お金がないわけではなく
不倫の慰謝料支払いの場合に、
「お金がないから払えない。」
という人がいます。
ないものは払えませんが、会社員等ならもちろん、パートなどでも分割払いは可能でしょう。本当に全然ないということはきわめてまれです。
しかし、「お金がない。」というのは、「そんなに支払うのはおかしい。」という気持ちで言っているのかもしれません。
「払う・払わない」というのが第一段階で、次に「いくら払う」という段階となります。
「いくら請求したらいいのか、いくらなら支払うのか」がわからないので、「相場は?」という質問が多いのでしょう。
「訴訟をしたとすればいくらなのか」という額を「相場」とよんでいる人もいます。
お金の価値
額の決め方ですが、「不倫は不倫であって、誰がしても違法性の程度に影響はない。だから、不倫の慰謝料を請求されている人の資力に関係なく、不倫の慰謝料額を決める。」
という意見もあります。
しかし、私は
「お金の価値は人によって異なる。」
と思います。
年収5千万円の人が3百万円支払うのと、年収5百万円の人が3百万円支払うのとは、重み・価値が異なるでしょう。
資産に関係なく決めるとすると、お金のたくさんある人は違法行為をいくらやっても(金銭的には)痛くも痒くもありません。これは不公平だと思います。
支払う場合も不公平ですが、受け取る場合も不公平でしょう。
不倫の慰謝料を請求するとか、慰謝料額について協議するなら、
- 支払う側の資力と責任の重さ
- 受け取る側の資力と責任の重さ
を勘案しないと、納得できないのではないでしょうか。
お互いの立場・事情がある
訴訟の場合に、「その人にとってのお金の価値」はあまり勘案されないとすると、
「その額はきつい。無茶だ。」
ということもあるでしょうし、
「そんな額ならいつでも支払う。」
ということが生じないでしょうか。
「お金持ちなら、やりたい放題」という社会はよくないと思います。
不倫の慰謝料を請求する人も、請求される人も、双方とも気分がよくありません。ある程度、感情的になるのは当然ですが、どこかで自分を客観的にみていないと、「人を呪わば穴二つ」になる可能性が高まりそうです。
(これは相続問題・遺産分割協議でもまったく同じです。)
聖人君子になれとはいいません。専門家は第三者だから(他人事だから)冷静なことが言えるのかもしれませんが、もともと行政書士は司法試験を受けるような人たちではありません。学生のうちから行政書士という職業を目指したわけではなく、社会に出て、いろいろなことを経験し、思うところあって行政書士に転向した人が多いと思います。私もそのひとりです。
相談に来られた方のお気持ちには、比較的共感できると思います。
書面のやり取り
「冷静に、将来を見据えて」とはわかっていても、結構むずかしいはずです。それは承知していますので、せめて
- 面と向かって
- 口頭で
- 記録もなく
協議をするのではなく、書面・文章・メールでの協議をお勧めしています。
謝罪・反省・誠意を示すには、「お金で」となることが多いです。(お金はいらないというケースも少なくありません。その場合は、お金の価値は極めて低いということです。)
冷静に、将来を考えて、適切な額を考えるとき、忘れていけないのは何よりも「誠意」だと思います。場合によっては、誠意でお金の価値が変わるかもしれません。