示談書

交通事故の「もらい事故」のように、自分はまったく悪くないのに問題に巻き込まれ、厄介事の当事者となってしまうことがあります。
また何らかの事情で、悪気はなくても過失などによって加害者となってしまうこともあるでしょう。

トラブルを起こした人(加害者)に悪気がある場合もない場合もありますが、当事者がお互いに話し合って歩み寄り、賠償額や支払方法を定め、円満に解決し、一切の問題はこれで解消した、と書面に残すのが示談書です。法律で「一刀両断」にされることもない、もっとも理想的な解決方法でしょう。

人によっては「示談」という表現に、「裏取引」のようなイメージを抱く方がおられるそうですが、まったくそのようなことはありません。(一般に、「示談屋」というのは違法行為です。)

示談は法律上、通常「和解契約」といわれます。双方が納得できるように和解に向けて協議をし、契約を結ぶものです。書面には「合意契約書」という名称もよく用いられます。

「事実証明に関する書類作成」業務

契約を結ぶ以上は、事実関係を当事者が正しく認識する必要があります。単に口頭で話すだけでは、どうしても曖昧な点や勘違い・思い込みがありますから、書面にするとよいのです。

「正直に話しているか・誠意があるか」は、対面して話すとわかることが多いです。しかし、「天才的詐欺師」とは直接話すと一層だまされますから会ってはいけませんし、直接話して感情的になってしまうケースもあります。そこで、書面でのやり取りをお勧めしています。

「事実証明に関する書類(事故調査報告書など)の作成」「実地調査に基づく図面類の作成」は行政書士の主要な業務ですが、神奈川県川崎市に事務所を置く彩行政書士事務所の専門分野です。これらは内容証明郵便とも密接な関係があります。

示談書合意書誓約書など

示談書合意書も話し合いの後に、どのような内容で納得したのかを記録しておくものです。
示談書と合意書はどう違うのかということをよく聞かれますが、タイトルよりも内容が重要で、法的にはそれほど重要ではありません。

誓約書は、示談書合意書とはやや違って、加害者が謝罪し、繰り返さないことを明言し、場合によっては慰謝料や損害賠償金を支払うことを文書にしたものです。慰謝料や損害賠償金については示談書合意書の場合にも記載されます。

  • 示談書合意書は当事者の数だけ作成して各人が保管しますが、
  • 誓約書は加害者が作成して、被害者に渡すのが通常です。

加害者が一方的に謝罪して損害賠償金を支払っても、後から「実はこの問題は解決していない」ということのないように、誓約書を差し入れたら示談書合意書も作成しておくべきです。

清算条項

示談書・和解書・合意書などを作成するときに、今後この問題を蒸し返すことはないという意味で決めておくのが清算条項です。

通常、示談書・和解書・合意書などには清算条項があるものですが、いくつかの点で合意したものの、全面解決はしていないケースでは清算条項はつけられません。

「解決したと思っていたが、やっぱり納得いかない。不満が残っている。」と、蒸し返しになっては、せっかく協議・示談したことがむだになります。清算条項を付けられるように工夫しましょう。

もし清算条項がないなら、自分は全面解決したつもりでも、相手はまだ全面解決したとは思っていないのかもしれません。

法律と感情を考慮

合意書」でも「確認書」「念書」でも差し支えないのですが、「誓約書」とか「詫び状」とすると、感情的にこじれることもあります。逆に、「誓約書」「詫び状」とすることで、被害者が納得しやすいということもあります。

内容と事情を伺いながら、どういうタイトルがよいか検討します。このように、彩行政書士事務所では、単に法律論で終わらせないように心掛けています。

穏便に、円満に解決したいとしても、明らかに非があるにもかかわらず責任をとろうとしない人に対しては強い態度で臨むべきだと思います。内容証明郵便による警告からはじめて一歩も引かな覚悟が重要です。

口約束の示談

何かをするときに契約書を作ることは多いでしょう。しかし、意思主義、契約自由という考え方から、口約束でも多くの契約は成立しています。必ずしも契約書はなくてもよいのです。

示談も書面によらず話し合いだけで有効ですが、契約の場合と同様、書面にしておくとよいのですが、知人・友人ですとどうしても口頭になりがちです。「親しき仲にも礼儀あり」のように、きちんと書面にしておかないと、後日、知人・友人だからこそなおさら許せないという事態になりかねません。

書面にしておくには、「行政書士に書面作成を一任しよう」と提案するのが最も簡潔明瞭だと思います。実際、このような書面作成に慣れている人・知識のある人が作成するならよいのですが、そうでないと示談書として不十分なものになりがちです。ネットで情報や「ひな形」を得たという場合は特にご注意ください。ネットの多くの情報は有益なのですが、自分のこのケースに当てはまるのかということが問題なのです。

書面でなく録音は

書面でなく録音だけで残しておくのは、後日、何かと不便だと思われます。
ただ、示談のやりとりなどは、メモを取りながら録音もしておくと役に立つでしょう。通常は、示談書作成のための準備として、当事者全員で録音に同意してからするものと思われます。録音・録画は「下準備」程度として使うとよいでしょう。

後日、録音したものを聞き直してもよいでしょうが、たいていの人は言い間違いとか、つい余計なこと・ピント外れなことを口走ることがあります。一部分だけを抜き出して避難するようなことのないようにお気を付けください。

加害者側が本当に自分の非を反省していない場合は、示談書の下書きを作成している段階で、言い分が違ってくることがあるようです。そのような場合に備えて、協議を録音したり、下書きを作成したり、書面化の準備をすることはよいことだと思います。

示談書の必要性

どのような条件で両者が納得したのかを書面にする必要があります。

  • 自分の非を理解し
  • 誠意を尽くして謝罪し
  • 慰謝料を支払ったから
  • 問題は解決し
  • この件につて、もう貸しも借りも(債権も債務も)ありません

