誤解と示談

現在は、平成29年(2017年)6月です。最近、痴漢行為の疑いのある人が線路に降りて姿をくらまそうとする事件が多発しています。
報道の情報から判断するかぎり、痴漢行為はしていなかったと思われる人もいますが、逃走途中に事故等に遭って死亡する例さえあります。これは社会現象としてはただごとではないと思います。

痴漢冤罪

実際に痴漢行為をしていないのに疑われたり、「私人による現行犯逮捕」をされると、ほぼ無実を立証する方法がないようです。
昔は逃げればまだ何とかなったらしいのですが、現在は防犯カメラがたくさんあるので、結局、逃げとおすことは難しいでしょう。

深刻な問題だと思うのは、女性と男性が、「痴漢だ、いや痴漢ではない。」と言い争っているときに、たまたまそこに居合わせただけで、痴漢行為の状況を見ていない人が、「とにかく降りよう。駅員室へ行って話をすればいい。」と言って、その男性を(逃げられないように)両脇から抱えて連れ出すことでしょう。

紐がヘビに見える

痴漢行為をしていないのに疑われることが頻繁にあるようです。
私も、その場を初めからすべて見ていたことがあります。女性の後ろに、たまたま男性が来ることになってしまい、カバンが女性の尻に当たって、痴漢を疑われる様子が私のいた位置からよく見えたのでした。

男性が女性の後ろに立つことになった経緯からすべてみていました。どうしてカバンが女性に当たったのか、女性が痴漢行為を受けたと思った原因まですべて見えました。
事件になれば、私がイチからすべて証言する覚悟でしたが、幸い、両者の睨み合いはあったものの、それ以上発展しなかったので、私も何もしませんでした。

別の例です。
私が学生の頃、隣の人にぶつかるかぶつからないかという程度の混雑の電車の中で、右手で吊革につかまっていて、左手は降ろしていました。電車が揺れた瞬間に、立っている人たちは一斉に揺れて、私の降ろしていた左手の甲が、隣の中年男性の手の甲に当たりました。しょっちゅう当たる程度の当たり方だったので、わざわざ謝ることもしませんでした。が、その中年男性は、非常に驚いたように私の顔をマジマジと覗き込みました。

私がその男性に特別な関心があって、故意に触ったと思ったようです。手を握ったわけではなく、私の手の甲が、相手の手の甲に一瞬当たっただけなのですが、相手の心理によって受け取り方というのがあることがよくわかりました。これは男性でも女性でも同じでしょう。

「夜、洞窟で焚き火をして野宿をしていたら、洞窟の入り口にヘビがいるのがみえた。刺激しないようにそっとしておいた。翌朝、明るいところでよく見たらヘビではなく、太めの紐が落ちていただけだった。」という話を思い出します。

財布を閉じると犯罪か

電車内ではなくエスカレーターに乗っているときです。電車の回数券を二つ折り財布から取り出したところ、前に立っていた女性が急に私の方に向き直り、エスカレーターの2段上から私を睨んでいます。後ろを振り向いたのではなく、180度後ろを向いて「仁王立ち」しているのです。

二つ折り財布から回数券を取り出して、二つ折り財布を勢いよく閉じたたために、「パタン」という音がしました。これをその女性は「写メった音」だと思ったのでしょう。その女性はスカートをはいていました。

そもそもストレス社会

首都圏の通勤時間帯は猛烈な混みようの場所があります。もともと礼儀などに細かい心遣いをする一方で、日常的にストレスが溜まりがちで、神経質になっている人が多いと思います。

電車の中でも定食屋さんの店内でも、スマホで電話をされるとイライラする、近所に育児所や幼稚園ができると、子供たちの声が騒音となって耐えられず、近所の学校で運動会があると、歓声や音楽などがうるさいと苦情を寄せるくらい団体生活・集団生活には、ほとほとみんな疲れているのです。

警察官にカマをかけられる

夜遅く住宅街を歩いていると、近寄ってきた警察官から「メガネを掛けて、髪は短く、青いシャツを着て、ベージュのズボン、白いスニーカーを履いた人が、窓から女性の部屋を覗いていたという連絡が入っているので、ちょっと話を聞きたい。」と言って、私の服装そのままのことを言われることがあります。

