親権をもらいたい

夫婦で離婚すると決めたなら離婚手続きは簡単です。そもそもわが国では江戸の昔から孰談離婚といって、話し合いだけで離婚ができました。本当の離婚理由などは内密にして、「事情により・・・」「お互いに縁がなかったので・・・」のような書き方で済ませます。

ただし、協議には両家で話し合うとか、持参金を返還するとか、慰謝料を支払わなければならないこともあるので、離婚が困難になることはありました。

現在でも離婚は協議離婚が圧倒的に多く、離婚理由は問われません。離婚協議書提出にあたっては、財産分与についても問われません。しかし、未成年の子がいる場合には、親権者を定めていないと離婚届が受理されません。

親権者はどちらに

子の親権を父母がとりあうのではありませんが、大岡忠相(大岡越前)がしたという「子争い」のお裁きの話は有名です。結末はご存知のかたが多いでしょう。しかし、なぜふたりの女性が母親であると名乗り出たのかについては諸説あります。もともと外国の話を元にしているようです。

『ふたりの女性には、どちらにも本当の子がいました。一方の母は母乳の出が悪かったため、同時期に子を産んだ女性に授乳を依頼します。しかし、母乳の出が悪かった母の子は病死(?)してしまいます。その女性は精神に異常をきたしたのか、授乳してくれた女性の子が自分の子だと言い始めます。そして、どちらの子かということで大岡裁きとなった。』

そうすると、この大岡裁きは本当に正しいのか疑問も生じます。

多少、子供が痛がろうと、短時間のことだからそれくらいは我慢させようと思っても不思議ではありません。

他には、『その子の実父は資産家なので、その資産目当てに母親のふりをした。』というようなバリエーションもあるようです。

テレビドラマで観たときには、この偽母が悪者に見えましたが、話によっては偽母も愛情深く、とても気の毒な話になっています。

親権 離婚協議書 川崎

とにかく、離婚する父母が、どちらの親も自分の子を育てたくない、自分で育てるのは無理だから、相手に親権者になってもらいたいと、相手に子を押し付け合うケースがあります。子供はどうしても自分が育てたいと共に主張し、子供の取り合いをしているなら、子にとっては幸せなことでしょう。

親権とは

親権といっても、さらにこまかく分けることができます。

  • 財産管理権:子供の財産を管理したり、契約などの法律行為を代理する。狭い意味での「親権」はこちらのことです。
  • 身上監護権:子供の身の回りの世話や教育など、日常生活の面倒をみることです。

夫婦は離婚しても、子の母であり父であることには変わりがありませんが、離婚した夫婦は法的には他人です。婚姻中、親権は父母が共同して行使しますが、離婚した後は単独となります。

以前は、「離婚してから共同して親権を行使することが無理であることくらいは、少しでも考えてみれば明らかである。」と言われていました。しかし、現在(この記事を書いている時点)では、離婚後も共同親権にしてはどうかという議論が真剣になされています。

親権を分けるデメリット

父も母も親権がほしいと主張している場合、財産管理権と身上監護権に分けて考えるとよいというアドバイスをする専門家がいる一方、安易に分離することは危険であるとアドバイスする専門家がいました。現在でもそうかもしれません。

デメリットだとされるひとつ目は、学校などに提出する書面に財産管理権のある親を書くと、修学旅行とか突然の事故・手術などのときに、親権者の同意を得るのに手間がかかるというようなことです。(父母どちらかの署名があれば、両親とも同意しているのだろうという扱いもあります。)

デメリットとされるふたつ目ですが、親権者と子の氏(姓・名字・苗字)が異なってしまうことがあるというものです。

婚姻によって相手方の姓を称したほうは、離婚よって、まず姓が旧姓にもどります。(その後、変更することも可能ですが。)そうすると、子と姓が異なることもあります。

しかし、現在は、夫婦別姓とか選択的夫婦別姓の制度を支持する人が大勢いる時代なので、もし夫婦別姓が実現すれば、母と子、父と子の姓が異なるのは当然です。そうなると、親権者と子の姓が異なるのはデメリットでもなんでもないでしょう。

