不倫相手は被害者であることも

不倫相手 被害者 川崎

面談で家族関係などのお話をうかがって、AとBが婚姻関係にある場合、

 A === B

のようにメモしています。

配偶者であるBがCと不倫関係にあると、

 A === B ーーー C

というように書き、Cが相姦者であることがわかるようにしておきます。相姦者とは不倫相手のことで、ちょっと専門用語の感じです。ここで

  • Aは被害者
  • BとCは加害者

ということになります。

Aは、BとCに不法行為による損害賠償請求(不倫の慰謝料請求)をすることが可能でしょう。

一般的に不倫の場合の責任追及とはこの慰謝料請求のことです。

共同責任のような

BとCは共に責任があります。連帯責任のようなものです。BとCが共同してAに損害賠償するのが原則ですが、実際にはそのようにしないこともよくあります。(AがCにだけ慰謝料請求するなど。)

原則どおりですと、Aの慰謝料請求の件が終了した後、BとCとの間で問題となります。

たとえば、BがCをだましていた場合などが考えられます。BはCに「婚姻関係が破綻している。」とか、「離婚することにした。」などと知らせていた場合があります。それなら、CはBにだまされたと考え、Bに対して責任を問いたくなるでしょう。実際にそれは可能なのでしょうか。

そもそも不法行為でしたから

民法に708条という規定があります。内容を簡単に書きますと、

  • 内緒で賭博をしたところ、大負けしてしまいました。掛けたお金が惜しくなって、違法賭博だからお金を返してくださいと言っても、もともと自分も悪いことをしたのだから返してもらえなくても仕方がない。
  • 愛人契約を結んで、定期的にお金を渡していたのに、ちっとも会ってくれなくなった。契約違反だから今まで渡したお金を返してもらいたいと訴訟にしても、もともと自分が公序良俗に反することをしたのだから、裁判所は主張を認めてくれない。

というようなものです。

上の、ABC間の問題では、CはBにだまされていたとしても、Cは自分の不法行為(不貞行為)が原因でお金を支払うことになったのだから、このお金を取り戻したいといってもだめです、ということになるのがもともとの考え方です。

ただし、BとCの責任(悪質性)を比較して、あまりにBが悪いとなればCが救済される可能性はあるようです。

 

 

不倫相手が被害者となるとき

BがCに嘘をついていたとすればBが悪いのは当然です。

仮にCが女性だとして、Bとの交際で子供を出産したとなると、認知や養育費についての問題も生じますし、もし中絶・堕胎したということになると、手術費用や体への負担(以後、妊娠できなくなる例もあります)もありますから、Bの責任は重いといわざるをえません。

Bがどれくらい悪くて、Cがどれくらい気の毒かについて、話し合いで示談が成立すれば解決するでしょうが、Bが自分の責任を認めないなどということになると、証拠などを揃えて裁判をしてみるしかありません。かなり大変でしょう。

Cはだまされて貞操権を侵害されたので慰謝料請求するという例もあります。

AとBが婚姻を継続する場合

BがAと離婚しないつもりであり、Aもそれを望むことがよくありますが、そうするとBはAの気持ちを和らげようとして、Cに非常に冷たい態度をとることがあります。ここで、BとCの仲は急速に悪化します。CがBを訴えることがあるかもしれません。上にも書きましたように、この訴訟はかなり苦労の多いものになりそうな気がします。しかし、BとCとの男女交際はなくなりますから、その点ではAは安心かもしれません。

 

BがAと婚姻生活を続けるつもりであり、Aもそれを望んでいるとしても、BはCに対しても責任を感じており、Cに対しても償いをするとか、Cが特に不利益を被らないように手当をしてあげたいということもあります。人情がありそうですが、「男らしい」とか「人として立派だ。」と言ってよいかどうかは問題です。実際にどうなるかは、Bの経済力などによってさまざまですが、これも最終的には解決しそうです。

 

AとBが婚姻関係を続けるつもりであれば、CがBの責任を追求する事態になることは少ないようです。Bの責任に応じて、AからCへの請求を少なくするなどの方法で、Cへの配慮をした示談書合意書等を作成することになると思います。

AとBが離婚する場合

Aは、法の規定通り、BとCに対して不倫の慰謝料請求をするかもしれません。Aにとっては、BとCの責任分担は関心がないので、BとCから慰謝料を受け取り、Bには離婚時に「離婚の慰謝料」も請求するかもしれません。

この場合、CがBの責任を追求してくる可能性もありますから、Bとしては一番経済的な負担が大きくなるケースかもしれません。

AとBが離婚し、BはCと再婚するパターンも考えられますが、そういうケースは私の知るかぎり多くはありません。これと心理的に関係があるかどうかわかりませんが、江戸時代でもABの離婚条件として、「離婚後は誰と再婚しても自由だけれども、不倫相手であるCとは再婚してはいけない。」ということがよくありました。

 

 

示談書・協議書の行政書士

川崎市中原区の行政書士事務所です。示談書・合意書・内容証明郵便・離婚協議書・遺言書起案などを中心に業務をしています。

ほとんどのことは、当事者同士で「大人の解決」ができると考えています。大勢の中で暮らしていれば、トラブルに巻き込まれそうになったり、巻き込まれたりすることは避けられません。予防したり、被害を最小限にとどめることはできそうですが、面と向かって話をすると一層感情的に対立してしまうことがあるので、書面での解決をお勧めしています。

事情を整理したうえで解決案を提示すると、相手にもよりますが、事態は収束することがよくあります。示談内容を提示する際に事実関係の説明も含めると思いますが、事実証明書として事実関係を示す場合もあります。それでも解決しなければ訴訟をしてみるしかありません。訴訟は正義が勝つとはかぎりませんから慎重に検討してください。