消滅時効(民法改正後)

知人にお金を貸したけれども、なかなか返してくれない、ということはよくあります。強く請求することも法的には可能だとしても、貸した金額と知人であることを考慮すると、どうすべきか迷ってしまう。迷っているうちに時間が過ぎてゆく・・・ということになりがちです。いつまでもそのままにしておくと、法的にも請求する権利を失ってしまいます。

どうしたらよいかですが、一般的には

  •  すっぱりとあきらめる
  •  内容証明郵便できちんと請求する

のどちらかがよいかもしれません。上の2つの選択肢の中間的なこともできるでしょうが、人間関係や金額等を考えて、最終的にはご本人の判断となってしまいます。

債権などの消滅時効

権利行使をしないでいると消滅時効にかかって、法的に正当な権利を失うことになります。消滅時効です。令和2年4月1日以降は民法が改正されています。

令和2年4月1日より前に生じた債権については旧法が適用されますし、施行日以後に債権が生じた場合であっても、その原因である法律行為が、施行日前にされたときは、旧法が適用されますので、旧法の知識もまだしばらく必要です。

 

第166条(抜粋)

1,債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

 (1)債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。

 (2)権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

2,債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

 

上の例で、貸したお金を返してもらいたい場合なら、

  • 正当に請求できることがわかってから5年間
  • 請求できる条件が調っていることを知らなくても、法的に請求することができるときから10年間

が経過すると、時効によって消滅する可能性があります。

もちろん、時効の要件が調っていても、借りた人が返すつもりがあれば、いつでも返すことができます。

「全額は返せそうにないが、少しずつでもできるだけ返済する。」という人も実際にいます。

なお、所有権以外の財産権とは、地上権や地役権などのことです。

不法行為の消滅時効

不法行為に基づく損害賠償請求権は、

  • 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年
  • 不法行為の時から20年

の経過により消滅時効が完成します。20年というのも消滅時効の期間ですから、時効障害事由があると、時効完成猶予とか時効の更新ということも問題となります。

たとえば配偶者の不倫(不貞行為)を知ってから3年経っても慰謝料を請求しないと時効消滅しますし、知っても知らなくても20年経過すれば時効消滅します。

生命・身体の侵害による損害賠償請求権

生命・身体の侵害に基づく損害賠償請求権については、

  • 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年
  • 不法行為の時から20年

の経過により消滅時効が完成します。

不法行為の消滅時効が「3年 — 20年」という組み合わせであるのに対し、生命・身体侵害の場合は「5年 — 20年」というように保護を厚くしています。

旧法と新法

旧法と新法のどちらが適用されるかについては、

  • 令和2年4月1日より前に生じた債権については旧法
  • 令和2年4月1日以降は新法
  • 令和2年4月1日以降の債権でも、その原因である法律行為が施行日前にあるときは旧法

となります。さらに詳しくは、事案に応じて検討しましょう。新法が施行されたとはいえ、旧法が適用だれることもあります。