面会交流の取り決め

成年年齢の引き下げ(20歳から18歳への引き下げ)にともなって、離婚後の子の養育費についての疑問(【養育費支払い期間の表示】をご参照ください)が生じることがよくあり、同時に、面会交流のあり方への関心も高まりました。「面会交流」は以前は「面接交渉」と呼ばれていたものです。

 

離婚協議書作成業務をしていると、養育費や面会交流についていろいろなご意見があります。

  • 「養育費はいらないから、面会にも来ないで」
  • 「養育費は離婚時に一括して支払う」
  • 「子供と面会したいとは思わない」
  • 「面会交流に応じて養育費を支払う」

など、さまざまです。面会交流について民法では「子供のことを第一に考えて取り決めをするように」とされていますから、父(あるいは母)と面会させないことが子にとって最善だということになれば、会わせないという取り決めをすることになるでしょう。

法務省の見本

法務省で『子どもの養育に関する合意書』というものを公開しています。養育費や面会交流についての案内です。

 

 面会 宿泊なし  △月に△回程度

 面会 宿泊あり  夏休みに2泊3日程度

 

 子1及び子2が大学等に進学した場合の費用等の負担に ついては,別途協議する。

 

これでスムーズに進めば苦労はありません。離婚協議書・離婚公正証書でも

「面会はひと月に1回程度とし、具体的な日時等は父母がその都度相談して決める。」

のように記載することはよくあります。

離婚した夫婦の話し合い

考え方・生活の仕方が異なるために離婚する夫婦が多いので、離婚後、子供の育て方等で、父母の意見が一致しない例は多いでしょう。そもそも話すのが嫌だということもあります。離婚した父母が、その都度相談するというのは結構困難かもしれません。

初めにすべて綿密に決めて書面化しておけばよいようにも思われますが、子供の養育は長期に渡ることが多いので、離婚時には予測できなかったことが起こることはよくあります。病気とか学校進学とか習い事などがあります。たいていは、途中で協議の見直しが必要でしょう。また、成長するにつれて、子供と一緒に暮らしていない方の親は、子との面会の機会が自然と減っていくこともあります。はじめに詳細を定めることはかなり難しいと思います。

面会交流の回数や時間が減る

子が何歳の時に父母が離婚するかにもよりますが、子供が大きくなるにつれて、親との面会交流よりも優先したい事が増えるかもしれません。そうなると自然と面会交流の回数や時間は減っていくでしょう。

子が生まれてすぐに離婚したような場合は、ほとんど子と面会することがないと聞いています。

このように、自然に面会の回数や時間が減っていくケースでは、誰からも不満が生じないのが普通だと思います。

面会交流がなくても養育費は

面会交流が減ったとか、なくなったという場合にも、養育費は必要でしょうから取り決めのとおりに支払うのが原則です。

公正証書で、養育費は強制執行がしやすいように定めてあるのだから、面会交流も強制執行可能なように書類を作成してもらいたいという依頼もありますが、公正証書の強制執行認諾条項(強制執行認諾文言)の性質上、面会交流の強制執行を定めることはできません。

また、公正証書で、強制執行が可能なように書面を作成しておくと、間違いなく養育費を受け取れるのかというと必ずしもそういうものでもありません。

強制執行は「強制」なのですが、かなり「ゆるい」ので、実際には受け取れないとか、受け取ったとしても約束の額をかなり下回るケースがあります。

 

 

子供の養育に関する合意書

上にも書きましたが、離婚時に養育費と面会交流について、『子どもの養育に関する合意書』を作成するよう法務省では勧めています。

離婚時に親権者は決めなければなりませんが、養育に関する合意書を作成・提出する規定はありません。しかし、このふたつは共に重要なので、他の記事と重複しますが以下に書いておきます。

「養育に関する合意書」の養育費

子供の養育に関する合意書で、養育費に関しては次の事項を記載するとよいとされています。

  • 養育費の額:協議で決めればよいのですが、たいていはいくらが妥当なのか、なかなかわかりません。「養育費算定表」をみながらとりあえず決めてみるとよいと思います。
  • 養育費の支払期間:家計が別になった月から支払い始めることが多いでしょう。いつまで支払うかは、成年に達するまでを目安に、18歳、20歳、 22歳のように具体的に決めるとよいでしょう。
  • 養育費の支払時期:毎月支払うのが基本ですが、一括払いも可能です。ただ、既に一括で支払ったのだから、もう養育費の支払い義務はないという主張はできないでしょう。
  • 養育費の変更等:大きな病気、学校入学など、あらかじめ明確にできなかった出費がある場合に、どのように父母が負担するのか定めておければよいですが、難しいかもしれません。

 

「養育に関する合意書」の面会交流

  • 面会交流の内容:日帰りの面会交流、宿泊をともなう面会交流などがあります。また親子だけなのか、他に誰かが一緒なのかも確認するとよいでしょう。手紙・電話・メール等も面会交流のうちですが、これを認めないという例はほとんどないようです。
  • 面会交流の頻度 :ほとんどは月に何回という決め方だと思います。月の第何週とか、曜日を指定したり、1回につき何時間程度の面会交流を実施するかを決めてもよいでしょうが、実際にそのとおりに実行するのは難しいかもしれません。
  • その他:子供を迎えに来るのか、子供をどこかへ連れてう行くのかという待ち合わせ場所も決めてもよいでしょうが、上の事項と同様、実際にそのとおりに実行できるかどうかはわからないと思います。とにかく父母同士の連絡先ははっきりさせておきましょう。

 

上にも書きましたが、こまかな取り決めをしても、記載事項はあくまでタテマエで、実際には実行困難なことも予想されます。ですから、法務省では細かく決めるようにお勧めしているようですが、現実には上に書きましたように、

「面会はひと月に1回程度とし、具体的な日時等は父母がその都度相談して決める。」

という取り決めでも結果的に同じくなってしまうかもしれません。

また逆に、面会交流の回数や時間などは、父母も子もあまり気にしていないケースも多いようです。

離婚したら遺言書も

離婚した夫婦は他人ですが、ふたりの間の子の父母であることには変わりがありません。自分の元配偶者が死亡しても自分は法定相続人ではないのですが、特別な事情がないかぎり子供は法定相続人(推定相続人)です。離婚後、生活を共にしなかった親と交流などが一切なくても、相続のときには子供たちも相続手続きに参加しなければなりません。

とのときに、相続人たちが相続手続き遺産分割協議で困らないように、遺言書を作成しておくと良い場合があります。【離婚したら遺言書も】をご参照ください。

また、婚姻外の子がいる場合も遺言書が必要かどうかご検討ください。

 

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