売主には責任がある
売主の責任は、損害賠償請求、契約解除、示談、クーリングオフ、消費者保護問題など、多くの場面で問題になります。内容証明郵便を送付する場合にも、示談書作成の場合にもご注意ください。
売主の担保責任
売買契約をした場合に、買った人は「料金を支払う」ことで義務がなくなるのがほとんどです。
売った人は、もちろん売買の目的物を引き渡して、不動産であれば登記に協力し、所有者移転の証拠書類があるならこれも引き渡さなければなりません。これを財産権移転義務といいます。
また、売主は単に売ったものを渡せばよいのではなく、買った人が、その売買契約締結のときに予期したとおりの権利を取得できなかった場合に、担保責任という責任・義務を負います。
事案によりますが、売主は売ったあとの責任をとりたがらないことがあります。大企業の場合には、対応部署を明らかにしなかったり、その場しのぎの回答をして、いつまでたっても埒が明かないこともあります。そのうちに「時間切れ」になるか、買主があきらめるかもしれません。
担保責任によって、契約を解除されたり、損害賠償請求されることもあります。問題を争いごとにまで発展させることなく、示談・示談書作成によって解決しましょう。内容証明郵便も有効に活用してください。
他人物売買
売買においては、他人の所有物を売ることができます。たとえば、私がAさんの骨董品を買って、それをBさんにもっと高い価格で売ることはメリットがあります。
私があらかじめBさんと、Aさんの骨董品の売買契約ができていれば、私がこの骨董品を取得する契約をしたと同時に、骨董品の所有権はBさんに移ります。
しかし骨董品はAさんのものですから、私が買い取れるかどうか確実ではありません。Bさんがそのことを承知で私と売買契約をしていて、私が買い取れなかった場合は、Aさんは私との売買契約を解除することができます。もともと私が買い取れる保証はなかったのですから、Aさんは私との契約を解除できるだけで、準備が無駄になった等の損害賠償は請求できません。
もっとも、私に帰責事由がある(たとえば、私にミスがあって買い取れなかった)なら、Bさんは私に対しての損害賠償請求が可能です。損顔賠償請求は10年内にした方がよいでしょう。
それに対し、私がBさんにその骨董品がまだ自分のものでないことを知らせていなかったり、Bさんがその骨董品が私のものだと信じていて当然な場合は、私との契約を解除した上、なおBさんに損害があるなら私に損害賠償請求もできます。
しかし、私がその骨董品が私のものだと信じていたのに、実は父のものだったという場合は、Bさんに損害賠償をして契約解除できます。
もし、その持ち主が私の父だとBさんが知っていたなら、私は事情を通知して契約解除できます。このような場合の通知には内容証明郵便がよいでしょう。
一部他人物売買
蔵にある骨董品を全部売る契約をしたけれども、一部は私の父のもので、蔵の中の骨董品を全部は売ることができないということがあるかもしれません。その場合、買主のAさんは、私が売れるものに対してだけ支払えばよい(代金減額請求ができる)のですが、蔵の中の骨董品全部でなければ買わなかったのだという事情があれば契約の解除と損害賠償請求ができます。
買主のBさんが、蔵の中の骨董品の一部は私のものではないと知っていたなら、買主は代金減額請求だけができます。
買主が、蔵の中の骨董品の一部が私のものではないと知らなかったなら、この事実を知ってから1年間はこの権利を行使できます。知っていたなら、契約の時から1年間だけ行使できます。
数量指示売買
蔵の中の壺50個という契約で買ったのに数が不足していたら、代金減額請求ができますし、50個でなければ買わなかったという事情があれば、契約の解除と損害賠償請求ができます。
もっとも、買主が契約の時から壺が50個ないことを知っていたなら、売主に何の責任追及ができませんのでご注意ください。
隠れた瑕疵・不良品
売買でもっとも問題になるのが、この隠れた瑕疵でしょう。
本を買ったときに表紙が破れているとか、中古車を買ったときにエンジンがかからないなどというなら不良品であること・不備(瑕疵)は明らかですが、雨が降ると雨漏りがするなど、すぐにはわからない不良・瑕疵もあります。
この不備(瑕疵)を知らずに買ったけれども、これでは契約をした目的を達することができないときは、契約を解除できます。目的を達成できないほどではない場合は、損害賠償請求ができます。
買主がこの不備を知っていたなら何の責任追及もできないことはもちろんです。
また、競売の品を購入した場合には特別の規定がありますので注意してください。
瑕疵担保責任の注意点
瑕疵担保責任において買主が売主に追求できるのは、解除か損害賠償請求であり、他のきちんとしたものに取り替えるとか、完全に修理することを請求できない場合があります。また値下げ(一部返金)などは認められません。
オークション売買の場合は、たいてい「ノークレーム・ノーリターン」などの表示(特約)があると思います。中古品だから、ある程度のキズ・劣化などは承知で取引してください、だから返品も受け付けません、というような意味ですが、出品者が事業者で、落札者が一般消費者の場合は、この特約は無効になる可能性が高いでしょう。(特定商取引法上の「法定返品権」も問題になりますので、ご注意ください。)
「ノークレーム・ノーリターン」と表示があっても、出品者がキズなどがあることを知っていながら故意に隠していたとなれば、民法572条にあるように、この特約は無効となることになっています。しかし、現実にどうなるかというと難しい点がたくさんあります。
弁護士が法的に争うのとは違って、本人や行政書士が本人の希望を伝えれば、売主は善処してくれる場合が多いと思われます。内容証明郵便での通知も効果があると思います。
オークションの場合、行政書士が相手方と主催者に連絡して、解決した例もあります。もちろん、すべてがきれいに解決するとはかぎりませんが。
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