養育費

日本の離婚

諸外国での離婚手続きをみますと、裁判離婚でなければならないとか、離婚前に必ず一定期間の別居期間が必要であるとか、宗教上の問題をクリアーしなければならないなど、簡単ではない例もあるのですが、日本での離婚は(夫婦間の合意さえあれば)非常に簡易です。

財産分与と、未成年の子がいる場合の養育費の問題をクリアーすれば、離婚は本当に簡単です。

世界の離婚手続きを知ると、夫婦のあり方、親子のあり方、家族のあり方、社会、民族、国家に対する考えがみえてくるような気がします。

養育費 川崎 武蔵小杉

 

養育費とは

子が自立できる年齢になるまで、必要な費用を、子を養育しない方の親(養育費についての義務者)が支払うのが養育費です。離婚とは直接の関係はありませんが、相続でも前婚の子(前妻の子・前夫の子)は相続人(推定相続人)ですから、離婚後、面会することもなく数十年が経過していても親子の関係に変わりはありません。

離婚の場合に、未成年の子がいるかどうかは重大問題です。
配偶者とは離婚すれば他人ですが、子はずっと子であり、命を誕生させたからには責任があります。一般に、人道的責任と法は別のものですが、この責任を

  • 「夫婦の協力及び扶助の義務」(民法752条)、
  • 婚姻費用の分担」(民法760条)、
  • 「離婚後の子の監護」(民法766条)

で規定しています。

参考までに本記事執筆時点の民法760条を紹介しておきます。

第1項 父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者,父又は母と子との面会及びその他の交流,子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は,その協議で定める。この場合においては,子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
第2項 前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める。
第3項 家庭裁判所は,必要があると認めるときは,前二項の規定による定めを変更し,その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
第4項 前三項の規定によっては,監護の範囲外では,父母の権利義務に変更を生じない。

 

養育費は親が当然に負担しなければならないものですから、離婚協議書などに規定しなくても支払義務はあります。

養育費の支払い期間

子が自立するまで支払うものですが、たいていは離婚時に夫婦で決めています。

  • 20歳になるまで
  • 大学卒業まで
  • 22歳まで

などが多いようです。(この記事を書いている時点では成年年齢は20歳ですが、令和4年(2022年)4月1日から18歳です。)
未成年のうちに養育費が必要なのであり、20歳を迎えると、必ずしも養育費とはいえないかもしれませんが、自分のお子さんなので、その点は融通を利かせてよいでしょう。

大学に進学しなかったらどうなるのかということも考えておかなければなりません。
大学浪人した場合とか、大学で留年した場合、大学院進学の場合も教育費であることから複雑化する場合があります。「大学浪人中は2年間を上限として養育費の支払いに同意する」というような書き方にすると、離婚協議書がわかりにくくなるかもしれません。また、このような記述をしはじめると、他にも詳細が気になるでしょう。将来のことを詳細に記述しようとすると、不明確だったり、実現が困難なような規定を作ってしまったりということになりがちです。

養育費については、公正証書による離婚協議書に記載することが多く、強制執行認諾約款(もし自分が約束した養育費を支払わなければ、給与差押などをしてもよい、ということ)も付けるのが一般的でしょう。

結婚すると未成年でも成年とされますから(成年擬制といいます)、たとえば娘が16歳で結婚すると、法的には養育費を支払う義務はなくなります。(この記事を書いている時点では、女性の婚姻年齢は16歳からですが、令和4年(2022年)4月1日から18歳です。)

子が自立前に死亡した場合には、養育費の支払い義務はなくなります。

 

養育費の額

離婚した夫婦の子が、父母と同じような生活水準を維持できる程度の費用が養育費ですから、親の生活水準をもとにして協議によって決めます。協議でまとまらなければ裁判所へ行くことになるでしょう。

養育費を正確に決めたい」という気持ちはわかりますが、この発想自体に無理があります。裁判所で決めても、それは第三者が客観的に判断するとその額が妥当でしょう、ということで、有無を言わせずに決まるということです。当事者に不満は残るでしょう。
一般的には月額2万円から6万円程度が多いようです。かなり幅があります。両親(つまり離婚する夫婦の子の親)の収入に応じて、養育費の算定表に当てはめてみてもよいでしょう。

事情変更があれば、親の協議によって、養育費の月額は増えることも減ることもあります。
離婚協議書の養育費の項目に、「事情の変化があった場合には、協議して額を変更する。」と書いておくのが一般的です。

子を監護している親が再婚しても、それまでの養育費に影響はないはずですが、再婚相手の養子になれば、その再婚相手に子を養育する義務が生じますから、それまでの養育費を減額する(あるいは支払わなくてよい)理由になり得るでしょう。あらかじめ離婚協議書に「再婚した場合には、養育費を減額する。」と決めておく人もいますが、具体的にいくらになるのかは協議することになるでしょう。

養育費を毎月受け取る約束をするのではなく、離婚時に一括でまとまった額を受け取っておくケースもあります。これは子にとって良い方法なのかどうかわかりませんが、比較的よく行われています。

父が、子の養育費を母の口座に毎月振り込んで支払っているような場合、父が再婚する前に、一括して養育費を支払うこともあるようです。父の再婚相手からの要望でしょうか。

養育費がもらえない

決めた額の養育費を払ってもらえないことも多いようです。
養育費を支払うべき親の収入がきちんとしていれば、差押えが可能です。
離婚協議書を公正証書にしておいて、強制執行認諾約款を付けておくとよいでしょう。
しかし、養育費を支払うべき親が、勤務先を変え、住所を秘密にしていたりすると、強制執行も難しい場合があります。

また、子の監護をしている親が、子と離れた親とが交流しないようにするため、初めから養育費を拒否する例もあります。離婚した配偶者と接触したくないようです。

養育費を支払うべき親の資力によっては、払いたくても払えないことがあり、これはどうしようもありません。

養育費が支払われない】もご参照ください。

裁判所で決める養育費

裁判所のサイトに算定表がありますので、ご紹介しておきます。

【裁判所の養育費算定表 PDF書類】

養育費に限りませんが、協議は「総合的に」進めることが重要だと思います。裁判所の養育費の基準を参考にするのは構いませんが、これにとらわれずに子の養育にもっとも良いように協議をするのが理想でしょう。

 

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