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職場の悩み
職場でのパワハラ・セクハラについて書く前に、まず書いておきたいことがありますので、ご紹介します。以下の【会社より自分】の記事に思い当たる点はありませんか。
会社より自分
ある店舗の掃除の話です。
その店舗のトイレはお客さんが自由に利用できます。ここでは、トイレットペーパーが少なくなると廃棄します。
最後まで使い切らないと紙がもったいないと思いますし、経費の無駄でしょう。
しかし、清掃担当者が、使い切っていないトイレットペーパーを捨てるのには訳があったのです。
トイレットペーパーがなくなった場合に備えて、予備を置いておくと盗まれることが多いそうです。だから、予備のペーパーを置いてはいけないことになっています。置く場所もありません。
かといって、トイレットペーパーを使いきってしまった状態が上司に知れると、清掃とペーパー補給を怠ったと疑われるそうです。
ですから、清掃の時に、十分に残量がないかぎり、そのペーパーは廃棄して新品を付けてくるのでした。
従業員が何を考え、何のために何をしているかがわからない上司がいるのです。
これがパワハラとどれほど関連があるかは問題ですが、人の下で働く人には常にこのようなプレッシャーがあるといえるでしょう。
人を指導管理する立場の人が、この清掃担当者のようなケースを全く理解できないことがあります。
理由を説明しようとすると、「口答えした」「反抗的態度だ」と受け取る上司がいます。
だから何も「言えない」し、「言わない」ことになります。
この店舗・企業が発展しているかどうかは書きませんが、よくある事例だと思って、似たような話に置き換えてご紹介しました。
相談に来たのに沈黙
せっかく相談に来られたのに、なぜかなかなか話してくれない人がいます。パワハラ・セクハラに関しましては、他のほとんどの相談と違って、自分のこんな話は誰も信じてくれないのではないか、こんなことで悩むのは自分がおかしいのではないか、という気がしているようなのです。
確かに、長い間、おかしなところにいると、「自分の常識が狂っているのかも・・・」「悪いのは自分かもしれない」と感じるようです。
そんな心配はなさらないでください。労働者・従業員を守る法律はあっても、そんなこととは無縁の企業・団体がたくさんあることは十分承知していますから、電話・メール等、ご連絡をください。
ご本人が話しづらければ、身近な方が代わってご相談いただいてもよいと思います。
職場のレベル
パワハラにもセクハラにもいえることですが、「職場のレベル」を抜きにして考えられません。法に則って合理的に経営しているのか、それとも法などまったく無視して好き勝手に経営しているのかです。(完全に法律を守って、業績も好調という企業がどれほどあるかわかりませんが。)
パワハラも法を曲解したり、法の抜け道を利用しているのか、それとも単に「子供のいじめ」と同レベルなのかをまず考えましょう。
パワハラが子供のいじめと同レベルですと、被害に遭っているにもかかわらず「おかしいのは自分の方ではないか」と精神的に追い詰められるケースが多いようです。早く部外者に相談しましょう。
ほとんどは子供のいじめ問題と同じだと思います。今の時代にそんな職場はないという感想の人もいるようですが、現実にはたくさんあるようです。部外者に相談しても信じてもらえないために、なおさら精神的に追い詰められてしまうのです。
好き嫌い
昔も今も、大人も子供も、どこの国でも民族でも、人に対しての「好き・嫌い」があります。「好き」が発展して友情・愛情となるのは結構ですが、その逆に、「何となく気が合わない」から「嫌い」に発展し、いわゆるイジメになることがあります。人間である以上仕方がないのかもしれませんが、しかし、職場で、この「気が合わない」という感情をコントロールできないのは困ります。
昔とは違います
上司が引っ越しをするときには、部下が無償で手伝いに行ったのは、それほど昔のことではないと思います。引っ越しの後、ちょっと豪華な夕食を出してもらって、上司と部下が絆を深めたのかもしれません。これが嫌で嫌で仕方がなかったという人はあまり多くはなかったのではないでしょうか。仕事の都合なら休日出勤も我慢したし、接待ゴルフもしたでしょう。
そもそも今は、人が我慢をすることが減りました。病気の治療でも、「良薬 口に苦し」という時代ではありません。薬は飲みやすく、注射は痛くなく、叱る医師より優しい医師が好まれます。なるべく苦痛は避けるのが現代です。理屈に合わないことを我慢しないのが現代の傾向で、大勢の求めている方向でしょう。
