シャチハタは使えませんか
印鑑(印章・ハンコ)で、「シャチハタはだめ」という言い方をされることがあるようです。「シヤチハタ」は商品名・企業名ですから、ここでこのように書いては失礼や誤解があるかもしれませんが、よく耳にするので、「シャチハタ」と呼ばせていただきます。正しくは「シヤチハタ」で、「ヤ」は小さく書かないようです。
シャチハタは使えません
通常、押印する場合、印章(印鑑)が必要なことはもちろんですが、他に印池に入った朱肉やスタンプ台が必要です。通常、シャチハタとは、印章にインクを染みこませてあって、印池やスタンプ台を必要としないもののことでしょう。
正式な書類でシャチハタは使えないと思っていた方がよいですが、使えないとされている理由(開発当初と現在の製品を同視しては気の毒ですが)は次の2点と思われます。
- シャチハタはゴム印であるから、押し方によって印影が崩れることがあるかもしれない。
- 内蔵されているインクの性能により、滲んだり退色して判読できなくなるかもしれない。
なお、「佐藤」「鈴木」「田中」など、手彫ならすべて異なった印影だけれども、シャチハタは同じ印影だから正式には使えないとも言われているようです。
これが本当だとすると、同じものをいくらでも作れるので、誰が押しても同じですから、たとえ認め印であっても宅配便や書留の受領印などとしては実際にはほとんど「役立たず」ということになるでしょう。印鑑の役割とは何でしょうか?
ゴム印
ゴム印は力の入れ方や押す角度によって印影が崩れるかもしれないので、正式には使えません。ただ、シャチハタの場合、かなり優れた製品があるようですから、実質上、そのような心配のないものもあるようです。
インク・朱肉
押印する場合、朱色の印影をつけますが、大きく3種類に分けられると思います。
- 昔からの朱肉
- 顔料インク
- 染料インク
昔からの朱肉
もともとは硫化水銀を使用しており、これですと焼却時に有害な物質が出ます。現在では、鉄、モリブデン、アンチモン等の化合物に松脂、白蝋、朱液の保持体などを乾燥させた蓬に練り込んであるそうです。
練朱肉は、現在では絵画や書道の落款印に使われる程度で、契約書類に使うことは少ないでしょう。色も明るいものや暗い色があります。油性なので、蓋をしなくても乾燥しにくいです。
この朱肉を使っていれば法的には無難なのでしょうが、非常に高価です。乾きも遅いようなので、乾燥前にこすってしまうと困ります。
練朱肉では、ハンコの溝に入り込んで、ハンコの手入れが大変です。
このベタベタした練朱肉だけが朱肉ではありません。
顔料インク
ベタベタしていないと朱肉ではないと思っている人もおられるようですが、現在、普通に使っている朱肉は「スタンプ台」タイプのものでしょう。油性顔料インクの耐久性はかなりあります。退色・変色も少なく、まして見えなくなってしまうことはなさそうです。また、消すこともできないというのが定説のようです。書類の保存が悪いと、インクよりも先に紙がだめになるかもしれません。
わざわざベタベタした朱肉(練朱肉)を使わなくてよいのです。
写真は、私が内容証明・契約書・示談書等に使用している朱肉です。
染料インク
インクタイプは退色するからだめだというのは、この染料インクのことでしょう。インクの色を構成している粒子が顔料インクよりも小さいので、紙に染みこんでいくから「染料」インクといいます。酸化や太陽光線(紫外線)には弱いのです。万年筆用2液タイプのインク消しを使うとかなりきれいに消えるようです。
シヤチハタネーム
さんざん「シャチハタ」と書いてしまったので、念のため書いておきますが、「シヤチハタネーム」という製品の印影は通常の保管で20年間は鮮明であることを確認しているそうです。20年を過ぎると判読できなくなるということではありません。
また、この企業では、営業戦略上、シヤチハタネームを正式な印鑑として認めてもらいたいとは考えていないという噂を聞きました。
以上、間違いがありましたらご教示ください。