離婚したら遺言書のことも考えておきましょうというと意外な感じがすると思います。離婚と遺言とは直接関係ありませんが、たとえばあなたと離婚した相手との間に子供がいて、再婚相手との間にも子がいる場合、将来、相続が開始したとき(つまり、あなたが死亡したとき)、前婚の子(前夫の子・前妻の子・先妻の子など)も後婚の子(再婚後にできた子)も同じ権利をもつ相続人です。
どちらかの子と疎遠だったりということがないでしょうか。法定相続分は同じなのですが、現実にはどうしたらよいでしょうか。
異母兄弟・異父兄弟
一例を紹介します。
Aさんは甲さんと婚姻中にBという子ができた。その後、Aさんは離婚し、乙さんと再婚してCという子がいる。
乙===Aーーー甲
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C B
Aさんが死亡した場合、BもCもまったく同じ権利の相続人です。
しかし、このような例では、A乙Cという人たちが「家族」として暮らし、Bとは疎遠のことがあります。Aさんが死亡した時、BはAの葬儀のことも知らないことも多いです。
また逆に、AとBの面会交流の機会が多いなど、AとBが非常に親密な例もあります。
それは、まさにケースバイケースです。
離婚と遺産分割
法定相続分がありますが、それは目安であって、当事者間の遺産分割協議で決めてよいのです。普通、お金はなくて困ることはあっても、あって困ることはあまりありません。たくさんあるために、人生が狂う(?)人はまれにしかいません。
AさんがBとCの遺産相続割合について、遺言書を遺しておいてくれれば、当人も、そして、遺産分割協議書を依頼された行政書士も相続手続きがスムーズでしょう。
遺言書がない場合、まず何からどうしていいかわかりません。
離婚と相続分
亡くなった人の財産を一定の人が譲り受けることのできる制度になっています。
家族などの身近な人が、その人の死亡の前後で急に生活が変わらないように
「生活の保護」
という面と、相続人は、昔からの習慣で、たとえば親の財産を相続できるものだという
「期待」
に応えるために相続の制度があるのではないでしょうか。
上の例ですと、BとCが、Aさんが亡くなって、どの程度困るか、どれほど期待していたかも、遺産分割のポイントでしょう。
亡くなった人と血縁も薄く、何の期待もしていなかったのに、急に相続人だと知らされて、大きな相続財産を得る人のことを「笑う相続人」といいます。あまり好ましいことではないでしょう。
遺言書の勧め
人はいつ亡くなるかわかりません。老衰や病気ならまだ予測ができますが、ある日突然、事故に遭うことも十分考えられます。遺言書は遺書とは違って、家族や子孫への「指示書」といえます。あとで指示をすればよいと思っていたら、結果的に手遅れになってしまったという例は多いです。身体や精神の状態によっては遺言書を作成することができないのです。
たとえば、相続人が遺産分割協議や相続手続きのために戸籍を調べたら、知らない人が相続人だった、初対面だから「協議」といわれても、何から話してよいのか・・・、ということのないように、相続のときの準備をしておいてあげてください。
また、私はしつこくあちこちに記載しているのですが、遺言の付言事項としてでもよいし、別に手紙でもいいし、ビデオでもよいので、そのように相続させる理由もはっきりさせるべきだと思います。そうすると亡くなった人の気持ちを尊重しようという気持ちになるのではないでしょうか。
離婚と遺留分
遺言書で相続人に均分に分けるとは限りません。理由はさまざまでしょうが、たくさんもらう子と、少ししかもらわない子がいたりします。もっとも極端なのは、特定の相続人には何もあげないと遺言書に書かれている場合です。何もあげないといわれた相続人が、それで納得するなら問題ありません。
遺言者が相続について不公平な指定をした場合、法定相続人の期待や生活保障を考慮して、その法定相続人が欲しいと主張する以上は、最低限保障しなければならない分が法定されています。それを遺留分といいます。遺留分の権利を主張することを「遺留分侵害額請求権の行使」といいます。これは内容証明郵便で行なうのが一般的です。
遺留分への配慮
極端に不公平で納得できない遺言書を作成すると、相続人たちの間で遺留分侵害額請求という問題が生じる可能性があります。遺留分侵害額請求をするのは内容証明郵便で通知するだけです。必ずしも裁判の必要はありませんが、紛糾すれば裁判となるでしょう。いずれにしても余計な波風をたてますので、遺言書を書く場合は、法定相続人を調査し、誰には何割あげて、さらに、そうする理由も付記しておくとよいでしょう。
特に、離婚をした場合、相続のことまで考えつかないかもしれませんので、上記のことを踏まえて、家族、子孫が幸せになれるよう、用意をしておくようお勧めします。
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