不倫の被害者

不倫の慰謝料がなぜ発生するかというと、法律上は不貞行為が不法行為となりうるからですが、一般に不法行為が成立するためには故意・過失が必要とされています。ここでは法律を勉強するわけではないので、不法行為や故意・過失についての詳細は専門書をご参照ください。以下、実務上必要だと思われる程度にご説明します。

だまされた私が被害者

不倫の慰謝料が問題になるとき、被害者だという人がひとりだとはかぎりません。次のようなシチュエーションで考えてみましょう。

 

太郎には花子という妻がいて、未成年の子がふたりいます。婚姻届を提出しているので法律婚です。

太郎はA子と知り合い、自分が既婚者であることを告げずに交際し、不倫状態となり(不貞行為があり)ました。

それを知った花子は、家庭や家族関係を壊したくないと考え、平穏な家庭を維持するためA子にすぐに不倫交際をやめるよう内容証明郵便を送付し、家庭をより確実に守るために不倫の慰謝料請求するつもりがあることを通知しました。

A子は不倫交際の証拠があったため関係を認めましたが、交際中に太郎は既婚者であることを明言しなかったために、自分は太郎が独身だと信じて将来のことも含めて真摯に交際していたとA子にメールで通知してきました。

A子としては、自分がだまされていたのであって、妻である花子に不倫の慰謝料を支払うどころか、むしろ自分こそ被害者であるとの主張をしています。

知らなかったので

相手が既婚者であることを知らなければ、自分が不倫の相手方になっているとは気付かず、普通に交際するのはもっともだと考える人もおられると思いますが、楽観的に考えず、自分に都合の悪い状況を想定しておくほうが無難だと思います。そうすると、通常は不倫が認定されると考えておくべきでしょう。

不注意ではなかったのか

結婚や一生の配偶者となる可能性を考えていれば、身の上話や幼い頃の話、仕事上の愚痴、ふたりの将来の話など、語ることはたくさんあるでしょう。

その結果、交際相手の現状の生活状況をある程度把握するのが普通ですから、相手の出身地を知らないとか、相手の名前を知ってはいてもどういう字なのか(たとえば、「マナミ」さんだとは知っていても、「真奈美」なのか「麻奈実」なのか)知らないとか、両親が健在かどうか知らないというようなことは通常は考えにくいでしょう。

もしそういう会話がなかったのであれば(そういいうカップルもいないとはかぎりませんが)、相手が既婚者かどうかを過失によって知らなかった(不倫であった)と認定されてもしかたがないかもしれません。

 

 

完璧にだまされたのなら

「完璧とでもいうべき嘘と演技でだまされていたから過失がなく、したがって不倫ではない」と認定される例はかなり少ないながら、あるにはあります。一般論ですが、こういう訴訟はやってみなければわからないでしょうし、たとえ一審で負けても二審で勝つかもしれません。

上の例のA子さんのような立場の人も言い分があれば花子(妻)に反論し、また太郎に対しても責任追及をすべき場合もあるでしょう。

A子のような立場で、自分が被害者である、相手に責任追及したいという主張をしたいという人は結構大勢おられます。【婚活サークル】もご参照ください。

上の例の花子さんのように、お金(慰謝料の額)の問題ではなく、家族や家庭生活を維持し、離婚によって子供たちと父親が今後離れて暮らすことにないようにしたい、そのために慰謝料とか誓約書を活用したいと考えておられる人は多いのです。できれば訴訟ではなく、協議して解決したいものですが、相手に真摯な態度がみられなければ訴訟もやむを得ないと思います。しかし、過ちを認めて謝罪し、誓約書を差し入れ、慰謝料も減額請求することなく支払いたいという人も少なからずおられます。彩行政書士事務所では、そういう人たちの示談書合意書を相当数作成してきました。

内容証明郵便と示談書

不倫の慰謝料は

  • 故意だった(不倫であることを知っていた)
  • 故意はなかったが、過失があった

という2つの場合でその額に差があるのが通常です。協議・示談で解決するなら、故意や過失も考慮して、場合によっては減額をするとよいでしょう。無難な解決につながる可能性が高いです。

上の例でいえば、A子に過失があったとしても、太郎の言行にも問題があるでしょう。法律上、花子は太郎とA子に慰謝料請求ができるとはいえ、花子が太郎と離婚する意思がないのであれば、A子に請求する不倫の慰謝料の減額をするとスムーズに進行しやすいでしょう。

A子側から減額の打診をしてみる場合には、提案の仕方に気をつけましょう。花子は感情的になっているでしょうから、その時に無闇に法律論や神経を逆なでするような申し出をしては事態が悪化してしまいます。

彩行政書士事務所では内容証明郵便の作成や、メールで通知する場合の文案の相談・作成、減額の協議書、そして話し合いが成立してからの示談書合意書の作成などに実績があります。