ブラック企業
昔から労働条件が悪いとか、厳密には違法な労働条件のケースがあります。「ブラック企業」という名称も生まれました。
ブラック企業とよぶべきかどうかはともかく、好ましくない職場・企業として以下のようなことがありそうです。
- 労働基準法に反している
- 長時間労働で仕事がきつい
- 休暇が取れない
- 労使協定がおかしい
- 賃金がきちんと支払われない
- 残業代が支払われない
- 研修という名目で休日も働く
- イジメが多い
- パワハラ・セクハラがある
入社前の見分け方のめやすとしては、
- 初任給が曖昧
- 離職率が高い
- 特に女性の勤続年数が短い
- 経営者がカリスマといわれている
- 社長が世襲制で態度が大きい
- 社員の表情が暗い
- 社屋・敷地内の掃除が不十分
というのが参考になるかもしれません。
入社後は、
- 給料泥棒
- なぜそんなに頭が悪いんだ
- 仕事がつらいなら、楽な会社へ行けばいい
- 休日が欲しければ、休日の多い会社へ行けばいい
- 残業するのは就業時間にサボっていたせいだから、残業代が出るはずがない
などといわれる例があります。
往々にして、そのようなことをしている側の人たちは、あまり悪いことをしているという意識はなさそうです。
もっとも、企業側・上司が悪いだけでなく、従業員・部下の側に非がある場合もありますので、すべて企業が悪いと決めつけないでください。
何が問題なのかわからない
セクハラやパワハラをしている人に、まず、この言葉の意味を説明するのが大変なことがあります。やっている本人が、言葉の意味や、世間で禁止へと向かっている趣旨が理解できていないのです。
そして意味がわかってから、「あなたのしていることはパワハラだ」とわからせるのもかなり大変です。ここで本人が反省してやめてくれれば、おそらく問題は解決します。
問題は、わからない・反省しない・パワハラを止めない場合です。
労働基準監督署
労働条件等で違法性があると考えるのであれば、労働基準監督署へ相談に行ってみるのもよいかもしれません。良い成果が得られなくても、あまりガッカリなさいませんように。ガッカリしてあきらめてしまうと、すべておしまいです。
残念ながら、労働基準監督署や訴訟で円満解決するのは難しいようです。その結果、退職していく人が多いのも事実です。その場合問題になるのは、金銭の支払い等です。
反省と賠償
犯罪を犯して逮捕され、法廷でも反省の態度がみられないとなれば、法の裁きを受けさせるしかありません。
パワハラも原理は同じです。内容証明等を利用して、早めにわかってもらうしかありません。法律上、人を苦しめた場合の反省のさせ方はほとんど「金銭賠償」です。相手の心の中はわかりませんから、反省とか謝罪といってみても、最終的には「お金で解決」ということになります。
また、どういう問題が起こって、どのように解決したのか、つまり和解条件、合意内容などを、示談書・合意書などの書面にして残すことが、後に同じ問題を繰り返さない、かつての問題を蒸し返さないために大切です。
パワハラとは
パワハラは、必要以上に、あるいは不当に叱られる(苦情を受ける)、暴行を受ける、仲間はずれにされる、他の人と明らかに違った対応をされるなどです。
成立要件としては
- 一定の社会環境内において権力関係がある
- その社会環境内で通常付随する指導・育成・命令等を超えた権力行使がある
- その結果、人間の尊厳・人格を、日常的・継続的に侵害している
- そして、心身の苦痛、職業上の環境等が悪化し、現在・将来に対する不安が生じている
などがあるしょう。
パワハラ立証のために
上記の要件を立証するのは容易ではありません。たとえば、イジメられたから死ぬとメモを残して自殺した子がいたとして、クラスの子に聞いてみるとイジメがあったのを知っているという子もいるけれども、教員や学校は否定しているというような場合、裁判でもイジメによる死かどうかの判断は難航します。
パワハラも、人に見られないように、罵倒されたり、怪我をしない程度に蹴られたり小突かれたりしても、その立証は難しいです。暴言や罵りは録音できそうですが、現実にはかなり大変です。必要な情報を知らせないとか、無視するというイジメ・パワハラの場合は、さらに立証が難しいでしょう。
これらの実情を知っている人がいたとしても、立証する段階でどこまで力になってくれるかというのは、子供のイジメの場合と同じです。「見て見ぬふり」をする人もあるということです。
しかし、実態を克明に記録して、立証の手段とするしかありません。
証拠集め
