誰でも人生で何回かは「非常に腹が立つ」ことがあることと思います。
人に殴られても殴り返すわけにはいかないし、物を盗まれたからといって翌日盗み返すわけにもいきません。
大人の解決
仕返しはできませんし、自分たちで解決できないとなれば、裁判所という国家機関を使うしかありませんが、その場合でもほとんどは金銭での賠償等のみとなります。しかし、相談者さんのほとんどが「本当は、お金の問題ではない」とおっしゃいます。
大人の解決とは、やはり誠意ある対応と協議、そして必要に応じて謝罪することではないでしょうか。ただ謝ればよいというわけではなく、何がどう悪いかきちんと理解しましょう。
ただし、常識や良識のわからない人もいますから、そういう人に心からの反省を求めても無理です。この場合もお金で解決するしかありません。不本意でしょうが、どうしようもありません。そこで我慢するのも大人の解決でしょう。
行政書士の相談業務
行政書士は書類を作成するだけだというイメージを持っておられる方も多いのですが、書く内容が決まれば、それを自分で書くのは難しくはないともいえます。
- 何が問題か
- どうしたいのか
- 何ができるのか
- 何をしてはいけないのか
- 協議のポイントは何か
- 相手のしたいことは何か
など、相談者さんのお話を伺いながら、上のようなことをまとめ、そしてアドバイスをすることも行政書士の業務です。
相手に腹の立つことを言われたから言い返したい、ということもあるかもしれませんが、ポイントを絞って主張・反論するということが問題解決には大切だと思います。客観的に、第三者として、冷静な書面を作るお手伝いができると思います。
内容証明郵便は行政書士へ
何か問題が生じたとき、対応には順序があるでしょう。
- 第1段階:個人的にメールや面会で打診。
- 第2段階:内容証明郵便を出して協議。
- 第3段階:裁判所を利用。
第1段階の前から相談に来られる方もいますが、第2段階に移行するのに合わせてご連絡をいただくことが多いです。
第2段階は1週間で解決することもありますが、1か月から2か月ということもよくあるでしょう。協議には相手がいるのですから、相手の性格や双方のさまざまな事情があって、第2段階が3か月とか6か月ということもないわけではありません。
少しでも早く解決したいことはもちろんでしょうが、相手のあることですから、あまり急いで進めると良い結果は得られないかもしれません。
不倫の慰謝料請求など、すぐに訴訟にする人もいますが、むしろ本当の解決にはつながらないと思います。問題の本質が「法の問題」ではなく「心の問題」だからです。
総合的に考えても、「訴訟だ、裁判だ」というと不都合の生じることが多いようです。
調停制度
ですから、訴訟にする前に、調停前置主義といって、まず「調停制度」を使いましょうというものもあります。「協議」がいかに大切かということでしょう。
裁判所のホームページからの抜粋ですが、
- 親族関係調整調停
- 遺産分割調停
- 寄与分を定める処分調停
- 遺留分減殺による物件返還請求調停
- 遺産に関する紛争調整調停
以上のようなものが紹介されています。
相続などで、親子関係・兄弟姉妹の関係を修復するための調停というのもありますが、調停を申し立てた段階で家族・親戚関係は終了する(実質的に縁が切れる)ことがよくありますので、本当に関係を改善・修復したい場合には慎重にしたほうがよいでしょう。
本当の問題解決
まず協議をし、示談・和解を心がけ、示談書・念書・合意書・合意契約書などを冷静に作成しましょう。
協議には内容証明郵便だけでなく、メールでのやり取りもスムーズに協議を進めるコツだと思います。冷静に書けますし、後日、内容を確認しやすいからです。
被害者と加害者などの当事者同士では、感情的になるとか、面と向かって協議するのが嫌な場合に、行政書士が本人の意見・主張をまとめて事実証明書として相手方に伝えることができます。
私自身のことを言いますと、話し上手ではなく「人見知りタイプ」ですので、内容証明郵便などの書面を使うほうがお力になれるのかもしれません。そういう点では、行政書士という業務に適した性格ではないかと思っています。
協議と相談業務
当事者が口頭での協議をすると、十分に考えてから発言するとはかぎりません。「売り言葉に買い言葉」となりがちです。親子や兄弟姉妹では、ストレートにものを言い過ぎてしまいます。
前妻の子(前夫の子)と再婚後の子との話し合いなどは、お互いに初対面のこともあります。初対面でなくても会いたくないかもしれません。
不倫した人の配偶者と、不倫の相手方も、直接対面はしにくいでしょう。何らかの形で解決方法の打診や提案は必要ですが、詳細な協議は後日、冷静に行ったほうがよいと思います。
示談書の作成
協議は当事者が「示談書を作成すること」を目標にして集まるとよいと思います。
「前に言われたことに腹が立つから、今度は相手の痛いところを突いてやろう。」
という気持ちになりがちですが、それでは多分終結しません。
お互いの条件を照らしあわせて、示談書の作成にむけて淡々と進められるとよいと思います。
上に書きましたように、常識と良心のない人に反省や心からの謝罪を求めてもむだですので、示談書作成を機会にきっぱりと縁を切ることができれば、それも立派な解決だと思います。
『10万円をだまし取られて、その人は逃げてしまった。』とすると、まずは腹が立つでしょう。警察には届け出るとしても、捕まらなければどうにもなりません。ここからが考えようなのですが、「10万円で、あの悪い人が自分の周りからいなくなってくれた。」というのは幸運なことなのだそうです。そのような考え方もあるということです。
示談書・合意書などを作成して、再発を予防し、損賠賠償金・慰謝料などを(たとえ多額でなくても)取れれば、立派に解決したことになるとも考えられるでしょう。
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