協議に第三者は必要か

当事者同士で話し合いをするにあたって、「第三者を入れよう」という言葉を使うことがあります。

次のようなイメージでしょうか。(図1)

第三者イメージ1

おそらく、勝手な主張をすることなく、客観的な協議をしましょうという意味だと思います。
そういう心がけはすばらしいと思いますが、「第三者を入れての協議」というのは、実際には結構難しいことがあります。

議員さんに来てもらう?

同じ市内に住むAさんとBさんの間で意見が分かれ、話し合いをすることになった例を参考までにご紹介します。

第三者に入ってもらおうということになりました。
まずAさんが第三者として選んだのは、その地区選出のCさんという市会議員でした。
Aさんが市会議員さんに依頼したのは、

  • その地区の議員さんなら不公平なことをすれば評判が落ちるから公平にやってくれるだろう、
  • 議員さんだから、協議には慣れているだろう、

と考えたのではないでしょうか。

Bさんとしては、なぜ市会議員Cさんなのか、AさんとCさんは親しいのではないかと疑問を持ちました。
そこでBさんは、AさんがBさんを連れてくるなら、自分は県会議員のDさんに来てもらうと言い始めました。
結局、どちらにも来てもらうことはありませんでした。

もともとAさんとBさんの描いていたイメージは上の図のようなものだったと思います。
ところが、いつの間にか次のようなものになったのです。(図2)

第三者イメージ2

議員さんとしても、これでは引き受けるわけにはいかないでしょう。
もし図1のようにやりたいのなら、中立で、ある程度この協議を仕切ることのできる人にやってもらわなければ意味がありません。

分別のある人なら

もし図1のような状況で、その第三者という人が、冷静に双方の主張を聞いて感想を述べるだけでよいとすると、高校生や大学生でも(偏った思想に染まっておらず、ある程度賢明であれば)結構務まるのではないでしょうか。
そして当事者が、自分の主張をした後で、その第三者の意見を冷静に聞く用意があるのなら、第三者に入ってもらわなくても、おそらく自分たちで協議も譲歩も合意もできるだろうと思います。

弁護士事務所で

もし弁護士に依頼して代理人になってもらうと、双方の代理はしませんから、一般的には客観的ではないでしょう。
このようなイメージです。(図3)

第三者イメージ3

当事者双方が弁護士事務所へ行き、「私たちの話を聞いてください」ということなら、そういう依頼人たちの意を汲んで、公平と思われる解決法を提示してくれるかもしれません。しかし、最初に紹介した「議員さんの例」のようになってしまう可能性もあります。

もちろん当事者双方が弁護士を依頼することもできます。
その場合はすでに紹介した図2のようになります。

これは冷静に話し合うよりも、どちらかといえば徹底的に対決する場合のやり方だと思います。徹底的にやるのではなく、相手の話も聞いて、そしてこちらは譲歩もする用意があるので穏便に解決したいと依頼しておけばよいのかもしれません。しかしそこまでできるなら当事者だけでも合意できそうな気がします。

以上をご覧になって、「第三者を入れての話し合い」をどうお考えになるでしょうか。

行政書士は第三者なのか

彩行政書士事務所では依頼人から事情を聴取し、意向を整理し、法的な妥当性を考慮して、合意書案を提示します。納得できたら、今度はそれを相手方に提示して回答を待ちます。

もし、合意できない点を指摘されれば、修正案を検討します。その修正案で納得できれば、再度、相手方へ知らせます。
依頼人→行政書士→依頼人→相手方、そして 相手方→依頼人→行政書士 →(以降、繰り返し)、となります。

彩行政書士事務所では、この作業を2度3度繰り返しても料金は変わりません。どこかで大転換があったり、繰り返しの回数が増えると、料金も上がります。(このような料金アップが心配でしたら、セット料金もあります。)

合意内容ですが、双方が納得できれば、法律に反しないかぎり内容は自由と考えていてよいでしょう。

次のようなイメージです。(図4)