パワハラがあったからといって、すぐに損害賠償請求や訴訟の容易をし、証拠集めをする人はめったにいません。我慢しながら、良い方向へ行くよう努力する人がほとんどです。その間に、精神が不安定になり、食欲がなくなったり、不眠になったりするでしょうが、今は苦しいのだから眠れないのは当たり前だと考えています。病院へ行って診断書を書いてもらおうとは思っていません。
そうこうするうち、さらに険悪になって、事態が荒立ってくると、相手も用心して証拠をつかまれないようにします。そうなってからでは証拠集めはさらに難航します。
体調の悪いときに診断書をもらってください。ビデオや録音ができるなら、とにかく記録しましょう。
内容証明などの方法で
パワハラの要件が立証できる場合、職場の担当者に申し出るとか、それがだめなら会社の使用者責任を問うことになるでしょう。損害賠償として慰謝料請求をしたり、名誉毀損・侮辱・暴行・傷害等の罪で告訴することも考えられます。その際、内容証明郵便を作成したり、告訴状の作成をすることになります。
そのように険悪になる前に、担当者や上司が解決に努力してくれるような職場ならよいのですが・・・。
損害賠償
何かを壊されたり取られたりしたら実損害の賠償請求をするのはもちろんですが、精神的苦痛に対しては慰謝料となります。事実上、額に明確な決まりはありません。相場どおりに請求すればよいというものでもありません。しかし、裁判等での賠償額は、それほど高くないかもしれません。
しかし、額の多寡よりも、本当はパワハラがなくなることが第一の目的でしょうから、たとえ額は低くなりそうでも、やるしかありません。内容証明郵便を利用することになると思います。そして、相談の結果、和解したなら、その内容を合意書・示談書などの書面に残します。
合意書・示談書などに、損害賠償の支払い方法や、合意の内容を守らなかった場合の措置、この問題について他言しないことなどを記載します。
告訴状
名誉毀損・侮辱・暴行・傷害等の罪に該当するのであれば、告訴状を作成して警察署へ提出します。警察はなるべく受理しないようなので、これも簡単ではありません。弁護士から検察庁へ提出してもらう方法もありますが、費用的に割が合わなくなって、被害者が金銭面でかえって痛い目に遭うことが懸念されます。
内容証明郵便
内容証明郵便を書いてほしい、告訴状を提出してほしいという依頼はいただくのですが、これらはかなり綿密な作業が必要です。依頼する人は、行政書士に頼んだからもう大丈夫と思うかもしれません。しかし、書類作成のための材料をいただきませんと、書きようがないのです。
しかも、単なる印象ではなく、間違いない事実を集めなければなりませんし、証人がいるとしても、その証人が事情を説明した書類に署名押印までしてくれるのかなど「詰めの作業」が大切です。
同じ職場のひとりが事情説明を書いて、他の人はその人と同じ内容の文を書き写して署名押印してくれただけでは実は不十分だと思うのです。なかには「明らかにイジメでした。」と説明する人がいたりします。イジメだと思うかどうかではなく、何が起こったかを具体的に説明してもらいたいのです。
各人が自分の言葉で表現していただきたいと思うのですが、なかなかこれも困難なのが実情です。もっとも、第三者が読んで納得するように、こまごまと書くのは難しいです。どこかで、事実を切り捨てて簡潔に書かねばならないでしょう。警察署へ提出する書面【官公署提出書類】の作成もご相談ください。
「パワハラか?」と思ったら
そうしますと、「パワハラか?」と思うことがあったら、まずはご相談いただいて、どのように改善していくかご相談しながら、証拠固めの用意をするのがベストではないでしょうか。早い時期に準備を始めるのが肝心です。
その後、勘違いでした、パワハラではありませんでした、ということならそれでよいではありませんか。
解決したなら示談書を
上にも書きましたが、どのような問題があり、どのように解決したのか、示談の内容を守るようにするにはどうするか、などを示談書でも覚書でも合意書でもよいですから、書面化しておくことが重要です。
示談書・合意書は、これまでの問題をどう解決したかだけでなく、今後どうするのかも記載する必要があると思います。示談書は作成が意外と難しく、不完全な示談書は作成してもあまり役に立ちませんから、示談書・合意書の内容に付きましてはご相談ください。
あまりこと細かに書くと、相手が気分を害してしまうのではないかと遠慮することもあるでしょう。しかし、行政書士が書きましたが、内容はおかしくないですね、ということになれば、堅苦しく書いても署名押印に応じてもらいやすいかもしれません。
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