婿入り

婚姻の意識の多様化

夫婦別姓とか、選択的夫婦別姓、内縁関係事実婚不倫の慰謝料の支払義務など、夫婦と婚姻についてはいろいろな問題があります。社会生活や価値観が多様化したためと思われますが、多様化を重視しすぎると社会生活が成り立たないという意見もあります。

婿入り

江戸時代、家督相続の時代ですと、あまり地位の高くない(お殿様にほんの小さな役職で仕えている禄の少ない)家柄であっても、長男は家(仕事)を継ぐので、おそらく将来、生活をしていけるのでしょう。しかし、次男、三男ともなると、継ぐ役職(家)がありません。要するに給料がもらえません。かなり悲観的な将来となります。

そこで、どこかに「婿(むこ)入り」できるとかなり嬉しいのです。
婿入りすると嫁やしゅうとにはかなり気を遣ったようです。

もし、婿入りしてから離婚することになると、三行半(みくだりはん)を夫(婿)が妻に交付することになります。

三行半は離婚証明書のようなものですが、女性(妻)の地位(実権)がかなり強い場合でも、男性社会というタテマエがあるために、必ず夫(夫の実家など、夫側)から妻(妻側)に交付する必要がありました。婿入りした夫が三行半を妻に渡します。

三行半には、「諸事情により離婚するので、今後、どこに嫁入りしようと、誰と再婚しようと好きにするがよい。」というようなことが書かれていますが、婿入りした夫は、この三行半を妻側に渡したあと、荷物をまとめて自分が家を出ることになります。さて、夫はどこへ帰るのやら、ということです。
そうなりたくない夫(お婿さん)は、何があっても妻や妻の実家に逆らうことなく、じっと我慢したのでしょう。

ドラマ・映画など

今は亡き「藤田まこと」さんが「必殺仕事人」などの必殺シリーズのドラマを演じていました。藤田まことさん演じる「中村主水」は「定町廻り同心(じょうまちまわりどうしん)」ですが、何かにつけて嫁姑にいびられ、嫁姑から、「婿殿っ!」と呼ばれて(叱られて)、「はいっ!」とかしこまって返事をする場面がよくありました。あのようにコミカルではないでしょうが、気持ちはドラマどおりだったのかもしれません。

『上意討ち 拝領妻始末』(じょういうち はいりょうつましまつ)という映画があります。(1967年、三船プロ製作、東宝。原作:滝口康彦「拝領妻始末」)
この映画の感想はともかく、婿入した場合、妻のことを「家付きの女房・・・」といって、妻の地位が高く、発言力が強かったことは昔から周知の事実だったのでしょう。真実のままなのか、どの程度誇張されているのかはわかりませんが、「婿入り」の様子がわかると思います。少なくともこの映画が作られた頃は、婿養子とはそういうものだというのが常識で、この映画を観て、不自然だと思った人はほとんどいないのでしょう。

話が逸れますが、「婿養子」は相続でも問題になりがちです。法的には明確ですが、なかなか遺産分割協議が調わないことがあります。

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