相続と遺言
相続は、亡くなった方の地位を受け継ぐもので、その地位の大部分は「財産」です。その際、遺言書があれば考慮されます。この遺言書は亡くなる前に本人が残すものです。
遺言書を残しても残さなくてもよいのですが、亡くなった方の財産等をどのように分けるかは、「亡くなる前に本人が決めておく」というのが戦後の我が国の方針だという説があります。
しかし現実には、どうしても「家督相続」の感覚が根強く残り、長男に任せれば、生前に遺言書を残しておく必要はないと感じている人も多いことと思います。長男のお嫁さんとどう付き合うかも問題ですし、そもそもお子さんのいない方も多いのです。
高齢化社会とも関連が
時代は「個人の尊厳」、「男女平等」や「老人介護」の問題と絡んで変化しています。親御さんの死亡を期に残された人たちが仲違いすることのないよう手当をしておく気運も高まってきました。
遺言書を作るのは簡単なことではありません。財産管理、法的問題、人間関係・・・それらを見渡したうえで作成しなければ、遺言書を作る意味がほとんど失われてしまいます。
ただ自分の思ったことを書くのならいつでも簡単にできそうですが、一歩まちがうと、相続が始まる前から不和と争いが起きることがあります。「争族」と揶揄されます。
遺言書の内容が推定相続人(現時点で相続が開始したら相続人となるであろう人)に知れて、相続開始前から親子、兄弟姉妹の間で不和になることもあります。自分亡き後だけでなく、自分の老後が幸せになれるような遺言書を作成したいものです。
誰でも年をとると程度の差はあっても判断力等が衰えます。衰えてからでは遅いのです。身近な人の意見が耳障りだったり、縁の遠い人の言うことが耳に優しく聞こえるかもしれません。是非、自分の判断力に自信のあるうちに作成してみてください。
裁判所をあてにしない
問題が大きくなったら裁判所だ、と考えている人が多いのですが、そんなことはありません。裁判所の力を借りて、みんな幸せになったという例を私はほとんど知りませんし、そもそも訴状を出す手続きにまで進めないこともよくあります。
遺言書は相続人が不仲になったり、裁判所の力を借りるようなことのないように、自分でご判断の上、適切な内容で作成しなければかえって害になるのです。むしろ我慢が必要かもしれません。
無効になることも
遺言書は内容や書き方にルールがあって、最悪の場合、せっかく書いても無効ということがあります。無闇に、深い考えもなく遺言書を書くことを防止するためだと私は考えております。作成に当たってはご相談ください。
遺言書の種類にはいかのようなものがあります。
- 専門家に依頼すると公正証書遺言を勧められると思います。本人の意思確認や内容、保管にいたるまでもっとも安心でしょう。
- 自筆証書遺言は、思い立ったらすぐに・ひとりで・無料で作成できるのが魅力です。無効になる可能性や偽造等の疑いもあり、あまりお勧めはしないのですが、自分がこの遺言書を書いた理由などを好きなだけ書くことができます。使いようによっては非常に魅力的な方法だと思います。書き方だけを行政書士が支援することもできます。
- 自分だけでじっくり考えて作成し、確かに本人が作成したと公証人が認めるのが秘密証書遺言です。自分で保管しておくので、相続人が発見してくれるように保管しましょう。
遺留分
遺留分を侵害している遺言書も無効ではありませんが、後々、相続人の間で紛争が起こるような遺言書は書かない方がよいでしょう。(しかし、「書いてはいけない」わけではありません。)ひとりの子に全部あげる、身内ではなく他の人に全部あげる、というのは問題が起きそうです。遺留分については「遺産分割協議書」の欄をご参照ください。
内容やご希望をうかがって、適切な遺言書となるようお手伝いします。公証人、税理士、司法書士、弁護士と連携して業務を進めることもありますので、まずはご相談ください。
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