これは警察官が夜間の住宅街などで人を見かけたとき、いわゆる「カマをかけて」念のため言うもので、犯罪捜査・防犯の基本らしいです。(これは何年も前の話ですから、今は違うかもしれません。)

買った品物が盗品だったら逮捕される

私は、町内会のバザーで買った自転車を駅のそばに置いて、電車で出かけました。夕方帰ってきて、自転車の鍵を開けたところで、近くの建物の蔭に隠れていた警察官がふたり飛び出してきて、あなたの自転車か? 盗難届の出ている自転車なので交番まできてほしい、といいます。

交番で、バザーで買った自転車であるというと、「これは盗難届が出ている。あんたが素直に返せばいいが、返さなければ窃盗物横領罪で、今ここで調書を作成して起訴するが、それでいいか。」と言われました。『窃盗物横領罪』と言われたのは間違いありません。

バザーで買ったのだから、主催者もわかるし、領収書はないが出品物の帳簿があるかもしれない。その調査をしてからにしてはどうかといいましたが、警察官はさらに、

  • 「盗まれたものを、持ち主に返すのが警察の仕事。どうしても返さないなら、ここで逮捕するがいいか。」

というので、私はそれでよいと答えました。
それから数分間、沈黙が続きました。調書を作成しないのか尋ねましたが、警察官は何も言わず何もしないのです。何分もそのまま時間が経過しました。

その間に、私の父が交番に呼ばれ、父が「バザーで安く買った自転車くらいどうでもいい。こいつらにくれてやって帰ろう。」というので、私も父の言うとおり、「警察にくれてやる。」といって帰りました。

同棲中の生活費を精算しようとすると逮捕される?

このサイトの他のページでも書きましたが、同棲していた女性と別れたけれども、同棲中、その女性が払うべき費用を男性が負担していたから、お金の精算をしようと協議を申し入れていた男性が、警察に呼ばれました。

警察に行くと、まず警察官の第一声が「お前、何てことしちゃったんだっ!」だったそうです。
別れた同棲相手の女性が精算の協議になかなか応じないので、その男性はメール・電話・職場に会いに行くなどしたそうです。
そうしたら、その女性が警察に「自分はストーカー被害に遭っている。」と届け出たのでした。

もちろん警察で事情は話しましたが、その男性はあまり話の上手な人ではありませんでした。とにかく、言うだけのことは言ったそうですが、そもそも警察官が話を聞いてくれないとのことでした。

さらに、「その女性がおまえの家に置いていった日用品は3日以内に宅配便で彼女に送れ。宅配便料金はお前が支払え。もう二度と彼女に近寄らないという誓約書をここで書きなさい。書かなければストーカー行為で今、逮捕する。」と言われたとのことです。話を聞いてもらえないだけでなく、とにかく言葉遣いが荒く、怒鳴るのだそうです。

私がその男性に相談を受けたのは、「その女性に80万円程度の貸しがあるが、もう彼女には近づかないという誓約書を警察官が作成し、それに署名してしまった。自分が直接に彼女に話をするのではなく、行政書士から内容証明郵便を出して彼女に精算の要求ができないだろうか。」というものでした。

私はいくつかの提案をしましたし、必要なら弁護士を紹介すると言いましたが、結局、その男性は公務員だったこともあり、泣き寝入りしたほうがメリットが大きいと判断して、すべてをあきらめました。

私は警察が好きです

話は長くなりましたが、真実がわからないことはよくあり、正しい者が正しいと判断されないことも多くあります。

また、警察官にとても親切・適切に対応してもらったという例もたくさんあるわけですが、ここでは話の流れからして、良くない例ばかりになってしまいました。警察では常におかしなことが起こっているというのではありませんから、誤解のないようお願いします。私は警察署も警察官も個人的には好きですからね。

痴漢冤罪はどうしたらよいか

初めの痴漢冤罪の話に戻りますが、痴漢冤罪に遭ったとき、「こうすればよいという定石はないが、徹底的に戦うしかない。勝つか負けるかはわからない。」という弁護士さんもいるし、「たとえ無実の罪であっても、痴漢行為をしたと謝罪し、30万円とか50万円を支払って示談にしたほうがよい。」という弁護士さんもいるようです。

