしても大きな問題です。不倫の慰謝料・離婚・養育費・財産分与・親子関係(子育て)・相続など、さまざまな問題が生じたり、自分の立場を大きく変えることがあります。
これらは多くの場面で問題になりますが、法律の勉強が目的ではないので、自分の置かれた状況を正しく理解し、自分の抱えた問題をどのように解決したいのかという方向性を見失わないことが大切だと思います。そのうえで、内容証明郵便や協議書・示談書・事実証明書を考えましょう。
小説やドラマの中では「型破り」なことが起きますし、海外の習慣や法律を一面的に紹介する情報がたくさんあります。これらに踊らさせて後悔することのないように判断してください。
川崎市中原区の行政書士
行政書士は「型にはまった手続き」のお手伝いや代行もしますが、一人ひとりの「権利・義務」を守るお手伝いもしますので、取扱業務は非常に広い範囲に及びます。
法律を使って勝負をするのは基本的には弁護士さんのお仕事だとお考えください。勝負(裁判)の結果はやってみなければわからないとよくいわれますが、訴訟をすればとにかく結論は出ます。その結論が、自分の意に沿わなかったり、当事者双方が傷つくことがあると思います。
彩行政書士事務所ではできるだけ「大人の解決」を目指します。(もちろん裁判も十分大人の解決ですが、裁判所という公的な機関と税金を使わなくても、解決の方法はあるだろうということです。)
腹の立つことはあります。カッとすることもあります。悔しさが何十年も続くことがあります。「可愛さ余って憎さ百倍」といいますが、「かつて親しかったからこそ憎さ百倍」ということもあるでしょう。
それは十分承知していますが、「大人の解決」をするかどうかも含めて、カウンセリング的にご相談をお伺いします。必要に応じて弁護士事務所のご紹介もします。
川崎市中原区、JR南武線・東急東横線の交差する武蔵小杉と元住吉を拠点にしていますが、多くの業務は全国対応しています。事案によりますが、一度は面談したほうが良い結果につながることが多いと思います。ほとんどはメールで、そして時々電話と郵便を使います。
お問い合わせの上、面談予約をお願いします。簡単にお答えできることでしたら相談料は不要です。しかしお電話などで即答できないこともあります。メールでしたら考えながらお答えします。