相続

登記をしましょう

相続のときに、遺産に私道が含まれていることがよくあります。私道であっても条件が調わないと税金を支払います。他人の通る道の税金を個人が負担するのもどうかと思いますが、ありうる話です。(実際、私の親は随分長い間、私道の税金を払っていました。)

条件さえ調えば非課税にしてもらえますから、思い当たる人がおられれば役所で確認してみてください。登記簿上は「宅地」なのに、私道と認められて非課税のこともあります。

私道は、非課税になっても自分で自由に使用できませんし、売りに出しても買い手はつかないでしょう。そういう土地を相続した場合でも、名義変更という手続きを専門家に依頼すると費用がかかります。また名義変更をするのは義務ではありません。相続開始後、放っておいても罰則等はありません。

だから、名義変更の登記をせずに放っておこうと考えるのはもっともなことかもしれません。その私道の所有者名義が何十年も前に亡くなった祖父の名義になっていても困ることはないかもしれません。

困った例

私道の名義変更をしなくても困ることはないかもしれないと書きましたが、困ることもあるのです。たとえば、以下のようなことがあります。

 

父が死亡し、遺産には

  • 居宅
  • その居宅の建っている敷地
  • 隣接する私道

という3つの不動産がありました。

相続人は、甲・乙・丙の3名です。

遺産分割協議で不動産は甲が全部相続することになりました。

居宅とその居宅の建っている敷地については甲が相続するという登記をしました。

 

隣接する私道の登記をすると登記費用がもったいないので、父の名義のままにしておきました。非課税ですし、どうせ売ることもできないのですから、登記費用をかけて名義変更するのはもったいないと考えたからです。

甲は、居宅を取り壊し、集合賃貸住宅を建てて、家賃収入(30年一括サブリース)を得ようと考えました。

もちろん現金一括で建築費用は払えないので、銀行から融資を受けるつもりでした。

 

銀行からは、その隣接する私道も甲の名義にすることが融資の条件だといわれました。

そこで、甲は乙と丙に、私道の登記費用は全部自分が負担するから、現在はまだ父の名義になっている私道を甲の名義にする登記手続きに協力してほしいと申し出ました。

(たとえばの話ですが、30年一括サブリースは建築後10年を過ぎる頃から赤字になって、土地も建物も手放したいという人もいます。売却するといっても、集合賃貸住宅とその敷地(建物が建っている土地)だけでは売却は難しいのです。

 

仮に売却できたとしても、隣接しているのが私道となれば、水道管を通す工事などの際に所有者の許可が必要となります。もし所有者に私道部分の掘削などを拒否されるとさまざまな不便が生じるでしょう。ですから、甲としては私道部分ごと自分の名義にしておく必要があるのです。

 

それを知った乙と丙は、乙と丙が所有していてもまったく無価値なのに、甲にとっては重要なのだと気づきました。それなら無料で甲に渡さず、甲に買い取ってもらおうと考えました。

もともと私道で、自分では自由に使えないし、そこから経済的利益もないと思っていたので、全員が登記もせずに放っておくことにした土地ですが、上のような事情なら、甲はお金を出してでも自分ひとりのものにしたいはずです。

 

結局、この土地を甲は、乙と丙に数百万円出して買い取りました。

父を相続したときには、全員が無価値だと思って、甲が好きなようにすればよいと認めていた土地なのですが、後日、事情が変わってしまいました。甲の立場で考えると、登記手数料を節約したために、結局、数百万円という思いもよらない支出することになりました。

 

この話と同じでなくても、似たような話はあります。

登記に限らず、手続きというのは几帳面にやっておいた方が無難だという例です。「真面目すぎる」「神経質すぎる」などと周囲からいわれても、きちんとしておくことをお勧めします。

法定相続分を越える相続

遺産分割(遺産分割協議等)によって、法定相続分を越える不動産を取得した場合には、その旨の登記をしておかなければ、法定相続分を越える部分について、第三者に対抗できないというのはかなり前から周知の事項でした。

遺産分割ではなく、遺言(「相続分の指定」や「相続させる」旨の遺言)によって法定相続分以上の不動産を相続した場合には、登記がなくても第三者に対抗できるとされていましたが、令和元年7月からは、遺産分割によってでも、遺言によってでも、不動産について法定相続分を越える権利を取得したときには、このことを登記しておかなければ第三者に対抗できないことになりました。

登記手続きなどは几帳面に行なってください。

不動産だけでなく債権も

上に、不動産についての対抗要件について書きましたので、債権についても書き加えておきます。

令和元年7月1日以降に開始した相続の場合ですが、遺言や遺産分割によって法定相続分を越えて債権を承継した相続人も、債務者にその承継の通知をすることが、債務者に対する対抗要件ですのでお気を付けください。

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