現在のところ誰に聞いても痴漢冤罪については決定的な対策はないようですが、もし冤罪であれば、私としては以下のようにするとよいのではないかと考えています。

  • 逃げない
  • 痴漢だ・痴漢ではないと言い争いをしない
  • 自分のいた場所がわかるように写真を撮る
  • 周囲の人の連絡先をできるだけ集める(名刺等)
  • 相手(および駅員等)に自分の身分証明を提示する
  • 駅で降りて、警察をよぶ
  • 駅のベンチ等に座るなどして、移動しない
  • 手を洗ったり、こすったりしないで、手の微細物を検査してもらう
  • 周囲の人に、自分を触らせない(逃げていないのだから、取り押さえるなどの行為は不当であると告げる。)
  • 弁護士に連絡して、すぐに来てもらう
  • 相手の身分証明の提示を求める(これは弁護士さんの判断)

たとえば、胸などを触っているときに、その手を女性本人に掴まれたのなら、これはもう現行犯なのですから、それでいいのです。今、問題にしているのは「冤罪」についてなのですから、触っている手を掴まれる可能性は低いでしょう。

実際には、ぶつかったとか、周囲から押されて意思に反して腕を持って行かれたなどの場合に冤罪の問題になります。
手提げカバンを持っていて、電車内が混雑してカバンが自分とは別の方向に引っ張られてしまったという場合、カバンから手を離すわけにはいきませんので、手を伸ばした苦しい態勢になるでしょう。こういうときにも痴漢だと思われるかもしれません。

触った・触っていないと言っているときに、周囲の人が「とにかく降りなさい。」といって、腕を掴んだりして拘束し、下車を強要することは違法行為ではないでしょうか。ですから、自主的に降りて、その際、周囲の人に「自分を取り押さえたりしないように。」と注意を喚起しましょう。

周囲の人は、自分で犯行を確認していないのにその男性を現行犯逮捕することはできません。
ただ、女性から「この人が犯人です。捕まえてください。」などと言われていると、現行犯逮捕される可能性があるので、とにかく逃げないことです。そして、逃げていないのだから私を取り押さえるな、と言とよいそうです。

他に、周囲からみて明らかに痴漢をしたことがわかるような条件がそろえば現行犯とされるでしょうが、痴漢冤罪であればそのようなことはないと思います。

あとは、上に書いたようなことを淡々と進めるのが最良の策だと考えます。まだ実際に活用したことはありませんので、空理空論かもしれません。もっと良い策があったら教えてください。
とにかく、「成り行き」と「運次第」という要素が多そうですから、いつ人生が変わるかわかりませんね。

無実でも自分が犯人だと言うメリットはあるのか

万引きの場合は、絶対に示談にしない店と、ぜひとも示談にしたいという店があります。事情によります。

示談になればよいのですが、
「商品が欲しかったわけではない。事情があって意識が朦朧としている中で、店の品物を無作為にとって、店外に持ち出したことは間違いない。店に迷惑をかけたことは確かなので、それについては謝罪し、賠償もする。」
という件では示談が成立せず、検察庁に送られました。

検察庁で「私は、その品々が欲しくなり、悪いことだとは知りながら、万引きをしました。」という書面に署名し、略式命令で罰金を支払って、法廷に出ることなく終了したとのことです。

万引きという窃盗事件は、悪いと知りながらやらなければ罪にならないはずですが、悪いと知っていたかどうかを裁判で証明するのは困難です。悪いこととはわかっていたが、その品物がほしかったので盗んだ、と本心でないことを供述したほうがメリットが大きいと考えたのでした。

正義よりも示談

多くの人は真実にこだわりますし、正義が勝ってほしい(正義は勝つはず。悪いことをしていないのに謝ったり、逃げたりする必要はない)と思っているでしょう。

しかし、あえて自分は悪いことをしたと嘘を言って、「被害を小さくする」ことが可能なことがあります。上に紹介した痴漢冤罪の場合の示談は、こういうことです。

(ただし、真実に関わりなく、自分がやったと言えば、罪が軽くなると白状して、その結果、冤罪が確定して、罪が軽くなるどころではなく一生、後悔する例もあるそうです。嘘でも罪を認めるか、それとも真実を訴え続けるかは弁護士さんと相談すべきでしょう。)