親権を分けるメリット

財産管理権と身上監護権を分けるメリットといわれているのは、

  • 協議離婚の際に、親権者を決めやすく、離婚がスムーズにできる可能性が高まる。
  • 親が離婚しても親子関係には変わりありませんが、たとえば父が財産管理権者・母が身上監護権者という明確な規定があれば、子が親子関係を身近に感じられる。

ということがあるといわれています。

親権の協議が調わなければ

どちらが親権を持つかについて夫婦間で決まらなければ、最終的には裁判所の力を借りることになります。初めから裁判にすることはできず、まず調停をしなければなりません。調停は話し合いですから、お互いの意見を調停委員などに話し、調停案などを聞きます。

近頃は、調停の段階から弁護士に依頼し、自分に有利な展開になるように依頼するケースも増えています。自分の主張がとおりやすくなるポイント、調停委員などが重視するポイントがありますから、弁護士さんにそれを的確に押さえて話し合いをすすめれば自分に有利になる可能性は高くなるでしょう。

もっとも、相手方に弁護士がついていても、自分は弁護士なしで調停をする人も大勢います。必ずしも不利な結果ばかりではありません。状況によります。しかし、相手方が弁護士をつけたなら、自分も弁護士をつけるのが無難です。もちろん費用はかかります。

その出費を避けるには、お互いに冷静に考えて、親権についてきちんと記載のある離婚協議書を作成しましょう。

一度は結婚した相手ですが、その人が非常にずるい人であることもあります。その場合は、自分たちで協議をしたのではずるい人が有利な結果になるでしょうから、はじめから弁護士に依頼することをお勧めします。

有責配偶者

ちなみに、不倫(不貞行為)などがあって離婚にいたったケースでは、離婚原因を作り、家族関係を壊した本人に親権が与えられるはずがないと感じる人もおられますが、有責配偶者が子の親権を得る資格がないというようなことはなさそうです。もちろん総合判断なので、場合によっては、有責配偶者に不利かもしれません。

母親が親権者

親権者になる人は、

  • 実際に子の面倒をみる時間があるか
  • 子の意向・希望
  • 親以外の親族との関係

などを考慮して決められるので、父が親権者になることもあります。

経済力も重要ですが、親権者の経済力が乏しくても、子育ての費用(養育費)は経済力のある方の親が支払いますから、母の収入が少ないから父が親権を得るとはいえないようです。

現在のところ、調停でも訴訟でも、親権を得るのは圧倒的に母親のようです。母親に、親権者としてふさわしくない事情がないかぎり、親権者は母親となるというのが一般的な見方のようです。

外国との違い

たとえば日本女性が外国人と婚姻し、海外に住んでいたところ、離婚することになって、日本女性が子を連れて日本に帰ってくることが問題になっています。国際的にはハーグ条約にしたがうようにということになっているようですが、現在の日本ではあまり理解・納得されていないかもしれません。

日本では従来(特に、戦後の20年くらいでしょうか)、父の労働時間が長く、帰宅するのが遅くなる、すなわち、子に接する時間が少ないので、子は母が世話をするということがあったからでしょう。

しかし、近時、父母ともに就労しているケースが増えました。父も母も、子の登校時間より早く出勤し、子よりも遅く帰宅するので、極端な例ですと、子は3食とも親とは食べないことがあるようです。昼は学校で食べるとしても「孤食」に近いのでしょうか。

親に、(特に母に)べったりくっついていなければ落ち着かないという子は減って、親がそばにいなくても、別段困りはしないという子が増えているとも耳にします。

今後、親権のあり方も変化していくのではないでしょうか。

親権は母親が得るケースが多いとはいえ、協議で決めることは可能です。調停などで決める場合にも、今後、変化があるかもしれません。

 

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