気が変わらないうちに

朝早くに電話をいただいて、

  • 「今、協議が終わって結論が出たから、気が変わらないうちに書類に署名押印させたい。」

とうような依頼を受けることがあります。
徹夜で協議をしていたのでしょう。

示談書の作成

冷静に考えてから示談書等の作成をするようにアドバイスしていますが、このような場合ですと、その後まもなく相手方から、

  • 「やっぱり、あの協議内容では納得できない。」

と言われることがよくあります。
先に結論を言いますと、よく考えないうちに署名も押印もしないでください。

長い話し合いの結果、どちらか一方に有利な示談・合意内容が決まって、気が変わらないうちに早く署名押印させたという場合、後日、あるいは署名押印する段階で、

  • 「あの時は本心ではなかった。」
  • 「勘違いだった。」
  • 「協議に疲れて、不本意ながら承諾した。」

というようなことになるかもしれません。そうすると、事案によりますが、本格的訴訟で大変苦労することになりかねません。

ただ、自分で署名押印した示談書・念書・合意書等を否定するのは結構大変なことですから、注意深く署名押印しましょう。

わざわざ言われるまでもなく当然のことだと思われるかもしれませんが、自分が当事者ですと客観的な判断ができなかったり慌てたりしてしまって、こういう失敗は意外と多いものです。

警察署で

街中で、たまたますれ違った人とトラブルになり、一方はかなり興奮して大声を出し、今にも暴力を振るいそうになって、周囲に人だかりができました。いつの間にか誰かが警察に通報してくれたらしく、警察官が来てくれて、交番で話し合いになりました。

しかし、自分が被害者だと主張する人の怒りが収まらないので、警察官が双方の話を聞くうちに、だいたいの事実関係がわかってきました。

お互いに譲歩できる点、譲れない範囲などを聞いてまとめていったところ、一応「加害者」とされている人がかなり譲歩したので、何とか結論が見えてきたように思いました。

警察官からコピー用紙(ただの白紙)をもらって、「この一件を、次のように解決する。」という約束を書いたので、結果的に示談書合意書ができました。

加害者とされた人は、後になってもう一度考えてみると、やはり自分が実際以上に悪者にされ、不当な弁償をさせられる書面になっていると思いました。

そこで、その書面を持って相談に来られました。

確かに、不公平な示談書合意書だと私も思いましたが、警察署で警察官の前で話し合って、その場で双方が署名押印して作成した書面なので、これを今から変更するのは大変だろうと思いました。(ここで警察官は、どちらの味方もしなかったようなので、警察官に問題はないでしょう。)

内容に納得できないから、協議し直そうという申し出は可能ですが、再協議はしたくないと言われれば、その書面の有効性を争って訴訟をしてみるしかないかもしれません。訴訟の費用や労力を考えると、お勧めはできませんでした。その旨、お話をしてお帰りいただきましたが、やはり最初に作成した書面どおりの結末になりました。

その場で事実関係を証する事実証明書を作成するだけならよいと思いますが、示談書合意書まで作成するのはよくなかったでしょう。通常はある程度、考えるための時間をおいてください。

 

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