「負けるが勝ち」という表現も、こういう事態に陥った人を励ます(納得させる)言葉だと聞いたことがあります。

昔から、日常生活の中であったことなのでしょう。江戸時代、武士が町人にからかわれることがあったそうですが、町人と喧嘩になったり、刃傷沙汰に発展する前に武士は「負けるが勝ち」だったかもしれません。(武士は深い教養を身につけているが、町人などは未熟である。武士が正しく導くべきとされていたので、本気で言い争いをしたり暴力を働くと、後の取り調べでとんでもないことになったそうです。)

示談のときは、「負けるが勝ち」「損して得とれ」を考えに入れておくと、うまく生きてゆくことができるかもしれません。

他のページにも書きましたが、法律を適用すると、法によって助けられる人と、法によって苦しめられる人がいます。法律で勝負するとなると、法律知識、駆け引きのテクニック、証拠を出さないとか探すとか、そういうことが重要になりますが、これは弁護士さんがやってくれます。

法律で勝負を決しようという前に、示談という「大人の解決」も検討してみてください。「負けるが勝ち」とまではいわず、「引き分け」に持ち込めば、お互いに負けではありません。運の良し悪しもあると思いますが、示談が成立する可能性は常にあると思います。

もちろん、法律上は問題にはならないとか、問題にするほどのことはないけれども、何らかの諍い(いさかい)が生じることはあるでしょう。そういうときは、きちんと協議して示談書を作成し、後日、問題を蒸し返すことのないように解決するように努力してみてください。

こんなときこそ示談書を

実際の例としては、『歩いているときにぶつかり、たまたま悪い要因が重なって、相手のパソコンが壊れた。お互い、感情的になってはいないが、弁償する責任と、弁償の範囲をきちんと約束したい。』というようなことがあります。

パソコンのような品は、新品を買って返せば済むとはかぎりません。データが消失すると、その内容次第では損害がどこまで広がるかわかりません。

「忙しい」「疲れた」「イライラする」という社会で、予想外のことが起こったときに、冷静に謙虚に対応するのは難しいかもしれません。
一方が穏便に解決したくても、相手が自分たちで協議はできないとか、無謀な要求をするようなら示談はできなくなります。

弁護士への依頼のタイミング

行政書士や司法書士と違って、弁護士さんはほとんど何でもできますから、何でも弁護士さんに任せればよいのですが、弁護士さんは一般の人であれば「すでに職場の業務をこなす中心的役割を担っているような年齢」まで修行(勉強)を続けた人です。当然その修行に見合うだけの費用・報酬が必要になります。

当事者の協議によって示談で解決していれば最低限の出費で済んだような事案でも、弁護士が入れば弁護士報酬が加算されますから、プラス・マイナスを総合的に考えてください。

途中から話がこじれて弁護士に依頼すると、後から振り返って、「こんなことなら初めから弁護士さんに依頼しておけばよかった。」ということもあります。が、それは結果論で、後になって「タラレバ」(もし、こうしていたら、もしああやっていれば)と後悔してもはじまりません。

頭痛がするのは風邪なのか脳腫瘍なのか

頭痛が続くようなら、まずは、近所の医院に行くのが一般的だと思いますが、その後、脳腫瘍だとわかって大病院へ行くとすると「近所の医院での診療費」は無駄になります。
しかし、多くの場合、近所の医院で診察してもらい、その結果によって、しかるべき医療機関で精密検査を受けるという段階を踏みます。

まず、内容証明などで自分の主張・要求をしてみましょう。相手にも言い分があれば協議をして話を聞きましょう。協議がまとまれば示談書を作成して後日の安心に努めてください。どうしても協議がまとまらなければ訴訟をすればよいのです。

示談書は早いうちから準備

専門家に示談書の作成依頼をするとき、示談の「結論」を持っていかなければならないと思っている人は大勢おられますが、示談書は「何かが起きたとき」、なるべく早いうちに作成準備をすることをお勧めします。示談書ではなく「事実関係説明書」というようなものを先に準備しておくこともあります。これが内容証明郵便のこともあります。

どういう事実があったのかがお互いに不明確なままでは合意にいたらないでしょう。いつ、どこで、何が起きたのか等を記して、当事者の記憶がはっきりしているうちに事実関係だけでも確定すると、その後の協議をするのに役に立ちます。

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