遺言書

イメージの悪い言葉?

遺言とか遺言書と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。心地よい印象はないかもしれません。念のため申し上げますが、遺言書と遺書は別のものです。

遺言書は、昔の戦国武将のように、現在の状況分析と後世の見通しが必要だと思います。遺言書のイメージが悪いからといっても、自分の老後や子孫たちを幸福にするカギがここにあるとしたらどうでしょうか。以下、遺言についてご紹介します。

 

遺言書 老後

 

相続と遺言

相続は、亡くなった方の地位を受け継ぐもので、その地位の大部分は「財産」です。その際、遺言書があれば考慮されます。この遺言書は亡くなる前に本人が残すものです。

遺言書を残しても残さなくてもよいのですが、亡くなった方の財産等をどのように分けるかは、「亡くなる前に本人が決めておく」というのが戦後の我が国の方針だという説があります。

長男がいるから

今の時代に「長男が・・・」とか「跡継ぎ」という考えをする人がいるのですか、と真面目に質問されることもあります。

しかし一方で、「先祖からの土地」「何代もが眠るお墓」を誰が守っていくかということは大きな問題です。

そうすると「家督相続」のままで長男に任せれば、生前に遺言書を残しておく必要はないと感じている人も多いことと思います。長男が家を継ぐので、長男と同居し、長男が結婚すれば長男夫婦と同居することになるのでしょう。

この場合、長男のお嫁さんとどう付き合うかも問題です。

また、長男が結婚せず(結婚しても)、子がいないという例も多いです。

長男が親の老後の面倒を看る・介護するのかという問題もあります。長男の妻が介護をするとなると、相続だけでなく、場合によっては離婚問題も関係する大問題になります。

また、仕事の都合などで実家を離れる子も多いでしょう。「自分は長男だから実家を離れられない。」という話はあまり聞きませんので、親と同居している子が「跡継ぎ」となりそうです。

遺言書は総合判断で

時代は「個人の尊厳」、「男女平等」や「老人介護」の問題と絡んで変化しています。親御さんの死亡を期に残された人たちが仲違いすることのないよう手当をしておく気運も高まってきたので、遺言書が重要になっています。

遺言書の内容が推定相続人(現時点で相続が開始したら相続人となるであろう人)に知れて、相続開始前から親子、兄弟姉妹の間で不和になることもあります。自分亡き後だけでなく、自分の老後が幸せになれるような遺言書を作成したいものです。

ただ自分の思ったことを書くのならいつでも簡単にできそうですが、一歩まちがうと、相続が始まる前から不和と争いが起きることがあります。
「争族」「争続」などといわれることがあるくらいです。

遺言書を作るのは簡単なことではありません。財産管理、法的問題、人間関係・・・それらを見渡したうえで作成しなければ、遺言書を作る意味がほとんど失われてしまいます。

遺言書の書き方 川崎

 

ひとりの子が家を建てるときに親が援助してあげた(金銭をあげた)とか、子が事業を始める際に資金提供した(金銭をあげた)という場合、お金をもらった子と、もらったことのない子の間に不公平があるでしょう。

相続人が納得すればよいのですが、そうでなければ「法的にはどうなのか」という話になります。後日、相続人たちが条文を読んで協議する必要のないように、はじめから、法的に妥当で、親(被相続人)の気持ちが伝わるような遺言書を書けるとよいと思いますが、難しい場合が多いです。

裁判所をあてにしない

問題が大きくなったら裁判所だ、と考えている人が多いのですが、それはお勧めできません。費用のことだけを言っているのではありません。法的に判断はされても、気持ちは納得がいかないでしょう。

時代劇に「大岡裁き」というのがあります。大岡裁きの真偽はともかくとして、現代の現実の裁判に大岡裁きを期待しないほうがよいでしょう。裁判所の力を借りて、みんな幸せになったという例を私はほとんど知りません。実際には、「裁判をしてでも・・・」と考えても、裁判にはいたらずに(裁判ができずに)終わる例が多いです。

好き勝手に書かないように

遺言書は、相続人が不仲になったり、裁判所の力を借りるようなことのないように、適切な内容で作成しなければむしろ害になるのです。好き勝手に書くのではなく、むしろ自分を抑えて書く覚悟が必要だと思います。

遺言書は内容や書き方にルールがあって、最悪の場合、せっかく書いても無効ということがあります。無闇に、深い考えもなく遺言書を書くことを防止するためだと私は理解しています。

ただ、作成の仕方については、インターネットでも書物でもたくさん紹介されています。作成キットも市販されています。法が意図した「作成者の意思と判断能力」を備えた人であれば、十分おひとりで作成できると思います。もし、ご心配でしたら作成に当たっては当事務所がお手伝いします。

誰でも年をとると程度の差はあっても判断力等が衰えます。衰えてからでは遅いのです。身近な人の意見が耳障りだったり、縁の遠い人の言うことが耳に優しく聞こえるかもしれません。是非、自分の判断力に自信のあるうちに作成してみてください。

パソコンで遺言書をつくる

パソコンが普及しているせいか、きれいにパソコンで作成する人もおられます。パソコンで遺言書を作ることも可能ですが、いろいろ条件があります。遺言の仕方は意外と知られていません。「どういう条件があるのだろう?」と思った方は、本などを参考にして、法的に有効で、子孫(相続人など)を幸福にする遺言書を作成なさってくだささい。

 

遺言書 ビデオ 川崎市

 

