金額の書き換え・改ざん

日本語と数字

金額などを書くとき、アラビア数字の場合はアメリカ式(なのでしょうか?)に3桁ごとにコンマを入れます。

 1,234,567円

これをすぐに読めますか?

仕事などで慣れているような人は簡単でしょうが、若い人は、壱の桁から、「イチ ジュウ ヒャク セン マン ジュウマン ヒャクマン」と唱えるかもしれません。

 123,456,789,876円

になるとさらに難しいですね。

西洋の言葉では、数字を3桁ずつ区切ってすっきり読めます。(英語、仏語、独語、米語などで、少々違いがありますが、3桁ごとという原理に変わりはありません。)

日本の数字は4桁

日本語の数字体系(桁区切り)では「万」「億」というように4桁ごとなので、昔の書面ですと4桁ごとにコンマが入っていることもあります。かなり高齢の方からうかがったのですが、子供の頃、金額などは4桁ごとにコンマを入れるように学校で習ったそうです。

上に書いた

 123,456,789,876円

も、コンマを4桁ごとに入れる「昔の日本方式」ならすぐに読めます。試しに数字4つずつに区切ってみます。

 1234,5678,9876円

まず、コンマが2つありますから、右のコンマは「万」で、左側のコンマは「億」です。売買なのど金額なら、ほとんどの人はこれ以上大きな数字は使わないでしょう。

 

「1234」ならすぐに「せん にひゃく さんじゅう よん」と読めるでしょうから、その後に「億」を付けてください。

「せん にひゃく さんじゅう よん 億」です。

それから「5678」で、2番めのコンマは「万」なので、

「ごせん ろっぴゃく ななじゅう はち 万」

とすぐに読めます。これは、日本語だけでなく、アジアの多くの言語で「数字は4桁」という方式だからだと聞いたことがあります。アジアの諸言語の検証をしたわけではありません。

 

契約書示談書での数字の書き方

契約書示談書合意書誓約書・念書・内容証明郵便などさまざまな書類を作成しますが、その際に数字・金額を書くときの注意点があります。

契約書はパソコンで作成すると思いますが、領収書などはその場で手書きにするかもしれません。契約書全体はパソコンで作成するものの、金額とか日付などは空欄のままで書面を作成し、現場でペンで記入することがあるでしょう。

手書きは筆跡が残るからメリットがあるとも考えられますが、筆跡の真偽はそう簡単にわかるものではありません。「筆跡鑑定」というのは有名ですが、実際に行うとすれば、費用も時間もかかる上、絶対に確かな証明ができるのどうか不安はあるでしょう。

 

悪い人なら後に数字を書き換えるかもしれません。たとえば、「1」を「4」とか「7」に書き換えられるかもしれませんし、「3」は「8」になるかもしれません。慰謝料などの示談書・合意契約書などの数字を書き換えたという例はほとんどないと思いますが、売買の領収書の金額を改ざんする人はよくいるようです。

 

改ざん防止の漢数字

そこで、重要な書面を手書きにする場合は漢数字を使うことがあります。

「壱・弐・参・肆・伍・陸・漆・捌・玖・拾・佰・阡」

などがあります。

私が子供の頃「阡」という字をよく目にしたことを覚えています。懐かしいです。現在では「壱・弐・参」と「拾・百・千」を覚えておけば十分でしょう。

パソコンを使って書くときは、手書きのようには変更できないので、漢数字を使わないのが普通です。

ちなみに、西洋でもアラビア数字で書くと同時に、文字でも書くことがあります。

 

この行政書士は無能ではないか

相続・慰謝料・離婚などで、相手との信頼関係が崩壊していると、合意書を作ってお互いに1通ずつ所持するといっても、

「相手が数字を書き変えるかもしれないから、厳重に漢数字を使ってください。」

と言われることがあります。

上にも書きましたが、慰謝料や損害賠償についての示談書・合意契約書は、当事者双方が保持していますから改ざんのおそれは少ないと思います。

しかし、その場合でもご要望があれば漢数字で書面を作成するようにしています。

 

後日、この書面を見た人がいるとすると、なぜこの行政書士はこんな時代錯誤のような書面を作ったのか、無能な行政書士ではないのかと言われかねないのですが、それは仕方がありません。そういう誤解は甘んじて受けるというのが私の業務態度です。

「手書きの時代とは違って、今はアラビア数字でよいのです。」

と言ってしまえばそれまでですが、漢数字にしてもらいたいというのは、相手に対して「書き換えたりしない、書き換えは許さない。」という気持ちが込められていることがあるからです。書面には気持ちがこもるものだと思っています。

 

私の目線

専門家でも、私のこの方針を理解してくれる人も理解してくれない人もいます。

このようなことは、仕事で多くの人が経験なさっているのではないでしょうか。簡単に言うと、お客さんに直接対応している人と、お客さんと接する機会はなくて資料やデータを使って会社全体を管理する人とは感覚が異なると思います。

わが国の法のあり方を考える人と、「私には二人の子供がいて、ひとりの子は・・・なので・・・のように遺言したら・・・」というような相談を受ける人とは感覚が異なることがあっても不思議ではありません。

以前、国会で「インスタントラーメンの値段が400円くらいはするんじゃないでしょうか。」と市民感覚とズレた答弁をなさった政治家がおられましたが、それは無理もありません。私だって知りません。インスタントラーメンは食べませんから。

それどころか数年前に私は実売80円程度の板チョコを買いに500円硬貨を持って行きました。私が最後に板チョコを買ったのは、おそらく中学1年生の頃が最後でした。家にあれば食べたことはありますが、何十年も自分自身で買ったことはないのです。正直なところ、板チョコは1枚250円くらいすると思っていたのです。スーパーマーケットで「特売! 1枚75円!」という赤い文字を見て仰天しました。

話が逸れましたが、要するに、法律を勉強したことのない人が相談に来られることがほとんどですから、こちらも相談に来られる方の目線で、なぜ相談する気持ちになったのかという点を重視して対応するようにしています。もちろん、やっていけないことはダメですしアドバイスはしますが、なるべくご本人の意向を大切にするつもりです。

 

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