アパートを賃借するときの保証人

取り引きや契約で、人にお金・物品を貸すときには、貸主の損失を防ぐために保証契約をすることがよくあります。

個人対個人、個人対企業など、いろいろありますが、個人でアパート・賃貸マンションを借りるときにも保証人を要求されることが多いです。

保証人

「人に迷惑はかけない、自分で責任をもって支払う」と主張しても、相手方(貸主・会社)は納得しません。保証人をつけなければ貸さないといわれれば、保証人をつけるしか方法がありません。賃貸マンションなどでは保証会社をつける場合も多いです。連絡先などとして身近な誰かを指定することもあると思います。その人は保証人ではありませんが、この場合の「連絡先」とはどういう意味なのかよく検討してください。

根保証

アパート・賃貸マンションを借りる際の保証は「根保証契約」となるでしょう。

「何月何日に契約した△△円についての保証」ではなく、「一定の範囲に属する不特定の債務について保証」するのが根保証契約です。根保証の保証人になると、自分が保証する金額がわからなくなるのではないかという心配をしていませんか。

賃貸マンションの賃料が1か月につき8万円だとすると、8万円の支払いが滞ったときに8万円の保証をすればよいのか、2か月分の16万円なのか、5か月分の40万円なのかわかないのでは困ります。

また、賃借したマンションに通常の居住では付かないような傷をつけたり破損させたりした(うっかり傷をつけてしまったような)場合は、その費用についても保証する可能性があります。保証人になってはみたものの、その保証額がわからないのは不安です。

極度額

このように上限額がわからないのでは保証人が非常に不安です。上限額を定めなければその保証契約は無効とされています。この上限額のことを極度額といいます。極度額を定めなければその契約は無効という制度になったのは令和2年(2020年)4月1日からですから、その前は保証人は非常に大きなリスクを負っていたことになります。大きな悲劇が現実にたくさんありました。

個人(会社などの法人ではない人)が保証人になる根保証契約については,極度額を定めなければ,保証契約は無効なのですが、この額は当事者間の合意で定めて、書面等により「極度額は△△円」のように明瞭に定めなければなりません。ただし、ここで紹介した根保証契約は、金銭の貸渡しや手形の割引を受けることによって負担する債務(貸金等債務)に関係する根保証契約のことではありません。

当事者間の合意で決めればよいことになっているとはいえ、極度額がとても個人で背負いきれないほど高額ではいけないでしょう。あまりに高額ですと公序良俗に反するなどとして無効になる可能性もあります。ですから、一般的に納得できる額を定めることになると思いますが、たいていは貸主の側であらかじめ決めてあると思います。その金額について交渉の余地はなく、納得できない額であれば、物件が気に入っても貸してはもらえないでしょう。

個人根保証の極度額は、当事者の資力や取引内容次第ですが、個人で保証するとなれば500万円程度にとどめておくケースが多いかもしれません。アパート・賃貸マンションの保証なら1年分とか13か月分というのは納得できそうです。

支払いが滞ったら

貸主さんの中には、家賃の支払いが滞った場合、

「1か月遅れただけで何か言っては失礼だろうから、3か月滞納するまでは待ってみよう。」

というような人もおられます。

支払いの滞った翌月に2か月分きちんと支払う例はありますが、遅れたときにすぐに内容証明郵便等で督促状を出すという方法もあります。家賃を滞納した人は、2か月・3か月と経過するうちに一層支払いが困難になります。そして1年も滞納すると・・・。

また、借主と保証人が話し合って問題を大きくしない工夫もできるかもしれません。保証人としても1か月・2か月分なら、比較的支払いやすいでしょう。1年分たまってしまうと保証人さんも大変だと思います。個人が保証人となる場合には極度額を確認しておいてください。

 

そもそも保証人にはならないに越したことはありませんが、仕方がないこともあります。私の恩師ですが、保証人になるよう頼まれると、

「保証人にはなってはいけないというのが、父の遺言なので、申し訳ない。引き受けられません。」

と頭を下げて断ると言っていました。

 

私の父が事業を始めるときに資金が必要でした。しかし、地方から出てきてまもない若者の事業資金の保証人になってくれる人はそういるはずもありません。しかし、近所のお米屋さんが引き受けてくれたそうです。(どういう保証内容だったのか、私は知りません。) 何十年か経っても、あのお米屋さんのおかげで仕事をはじめることができたと、私には何度も話していました。そのわりには、そのお米屋さんで米を買っていなかったようです。「なんと不義理なことを」と思いますが、事情があったのでしょう。そのお米屋さんのご先祖は地元の名士だったので、先祖代々そのあたりに住む人の世話をしてあげていたからかもしれません。