カセットテープやビデオで

カセットテープやビデオ・DVDなどの動画、あるいはさまざまなデジタル技術がありますので、本人の声・表情などまでわかるから、遺言書という書面よりも、間違いのない遺言ができるのではないかと考える人もおられるでしょう。私もそう思いますが、そのようなデジタル・電子技術が、たとえばこれから10年・20年先でも正確に再生できるか・改変されないかということが問題です。

とにかくわが国の法律では、生前に本人が吹き込んだというカセットテープやビデオがあっても法的な効力はありません。

実際、遺言をカセットテープに録音していた方もおられるのですが、遺言書という書面でなければ、法的には遺言として無効です。しかし、法的な効力はないとしても、遺産分割協議で相続人みんなで参考とするならとてもよいことだと思います。ご参考までに、【ビデオや動画で遺言ができるのか】も合わせてご一読ください。

 

遺言書を作らないと

遺言書がなければ、相続人たちが遺産分割協議書を作成して、財産の分配・各種の手続きをするでしょう。

遺産分割協議において、ある程度の意見の相違はあるのが普通です。兄弟喧嘩・親子喧嘩がどこにでもあるのと同じことです。ですから「ある程度の調整」は必要でしょう。ここで相続人たちが話し合えないほど大きな対立がありそうなら、専門家に初めから任せた方がよいと思います。

では、遺言書があればよいのかというと、「きちんとした遺言書ならあった方がよい」と思います。きちんとした遺言書をご自分で作る自信がなければ、専門家にご相談ください。


遺言書 遺産分割 武蔵小杉

配分の基準は

財産配分の基準は「相続人の納得するように」です。実際には、遺産分割協議書を作るに際して、法定相続分を参考にする場合が多いと思われます。

ただし、早くから親元を離れて自分で生計を立てていた場合は、「親からあまり面倒をみてもらえなかった分、相続分を多く配分する」のか、それとも、「親との関係が濃くなかったとみて、相続分を少なく配分するのか」などいくらでも考えるべきことはあります。

こういう場合こそ、親が遺言書で指示をしておく意義があります。その場合、なぜ自分がそういう分け方をしたのかをきちんと書いておくことをお勧めします。

遺言書の種類

  • 専門家に依頼すると公正証書遺言を勧められるこがが多いと思います。相続開始後、遺言書の内容どおりに確定するとは限りませんが、本人の意思確認や保管などの点で、もっとも信頼性があるとされています。
  • 自筆証書遺言は、思い立ったらすぐに・ひとりで・無料で作成できるのが魅力です。無効になる可能性や、後日、偽造等の疑いも生じかねませんが、自分が遺言書を書いた理由などを好きなだけ書くことができます。使いようによっては非常に魅力的な遺言書だと思います。書き方だけを行政書士が支援することもできます。
  • 自分だけでじっくり考えて作成し、確かに本人が作成したと公証人が認めるのが秘密証書遺言です。公証人ではなく、自分が保管しておくので、相続人が発見してくれるように保管しましょう。

遺留分

遺留分を侵害している遺言書も無効ではありませんが、後々、相続人の間で紛争が起こるような遺言書は書かない方がよいでしょう。ひとりの子に全部あげる、身内ではなく他の人に全部あげる、というのは問題が起きそうです。しかし、そのような遺言書も法的に有効です。「問題が起きそう」であっても「起こることはかぎらない」のです。

遺留分については「遺産分割協議書」の欄をご参照ください。また、別のサイトになりますが、遺留分遺留分の放棄もご覧いただけます。

 

内縁関係・事実婚

内縁関係と事実婚は区別がしにくいことがあります。ここでは便宜上「内縁」「内縁関係」としておきます。

内縁の妻は相続権がありませんから、内縁の妻が正式に財産を受け継ぐにはかなり条件が厳しいです。公正遺言証書を作成しておく(公正証書遺言をしておく)ことを強くお勧めします。

公正証書遺言は公証役場でするのですが、いきなり公証役場に行くのではなく、行政書士と相談しながら原案を作って、公証人と打合せの上、正式に作成する方が手続きが楽でよい結果が得られると思います。

どのような事情があって、どのような法律が関係するのか考慮しながら、最適な遺言書を作りたいのです。場合によっては、税理士等との協力が必要かもしれません。

夫婦に子がいない場合

配偶者は常に相続人で、子供があれば子供も相続人ですが、子供がなければ被相続人の親が相続人です。親(父とか母)がいなければ、祖父母などの直系尊属ですが、亡くなっていれば兄弟姉妹です。兄弟姉妹以外の人にあげたいとか、内縁の妻にあげたいとか、兄弟姉妹にはまったくあげたくない場合には、遺言書を書きましょう。

再婚と遺言

再婚によって、複数の(元)配偶者との間に、自分の相続権をもった子供がいると、「親しい相続人」と「あまり交流のない相続人」ができてしまうことがあります。場合によっては、現在、法定相続人がどこに住んでいるかもわからないこともあります。
そういう相続人が集まって、遺産分割協議をするのは困難かもしれません。遺言を作成しておいて、かつ、専門家に相続手続き(遺言執行)を依頼した方がスムーズに相続ができると思います。少なくとも遺言書だけは作成しておきましょう。

一度は専門家にご相談を

内容やご希望をうかがって、適切な遺言書となるようお手伝いします。公証人、税理士、司法書士、弁護士と連携して業務を進めることもありますので、まずはご相談ください。

遺言書” への39件のフィードバック

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