期限の利益喪失

約束どおりに支払われなかったとき

慰謝料の支払い・受け取りは、なるべく早い時期に現金で一括払いにするのがよいですが、「今は払えないが、もう少ししたら一括で支払う」とか、「一括は無理なので、年に数回とか、毎月の分割払いにしたい」ということになると手続きがやや複雑になります。

特に長期の分割払いは手続きが複雑化するだけでなく、当事者双方にとって精神的にも負担が大きくなると思います。

どういうわけで慰謝料を支払うのか、慰謝料を支払うとどのように解決するのか、もし支払いが滞れば強制執行できるのかなどをきちんと決めましょう。

期限の利益

期限の利益についてですが、もし期限の利益がないと100万円借りたら、翌月に100万円全額を返済するようなことになってしまいます。

100万円借りて、翌月に10万円を返済し、その次の月にまた10万円返済・・・というような分割払いですと、100万円借りても、翌月はまだ90万円は返済する必要がありません。その翌月に10万円は支払いますが、まだ80万円は払わなくて済みます。

このように時間の猶予があるのが期限の利益です。分割払いということは、期限の利益があるということです。

分割払いなら公正証書?

お金を貸すなら、契約書を公正証書にしておくとよいといわれます。分割払いが滞った場合には、強制執行が可能なようにしておくことができるからです。このことはかなり便利なのですが、それだけでなく期限の利益喪失の規定も付けておくとよいでしょう。

10か月の分割払いだったのに、3か月目から返済が滞ると、ここまでの未払金について強制執行はできますが、それ以降の分はまだ請求できません。4か月目、5か月目の返済が滞ると、またその都度強制執行をしなければならないでしょう。そういう手間を省くために、返済が遅れたら期限の利益を喪失して、残金全額を一括払いにしなければならないというような契約内容にしておくのが一般的です。

「分割払いなら公正証書」ということはよくいわれますが、2回の分割払いとか、3回の分割払いの場合にも公正証書で強制執行可能なようにしておくのが現実的かどうか考えてみてください。

お金を貸すのはリスクが

分割払いでお金を貸したら、さっそく支払いが滞ったとします。

「もう期限が過ぎているのだから、すぐに支払ってください。」

「今、お金がありません。」

「では、いつ支払うのですか?」

「今からちょうど1年後に、全額、一括で支払います。」

「間違いなく払えるのですか?」

「はい、間違いありません。1年後に全額支払うという念書を差し入れます。」

「わかりました。」

「では、1年後まで、二度と請求しないでください。」

という会話があったとすると、おそらく貸した人が損をするだけなのではないかという感じがしますが、どうでしょうか。

 

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