第三者イメージ4

この場合、第三者(彩行政書士事務所)はAさんだけに有利でBさんが損をする合意書を作るのかということが問題です。上に書きましたように、

(1) まず依頼人から事情を聴取し、意向を整理し、法的な妥当性を考慮して、合意書の案を提示
しますので、まずAさんの主張に則った案を作成しますが、
(2) 白を黒にしたり、黒を白にしたりするようなことはありません。(現実的に、そのようなことはできないでしょう。)白なのか黒なのかは事実関係を確認すればよいことで、たいていは当事者自身はわかっています。ときどき勘違いもありますが、多くの場合、話せばわかるようです。証拠を出せとか、証人を連れてこいということにはなりません。もし、そうなるなら訴訟をしてください。訴訟ですと、いくら事情は明白だと思っていても、「証拠がはっきりしない」ので主張が認められないということがあると思います。

図4をみると、Bさんも「第三者」(行政書士等)を付けないと(図2の状況になって)負けてしまうのではないかと思うかもしれません。しかし、「第三者を入れての協議」というのは勝負事ではなく、話し合いによって納得できる点とできない点をはっきりさせていくことです。実際に経験してみるとおわかりいただけると思うのですが、通常は、第三者の「助太刀」がなければ負けるということはありません。

彩行政書士事務所としては、A側の考えを整理してB側に伝えます。B側は、合意書案の一部に納得できない点があるとか、意味がわからない箇所があるということなら、そのように返信すればよいと思います。修正案の提示とか、不明な事項の説明はします。虚偽の説明をすれば違法行為です。

ですから全体的にみると、AにもBにも特に不利益はないと思います。行政書士ひとりがいる場合、協議を始める前に「不公平なのではないか」という心配は、実際に協議を始めてみると杞憂に過ぎなかったというケースがほとんどです。

こういう作業をする行政書士を「第三者」とよぶのかどうかわかりませんが、行政書士が関与する方法ですと、「当事者だけ」での協議でもなく、また「第三者に一任」でもない解決のしかたです。

印象にまどわされずに

「第三者を入れよう」にかぎらず、いろいろな場面で、なんとなく使っている言葉や表現があります。法律用語なら調べればよいのですが、日常的に使っている言葉には注意しないと、かえって問題解決が遠のくことがあります。自分が当事者となると、自分では気づかないうちに相手方との誤解やすれ違いの生じることがあります。

嘘をついたら罰金

印象にまどわされる例を紹介しましょう。
問題解決にあたり、「もしこの約束を破ったら違約金が発生する」ということが合意書の内容含まれていることがあります。
「つまりそれは罰金をとるということですよね。罰金はどうも・・・気が進まない」という発想をなさる人がおられますが、ここで「罰金」という言葉の使い方がおかしいでしょう。(罰金は刑罰のひとつですから、個人どうしの協議で罰金は発生しません。)

確かに、「嘘をついたら罰金だからね」と小学生の頃に言っていた記憶がありますが、正確な表現ではありません。契約を守らなければ違約金が発生するという書面を読んで、「約束を破ったら罰金をとるのは嫌」だと感じてしまうと解決ができないでしょう。

こだわる

現在、「こだわりの逸品」というと良い意味でしょうが、元々「こだわる」というのは、よくない意味だったようです。ひとつの言葉にこだわる、ひとつの主張にこだわるのは、問題解決に近づけないだけでなく、心の持ちようとしてもよくないでしょう。

大きなショックや悲しみに遭うと、こだわりが生じるのは仕方がないと思います。当事者にとっては、ある程度は仕方がありませんが、そういう状態で相手方に電話をするとか直接面会するのは、おそらくよい結果を生みません。結局、書面・メール等などを使って協議をするのが手堅い方法だと思います。そのお手伝いをするのが彩行政書士事務所と考えています。
ですから、なにが何でも完璧に自分の要求を通そうという人からの業務依頼はお引き受けできないことがあります。

「どうしても達成したい目的」を実現する方法はきっといくつかあります。
適切な例かどうかわかりませんが、「山頂に登るには北からがいいか、それとも南か」と検討していたのに、いつの間にか、南からの方が景色がいいからどうしても南から登りたいと固く思い詰めるようなケースがあります。
それも大切なのでしょうが、一番大切なのは山頂に到達することのはずなのです。景色の良い南ルートで登頂できればそれに越したことはないので協力しますが、南が困難なようなら北に変更する柔軟さは必要でしょう。

そのように何かに固執する・こだわるのは、精神的に弱っている(病んでいる?)からかもしれません。場合によっては、少し時間をおいてから協議に入るとよいかもしれません。
もっとも時間が経ちすぎるのもよくないので、【時間が経つということ】もご参照ください。