不動産賃貸借契約

敷金返還請求

川崎市の行政書士である彩行政書士事務所では、契約書全般についてお引き受けしていますが、敷金返還請求の内容証明郵便作成業務もしています。

敷金の返還額に不満があって、もっときちんと返還してもらおうという請求は減ってきていると思います。今後、もっと減るのではないでしょうか。そして、不動産賃貸借契約書の重要性が増していると思います。どんな内容でも、契約書に書いてあって、当事者双方の署名押印があればよいと思っている人がいるからです。

敷金の法的性質が広く知られるようになってきて、敷金返還の問題は少なくなったようです。借り主の責任で修繕等が必要な場合に、敷金の中から修繕費用が差し引かれ、残りの敷金はほとんど全額返還されるのが原則です。

家主も、本来は敷金から差し引けない費用だと知りながら、賃借人が黙って支払うなら受け取ってしまおうというケースがありましたが、こういうことは今後ますます減っていくでしょう。

以前は、敷金の大半を返還せず、賃借人から請求があっても無視し、裁判所からの命令等があれば支払おう、という態度の家主もいました。賃借人が法的措置をとらなければ、そのままもらってしまおうということです。こういう態度でいれば、得することはあっても損をすることはまれだからでしょう。

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家主の対応

以前、家主さんたちはできるだけ敷金返還額を少なくして、自分に有利になる方法はないかと考えていたようです。また、それが当然だとされていた時代が続きました。

まだあるかもしれないのは、賃借人が退去・明渡してから敷金返還額を少なくする工夫をするのではなく、入居の契約時に家主に有利な内容にするように工夫するということです。

どういう契約内容なら家主に有利でしょうか。

  • 敷金には金利が発生しない
  • 敷金の50パーセントは一律に償却する
  • 大修繕であっても賃借人の負担とする
  • 契約満了前に退去しても、賃借人は契約日までの支払い義務がある
  • 契約期間満了前に、退去する場合、その3か月前に通知しなければならない
  • 家賃を1か月分でも滞納したときには賃貸借契約を解除する
  • 居住用であるのに、その他の目的のために使用した場合は契約解除する
  • 賃借人は立退料をいかなる場合も請求しない
  • 賃借人はいかなる場合も造作買取請求しない
  • 賠償額の予定として、賃料額の半年分に相当する額とする
  • 借家は6か月単位として、契約しなおす
  • 家主が更新拒絶する場合は1か月前までに通知する
  • 家主は更新を拒絶する理由を示さない
  • 物価等を考慮して、家主は契約の途中で賃料の増額を請求できる

以上のような契約は、家主(貸主)には有利ですが、当然に無効なものもありますし、公序良俗違反や信義則違反で無効になりそうなものもあります。

「みんな同じように契約しているのだから大丈夫だろう」「自分だけ文句を言って、変な人だと思われたくないから黙っていよう」という態度ですと、退去時に後悔するかもしれません。

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家主(賃貸人)の立場

賃貸借契約書には、よく
「退去時に、壁クロス・畳・襖はすべて交換し、専門業者のする室内クリーニング代金を、敷金から差し引いて賃借人に返還する。」
と書いてあります。

賃借人は毎月賃料を支払ってきたのに、それではあまりに賃借人が気の毒ではないか、ということで敷金返還に対する考え方が変わってきたようです。法律・法規の解釈としても妥当なものにしようとする傾向です。
現在は、敷金返還の考えは大きく変わり、敷金は預り金なのですから、賃借人が支払う事情がない限り、全額返還されるのが原則です。

しかし、それを知らない家主は、

  • 壁クロス・畳・襖はすべて新品に交換し、
  • 専門業者のする室内クリーニング代金をもらってよい

のだと思っている可能性があります。
特に、親から賃貸不動産を相続した人などは、昔、親がそのように賃借人から敷金をもらっていたのを見ていたのですから、家主が敷金返還をするとは思っていないのかもしれません。

そこで、賃借人が敷金返還を請求してくるので、
「家主が損をしている、賃借人が横暴だ。」
と感じるのでしょう。

たとえば鍵の交換

近年は、防犯意識が高まりましたから、入居者が変わったら鍵(錠)を新品にするようになりました。
入居者が使っていた鍵ですから、入居者は紛失に備えてスペアキーを作るかもしれません。スペアキーを作ったら、その旨、家主に報告し、退去時にはそれも一緒に返すというケースもあったようです。
しかしそれでは不安が残りますから、新品に取り替えることになります。実際、以前の入居者とずっと同じ鍵を使っていたために犯罪に至ったケースがあります。

その鍵の交換は、誰が費用負担するのかが問題です。
賃貸住宅で、安全に暮らせるように配慮するのは家主の義務です。
雨漏りする家なら、直してから貸すのと同じ理屈で、もし、雨漏りする家を貸すなら、そのことをきちんと告げて、それなりに安く賃貸しなければならないでしょう。普通は、修理してから貸すはずです。

普通に住んでいたのに、雨漏りがするようになったら、家主が修理するのです。普通に住むことのできる住居を提供するのが家主の義務で、それだけの用意をするので賃貸料(家賃)を受け取ることができるのです。

しかし、賃貸借契約書に、
「退去時に鍵を交換する費用を賃借人が負担する。」
という項目が入っていることがあります。これは、「雨漏りがするなら、賃借人が自分で直す。」というのと似たようなことです。

本来、家主の義務だということは知っているけれども、賃借人が自分で直したい、というならそれもよいでしょうが、多くの賃借人は、それを知らないのです。知らずに、本来の義務以上のことをさせるのはよくないでしょう。

話は逸れますが、
「入居時に新品の鍵を付けたので、その費用は敷金から差し引く。賃借人は退去時に新品に交換して、元のように新品にして返さなければならない。」
という賃貸貸借契約書もあります。おそらく、このやり方ですと、家主は鍵の交換費用1回分を得して(儲かって)しまいます。

話が逸れたので元に戻しますが、不動産業者などはプロですから、こういう事に関する専門知識を持っていますし、慣れています。
ですから、契約書に「退去時に賃借人の費用負担でリフォーム工事をする」と書いてあっても無効の可能性があります。なかには、リフォーム工事をするための相談を、家主と業者がしたので、そのときの通信連絡費まで敷金から差し引くと主張する家主もいますが、これも敷金返還の常識からはずれています。もっとも、ここまで主張する家主は少ないです。

特に悪気がなくても、敷金返還の常識を知らない家主のなかには、「契約書があるのに、そのとおりにならないのでは法治国家ではない」と憤慨する人もいます。大家さんの立場からみると、大家さんばかりが損をしていると感じるのかもしれません。特約事項に同意したという署名欄が「不動文字」になっている場合には、貸主も借主も注意が必要です。

契約が成立するためには、いろいろな要件が揃わなくてはなりません。納得のいかない賃貸借契約書は、よく吟味しましょう。

たいていは契約書に「特約」が付いているでしょう。賃借人に不利な条件でも、入居時の契約書に特約を付けて、賃借人が署名押印しさえすれば、もう契約が成立し、通常以上であっても敷金から差し引いてよいと思っている家主さんもいるかもしれません。

【注:不動文字のページあり】

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