不倫の慰謝料の算定–期間

 ☆ 令和2年4月1日から改正民法が施行されていますのでご注意ください。

 

何か起きたときに、自分の気に入らないところだけに注目するのではなく、総合的に、全体を見なければなりません。要するに、ある程度は客観的にみなければ問題は解決しないでしょう。

不倫、不倫の慰謝料も同様で、いきなり結論は出てきません。いろいろ考慮する点はありますが、ここでは不倫の慰謝料の算定要素を概観してから「期間」について書きたいと思います。

不倫の慰謝料の算定

不倫の慰謝料の算定要素としては以下のようなものが考えられるとされています。

  • 被害者がうつ病になって通院している
  • 不眠症になった。
  • 遊びではなく、結婚するつもりでいた
  • お互いに遊びであって、結婚する気はない
  • 反省している様子がない
  • 積極性の有無
  • 相手の収入や社会的地位
  • 年齢
  • 発覚時には、交際をやめていた
  • 収入の多寡
  • 不倫での交際費をどちらが負担したか
  • 妻(夫)と仲が悪いと言っていた
  • 不倫していないと嘘をついていた

以上のようなことを細かく算定してもかまいませんが、法律面からするとあまり影響しないようです。

  • 婚姻の期間
  • 不倫の期間
  • 不貞行為の回数
  • 交際の頻度
  • 積極性の程度

などを考慮して綿密なシミュレーションを試みる人もいるようです。

これらの経緯等も考慮すべきだろうとは思いますが、正確なことはわかりません。上記の「要素」を本人すら思い出せないこともよくあります。算定が難しいから「相場」が気になるのでしょう。

このような場合、江戸時代には「大金(たいきん)を払わせよう。」ということだったそうです。大金とは、簡単にいうと「大判1枚」です。大判とは「黄金」ともいい、日常の買い物などに使うことはなく、儀式的に「はいっ。大金!」とやりとりする感覚でしょうか。この大判(たとえば、享保10年~天保8年)の「享保大判金」)の価値が7両2分だったので、不倫の慰謝料の相場は7両2分となったという説があります。実際にどのくらいの価値かは、【不倫の慰謝料の請求額300万円がゼロ円に】や【江戸時代の不倫の慰謝料】をご参照ください。

不倫の期間

不倫の慰謝料の算定要素のうちの「期間」も明確にならないことがよくあります。本人もわかっていないことがよくあります。数か月前ならまだわかるかもしれませんが、数十年となると、記憶と事実に数年程度の誤差が生じても不思議ではありません。

民法724条に、「不法行為による損害賠償の請求権は、(略)3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為のときから20年を経過したときも、同様とする。」とあります。(2017年現在。)

3年で時効になるので、時効の援用をすれば支払義務がなくなります。そして、20年経過すると何もしなくても、事実上、義務が消滅します。この20年のことを除斥期間といいます。

除斥期間とは、法律関係を速やかに確定させるため、一定期間の経過によって権利を消滅させる制度なので、そのような請求権がなかったのと同じような結果となります。(細かな議論はありますが、このサイトは法律を勉強する場ではなく、身の回りの困りごとをどう予防し、解決していこうかというものですから、ありからず。)

不倫の発覚後も交際が続いていたとか、交際をやめるようにとの内容証明を受け取った後も続いている、訴訟に入ってもなお続くということになると、慰謝料が増額される可能性が高くなるようです。このように単に期間だけが問題なのではなく、どういう状況でその期間が経過したかもかなり重要です。

不倫交際が長いケースですと数十年ということもあります。交際が長期であれば慰謝料額も上がるはずなのですが、たとえば、交際が30年続いた後の慰謝料請求では、上述の除斥期間があるので、直近の10年分しか請求できないケースがあります。

ただ、これは「訴訟なら」ということで、協議によって30年分の慰謝料を請求する・支払うのでしたら問題はありません。

2020年の民法改正

2020年4月1日から施行される民法改正のため、上の除斥期間の件は当てはまらなくなると思いますが、それまでの事案については改正前と同じですから気をつけてください。

不倫の慰謝料を支払いたい

不倫の慰謝料を請求されたら、まず不倫の否定をするとか、何が何でも支払いたくないとか、少しでも減額してほしいという返事をされると思っている人がいますが、そうともかぎりません。

不倫はないが、疑われても仕方がないほど親しかったとか、一度だけだったが確かに不倫(不貞行為)があったので、言い訳も慰謝料の減額請求もせずに支払いたいというような人もいます。

常識的に考えて、その請求は高額すぎるだろうとお知らせしても、自分が悪かったから妻の気持ちを考えて、妻の言い値で支払うという人もいます。(もちろん、真実を曲げてでも支払いたくないという人もいますので、念のため。)

現実にそういう人もおられますので、相手の性格や考え方も考慮せずに、いきなり高圧的な請求をすると、必要以上の波風を立てることになってしまうかもしれません。はじめに書きましたように、客観的な視点が大切です。とはいえ、当事者(被害者本人)に冷静になれというのも難しいことですので、専門家に相談でなくても、とにかく事情を話してみてはいかがでしょうか。

協議がまとまったら、示談書合意書等をきちんと作成し、お金のやり取りをした理由と今後の約束をきちんとしておきましょう。

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