というような内容を入れて作成しましょう。きちんと解決したことを記録し、将来、この問題が蒸し返されないようにする工夫が必要です。

  • また、金銭の授受には「どういう理由で支払ったのか・受け取ったのか」が重要ですから、それも示談書合意書等のなかにきちんと記しましょう。本来、贈与税はかからないのに、示談書の書き方が悪かったから課税されるということもあるかもしれません。

加害者側から示談書・合意書を作りたいという場合もありますし、被害者側からの依頼のこともあります。どちらにとってもメリットがあると思いますが、もし、相手が示談書合意書作成に消極的でも、ぜひ作成しておくことをお勧めします。

示談書の作り方

示談書合意書を作る前に、内容証明郵便などで通知し、基本的な証拠文書がほぼ揃っていることも多いと思われます。

簡単なメモ書きでも「示談書」となり得ますが、間違いのないよう、自署するとか実印を使うとか、いろいろな方法があります。企業では一般化しているでしょうが、不慣れであれば専門家に依頼するとよいでしょう。

示談書の内容を守らないなら

示談書の内容を守ってくれればよいのですが、守らない人もいるでしょう。その場合、どうするのでしょうか。

損害賠償金や慰謝料等の支払いが遅れるようになったり、結局、支払わなくなったりということがあります。
弁済方法を変更して支払ってもらうことも考えられますが、相手に誠意がない(つまり、支払う気がない)場合もあります。

示談書の内容を守らず、誠意もないとなれば、法的措置となるでしょう。法的措置にも自分でできる簡単なものから、弁護士に依頼しなければならない訴訟までいろいろあります。事案によりますが、初めの示談のときから公正証書にしておけば、差押えができることもあります。

公正証書で

金銭の支払いに関する示談書など、公正証書にしておけば債務名義が不要の(訴訟をせずに執行手続きができる)場合があります。

公証役場へ行く前段階として、彩行政書士事務所が起案原稿を作ります。公証人に支払う料金は複雑なので公証人に確認が必要です。

最終的に公証人が作るなら、初めから公証役場へ行った方が費用が少なくて済むのではないかという考えもありますが、公証役場へゆく前の準備が意外と重要です。この重要さはなかなか事前にはご理解いただけないようなのですが、たとえば、一流メーカー品を購入するのと、怪しげなメーカーから似たようなものを購入するような違いが生じることがあります。

当事者双方が公証役場へ

公証役場へ本人が出向くのが一般的ですが、公証人に指定の場所に来てもらうことも可能です。また、行政書士に委任状を渡し、行政書士が代理人として公証役場へ行くことも可能です。

特に相手方が遠方で、同じ公証役場に来られない等の事情があれば、行政書士に委任状を渡す方法が便利です。

委任状というと通常は委任状用紙1枚で済むことが多いのですが、公証役場へ代理人として行く場合の委任状は「冊子」のようになっていることがありますので、通常より大掛かりです。

警察などへ提出できる示談書

上の説明とは違って、少々特殊な例ですが、喧嘩などをして警察のお世話になるとか、さらに検察庁まで送られることがあります。

逮捕された人が被疑者で、被疑者を起訴するか不起訴にするかの権限は検察官にあります。どのような場合に起訴・不起訴になるのかについては、一般的に次のようにいわれているようです。

  • 犯罪を犯したことが明白 → 起訴
  • 起訴可能だが被害者から示談書が提出されている場合など → 起訴猶予
  • 裁判をしても有罪になりそうもない場合 → 不起訴

起訴猶予も不起訴のうちです。
当事者で話し合いが付いたなら、「示談が成立したので、処罰は望んでいません」、という書面(示談書の写し、上申書、嘆願書など)を提出すると裁判を受けて有罪とならないこともありそうです。

早い段階で、当事者同士が協議して和解し、示談書作成まで済ませておくことをお勧めします。官公署提出書類として、警察署へ提示できるような示談書の作成をお引き受けしています。

交通事故と示談書

示談書は交通事故の処理の仕方として使われますが、それ以外にも簡単なことから重要な事案まで、示談書を作っておくべきケースは非常に多いのです。

当事者が「示談書」だと意識していなくても、「このように解決しました」という書面が示談書です。「念書」と書いてあっても、事実上同じことがほとんどです。この一枚の書面があるとないとでは大違いのことがあります。きちんと作成しておきましょう。

慰謝料・損害賠償金の支払いは

示談が成立する場合、その条件はさまざまでしょうが、慰謝料や損害賠償金を支払うケースは多いと思われます。金銭の支払い方については、

  • 分割払いなら公正証書にするとよいでしょう。
  • 振り込みでも構いません。
  • 一番お勧めしたいのは、署名押印するときに、現金で手渡しすることです。

こういう場合の支払いは口座振り込みにするものだと思い込んでおられる方もいますが、口座番号等を知らせて「何日以内に」というのは、意外に手間がかかります。高額ではありませんが振込手数料はどちらが負担するのかも決めた方がよいでしょう。期限内に支払いがないので、問い合せてみると、「口座番号がわからなくて・・・」と言われる(言い訳される)ケースもあります。そうなるとまた面倒です。

高額の現金を持ち歩くのは危険です。一般的にいくらまでなら現金の授受をするかは各人でお考えいただくことですが、100万円くらいなら手渡しで、という方が多くおられます。

現金支払い・受領の証拠としては、領収証・受領証を渡す方法もありますし、示談書の中に受領したことまで記載する方法もあります。
また、行政書士の口座に振り込んで(行政書士を経由して)相手方に渡すことも可能です。不倫の慰謝料・離婚・相続の業務の場合に、これを依頼されることがよくあります。

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