筆跡鑑定

いざとなったら筆跡鑑定

遺言書には何種類かありますが、公正証書にせずに自筆証書遺言をする(自筆遺言証書を作成する)人もおられます。この遺言書の内容に疑義や不満のある相続人が、本当に本人が作成した遺言書かどうか確かめたいということがあります。筆跡鑑定というものがあることはほとんどの人が知っています。どれくらいの信頼性があるのでしょうか。

  • もともと相続人たちが仲が悪かったりすると、親が残したとされる自筆証書遺言は本物なのか、ということが問題になります。実際に、問題の遺言書を見ると、素人が見ても、これは本人のものではないでしょう、と言いたくなるものがあります。
  • そのために家庭裁判所にあらかじめ「検認申立て」手続をして、「遺言書があった」という証明をしてもらいます。ただし、検認のときに筆跡鑑定をすることもありませんし、内容が法的に妥当かなどについて検討されることもありません。
  • 世の中には、インチキ文書を作る人がいます。というより、かなり大勢います。本当に本人が書いたものかを鑑定したくなることがあります。「遺言書について、筆跡鑑定をしたいのですが」というご相談は実際にあります。
  • しかし、筆跡鑑定は難しいのです。急いで書いたときと、丁寧に書いたときでは文字がかなり違って見えます。年をとって、手や指に力が入らなくなってから書いた文字と10年前の文字を比べて、本当にその人の自筆なのかという判断は極めて難しいといえます。
  • 自筆証書遺言は、間違いなく本人が自分で書いたことを証するために自筆で書き、印鑑を押すわけですが、これだけでは実際には問題が起きがちです。
  • たとえば遺言書作成時に押印するとき、法律上は「印鑑は、実印でも認印でもよい」ことになっています。しかし、専門家の元で作成すると、実印を押すよう勧められるでしょう。実印を押して、印鑑登録証明書と遺言書をセットで保存することで、その遺言書の信憑性は高まります。もっともそれでも問題は生じ得ます。

現実にはそのくらい遺言書も文書も難しいのです。明らかに真正に作成されたものではないと、誰もが確信していても、そう主張する人が証明しなければなりませんから、これは大変なことです。

「いざとなったら筆跡鑑定がある。」とあまり頼りにしないほうがよさそうです。


遺言書 筆跡 川崎

東京高裁での判例

平成12年、筆跡鑑定についての東京高裁での判例を抜粋してみます。
『筆跡の鑑定は、科学的な検証を経ていないというその性質上、その証明力に限界があり、・・・(略)・・・筆跡鑑定には、他の証拠に優越するような証拠価値が一般的にあるのではない・・・(略)・・・』と述べられています。ということは補助的な証明手段なのでしょう。

署名と押印

印影(印章)については【ハンコのことなど】をご参照いただきたいのですが、署名が真正かどうかいうことと、印影についての問題もあります。

一般的に、日本では実印が重要とされています。署名と実印が同時にあり、それが重なっている場合、署名をしたのが先か、実印を押したのが先かも真偽の参考にはなるかもしれません。

普通は、署名をしてから印を押します。つまり、署名の上に印がある方が自然でしょう。それを鑑別することも可能なようです。

実印は署名と重ねるのか

署名したときに、印を文字に重ねて押すのか、それとも、署名に重ねないで押印した方がよいのか迷ったことはありませんか。

真正な署名押印であれば、おそらく署名が先で、押印が後であると思われますから、押印は文字に重なるようにするのが好ましいという説もあります。しかし、印影がはっきりわかるように、署名と印を重ねないことも多いようです。公正証書遺言作成には、証人が2名必要ですが、証人のハンコ(印影)は重ならないようにずらして押すと思います。

実印・印鑑等については【ハンコのことなど】もご参照ください。

ついでにDNA鑑定

上に筆跡鑑定の話をしましたが、鑑定というとDNA鑑定もよく知られています。彩行政書士事務所で、DNA鑑定が関係するとすれば、ほとんど「親子関係」があるかないかの証明のためです。

DNA鑑定というのは、「確率が高い」ということがわかるだけで、絶対的なものではないそうです。血液型鑑定よりも情報量がはるかに多いけれども、指紋の検査ほどの信頼性はないようです。
しかし、現在ではかなりの信頼性があると思いますが、検査の仕方にもいろいろあり、信頼出来る検査業者かどうかもご確認ください。

不倫の慰謝料請求をするとかされているという場合、あるいは離婚と養育費の問題の場合に、DNA鑑定を依頼することがあります。DNA鑑定には、現在10万円から30万円くらいかかるようです。

DNA鑑定は比較的簡易で信頼性も高いと思いますが、筆跡鑑定は高価であるわりに信頼性が低いかもしれません。筆跡鑑定を依頼することは現実的ではなさそうですが、一見して本人が書いたのではないだろうと思われるような「自筆の遺言書」もあります。

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